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40代課長に「なんでこんなやつが」という人材が多い根本原因

プレジデントオンライン / 2020年2月7日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Barks_japan

今年4月から、38歳から49歳になる「氷河期世代」が管理職適齢期に入りつつある。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「氷河期世代は人数が少ないので、そのほとんどが管理職になる“全入”時代に入る可能性が高い。だが、無理に昇進させるため、その中には管理職に不適格な人も目立つ」という――。

■バブル期入社組の役職定年で、氷河期世代が管理職に「全入」

政府は今年4月から就職氷河期世代の本格的支援に乗り出す。

3年間で650億円超の予算を費やし、非正規社員やフリーター、ニートに対してより処遇のよい企業への就職など、正社員を30万人増やすことを目指している。

氷河期世代とは、バブル崩壊後の1993年から2004年が学校の卒業時期に当たる世代。不況で企業の採用数が激減し、就職が厳しかった時期であり、大学卒の場合、今年4月には38歳から49歳(高卒34~45歳)になる。

政府の統計では氷河期世代(35~44歳)のフリーターや無業者が約100万人もいる。

時代の巡り合わせで就職できなかったり、能力開発の機会が少なかったりした世代に対し、遅きに失したとはいえ、国が支援策を講じるのは当然だろう。

その一方で就職氷河期をくぐり抜けて企業に入社した社員は管理職適齢期を迎えている。この世代の先輩であるバブル期入社組(1986年~91年)は今年52~57歳になる。この世代が役職定年などで管理職を退き始めており、その後のポストに座るのが氷河期世代だが、実はやっかいな問題を抱えている。

■明らかに管理職に不適格な氷河期世代の社員もいる

飲料メーカーの人事担当者はこう語る。

「社員の最大のボリュームゾーンだったバブル期入社組の管理職が55歳を機に役職定年でポストを降ります。しかし、その後の世代が採用を控えた世代ですし、バブル世代の半分の人数しかいない年代もあります。このままいけばほとんど全員が管理職になる“全入”時代に突入することになりますが、中には明らかに管理職に不適格な社員もいる。以前からわかっていたことと言えばそれまでですが、中途採用もなかなかうまくいきませんでした」

大手企業の人事部の間でも“管理職全入時代”が以前からささやかれていたが、いよいよ現実味を帯びつつある。

全入時代は大学入試でよく使われる言葉だが、要するに能力に関係なくフリーパスで管理職になれるという意味だ。しかし大学と違い、管理職は部下の育成・指導を含めて会社業績を左右する第一線の要である。

■「どうしてこんな人が課長なのか」という40代管理職に増えている

大手企業の新任管理職研修を長年手がけている人材教育コンサルタントもこう危惧する。

「バブル期入社組の社員のうち課長以上の管理職になれるのは多くても5割程度でした。しかし、バブル組が役職を降りると、代わって氷河期世代が課長候補になりますが、絶対数が少ないのでその世代の7~8割が課長に昇格することになります。以前であればとても昇進できなかった人たちを上げざるをえなくなっています」

その結果、どうなるのか。

「そうした企業の新任管理者研修の講師を務めているとよくわかるのですが、どうしてこんな人が課長なの、という人が結構います。管理職の質が悪くなってきているのは間違いありませんし、管理職のレベルダウンは今後も進行するでしょう。今後、管理職の質の低下を防止するには外から人材を確保するしかありません。ただし、大手企業は中途採用で採れるかもしれませんが、準大手や中堅企業になると難しい」

実際に氷河期世代の管理職不足をうかがわせる調査もある。エン・ジャパンが転職コンサルタントを対象に実施した「2020年『ミドルの求人動向』調査」(2020年1月17日発表)によると、66%の転職コンサルタントが2020年は35歳以上のミドルの求人募集が増加すると予測。

「役職別」で最も多かったのは「課長クラス」の73%、次いで「部長・次長クラス」の57%という結果になっている。その理由として「就職氷河期と言われる時期に採用を控えていたツケが今になって出てきており、管理職を任せたい世代が不足している」との声が上がっている。

写真=iStock.com/bamlou
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bamlou

■精神面にタフで、臨機応変に対応できる人もいる

もちろん氷河期世代には優秀な人材がいないわけではない。氷河期をくぐり抜けて入社したものの、1990年代後半以降の経済の右肩下がりの中で会社の業績も低迷し、中高年社員のリストラを目の当たりにした人も多い。その一方で厳しい業績目標が課され、達成に向けて必死に取り組み、生き抜いてきた世代である。

同じエン・ジャパンの「『就職氷河期』実態調査」(2019年12月26日発表)によると、「氷河期世代だったからこそ身についたもの」の第1位は「精神面でのタフさが身についた」(47%)、次いで「どんな局面でも対応できる臨機応変さが身についた」(34%)が多い。

また、回答者の声として「『自分の専門性を磨いていかないとまずい』という危機感が他の世代よりも備わっており、結果的に良かったと思う」(39歳男性)。あるいは「就職氷河期であろうとなかろうと、自分の努力次第で道は切り拓くことはできるので、一概に不幸な世代とは言えない」(43歳男性)という声もある。

それなりに苦労を背負いながらも自信にあふれている様子もうかがえる。

■「仕事もろくにできないバカばっかり」とバブル世代を目の敵に

しかし、一方では、危うさも抱えていると言うのは前出の飲料メーカーの人事担当者だ。

「彼らが悪いわけではありませんが、目先の業績目標に追われながらも好業績を残し、管理職になったのは自分が人一倍努力したからだと自負している人も多い。その彼らが特に目の敵にしているのがバブル世代です。『自分たちは厳しい選考を経て入社したのに、あいつらはたいした苦労もせずに入ったし、仕事もろくにできないバカばっかりだ』と言うことを聞いたことがあります。自分たちはバブル世代より優秀なんだという意識が強い。でも管理職になった以上、年上の部下であるバブル世代をうまく使いこなさないと仕事が回りませんが、たまに年下の部下とトラブルを起こすことがあります」

確かに今の40代半ばの課長職だと、部下が10人いれば2~3人の50代の部下を抱えていても不思議ではない。たとえばこんなケースもあるという。

「役職定年になった元管理職が氷河期の課長の部下として異動してきたのですが、元管理職には『大所高所からアドバイスをお願いします。現場を回り悩んでいる若手がいれば話を聞いてあげてください』と言ったそうです。元管理職はたいした仕事も与えられず、何も期待されていないことにムッとしたそうです。それでも自分が閑職に置かれたのはいいとしても、その分、若手の社員が忙しく働いているのを見て課長に『A君は仕事で困っているようだ。もう少し若手の指導をちゃんとやったらどうだ』と言った。すると、課長は逆ギレしたのか『いいんですよ、僕には僕のやり方があるんですから』と言い返したらしい。しかも後で、その課長がA君に『あの先輩(元管理職)がお前のことを仕事ができないやつ、と言っていたぞ』とウソの話をしたそうです。それ以来、元管理職は若手からも敬遠されるようになりました」(飲料メーカー人事担当者)

写真=iStock.com/miya227
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

■同期が少ない中、「管理職になった自分は偉い」と勘違い

課長がプレーヤーとしていくら優秀であっても、これでは職場は回らない。年配の社員を遊ばせる一方で、若手に仕事を押しつけるようでは課の生産性も上がらないだろう。もちろん氷河期世代の管理職に限った現象ではないだろうが、前出の教育コンサルタントはこう指摘する。

「同期が少ない中で管理職の地位を築いた自分を偉いと思っている人もいます。管理職になっても目先の業績だけが大事という人もいます。氷河期の中には、部下の育成や指導をろくにせず、年上の部下を終わった人と見下し、自分の仕事のテリトリーを減らし、自分のやりたいことだけに集中したいという自己中心的な傾向があります」

こうした人物は管理職にするよりは、ひとりのプレーヤーとして会社に貢献してもらうほうが得策だろう。しかし「全入時代」を迎えつつある中、選別できるほど余裕のある企業も少ないかもしれない。

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溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト
1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。

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(人事ジャーナリスト 溝上 憲文)

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