「割を食うのは国民ばかり」政府と東京都との"GoTo"バトルの行く末

プレジデントオンライン / 2020年7月27日 18時15分

記者会見で笑顔を見せる東京都の小池百合子知事=2020年7月22日、都庁 - 写真=時事通信フォト

■いがみ合いの結果、政府の方針が歪んでいるように見える

安倍政権が行う新型コロナ対応の中で、旅行などへの需要喚起策「Go Toキャンペーン」は、最も評判の悪い施策となってしまったようだ。観光業界などの支援のためとはいえ、感染急拡大の中で、あえて国民を全国に拡散させる政策は、あまりにタイミングが悪い。

しかも問題は、政府と東京都のいがみ合いの結果、政府の方針が歪んでいるように国民に見えることだ。その裏には小池百合子東京都知事のしたたかな計算も働く。

菅義偉官房長官と小池百合子東京都知事のバトルは、すっかりおなじみになった。口火を切ったのは菅氏。7月11日、北海道千歳市での講演で「この問題は圧倒的に東京問題といっても過言ではない」と発言。これに対し、小池氏は13日、都庁で記者団に対し「Go Toキャンペーンは国として整合性をどうとっていくのか。むしろ国の問題だ」と反論。国と首都のバトルが表面化した。

22日にスタートした「Go To」トラベルの対象から東京都だけが除外されたことから「官邸が小池氏に対する意趣返しをした」という見方が、さらに広がった。感染者が日々、過去最多を更新する東京都を除外するという判断は、妥当ではある。ただし、神奈川や埼玉や大阪はOKで東京は除外という説明は、つきにくい。だから「意趣返し」という見方が消えない。

■小池氏の感染者数発表を官邸は「嫌がらせ」と受け止め

一連の「菅・小池バトル」はどちらかというと菅氏の対応が「おとなげない」と映り、小池氏の方に同情が集まっているようだ。感染者の拡大も、全国に広がっており「東京問題」ではなくなっている。しかし、菅氏にも言い分はある。

7月20日前後、小池氏は午前中にマスコミの前で感染者数について語ることが多かった。しかも確定値ではなく、おおよその数を語る。これは、感染者がどんどん増えている実態を昼のニュースでアピールして「それでも『Go To』を強行するつもり?」と迫る意味合いがあると首相官邸側は受け止めている。東京都の感染者が多い時は、早めに報道される傾向があることに疑問を持っていた人がいたかもしれないが、こういうからくりもあるようだ。

政府のスポークスマンでもある菅氏は、小池氏の言動を完全な「嫌がらせ」とみている。だから「おとなげない」発言にもなる。

19日、フジテレビの報道番組に出演した時、菅氏は、東京だけ「Go To」から除外されたことを質問されると「都の財源があるのだから東京都でやればいい」と突き放した。どちらが正しいかはさておき、まさに国難という時期に、実に見苦しいせめぎ合いをしているのは間違いない。

■自公で小池氏を推した都知事選。その直後からいがみ合い

ここで思い出してほしいことがある。7月5日に行われた東京都知事選だ。

この選挙では、再選を目指した小池氏が全体の6割近い得票率で、宇都宮健児氏、山本太郎氏らを蹴散らした。小池氏は表面上、どの政党からも支援を受けなかったが、実態は自民党、公明党の与党が支援して当選したことは誰もがみとめるところだ。自民党の二階俊博幹事長は昨年から小池氏の支援を公言してはばからなかったし、公明党は都議会でも小池氏と共同歩調をとってきている。

実際、選挙の2日後の7日、安倍晋三首相は、都知事選と、4つの選挙区で行われた都議補選で全勝したのを踏まえて「勝利は大きな励みとなる」と発言している。

都民の中には、自公両党に支援されていることを理由に、小池氏に1票を投じた人も少なからずいたはずだ。そういう人たちは、まさか選挙が終わったら数日で角を突き合わせるとは思わない。今起きている国対政府の不毛なバトルは都民に対する背信行為でもある。

都知事選の枠組みという意味では、公明党の小池氏の関係も微妙になっている。「Go To」トラベルの所管大臣である赤羽一嘉国土交通相は公明党所属。「今やる時か」「なぜ前倒しするのか」「制度があいまいだ」などの批判を一身に浴びた。政府側は、その赤羽氏に配慮する形で、全国一律での導入方針を土壇場で転換し、東京を除外した。その結果、小池氏と公明党の関係にも、すきま風が吹き始めているというのだ。

国民の生命に直結するコロナ対応に、政局を持ち込まないでほしい。これが国民の偽らざる心境だろう。

■おぼろげに見えてきた小池氏の国政復帰シナリオ

最後に「自公」VS小池氏という構図が今後、どういう展開になるのか占っておきたい。来年7月に東京都議選が行われる。前回の2017年の都議選では、人気絶頂だった小池氏が率いる「都民ファーストの会」が圧勝。現有の6から55に伸ばす歴史的な大躍進を遂げ、自民党は大敗した。

来年の都議選では、さすがに「都民ファースト」は議席を減らし、自民党が盛り返すとの見方が大勢だ。だからこそ小池氏は都知事選で自民党との関係修復をはかり、都議会の運営に支障をきたさないようにしようとした経緯がある。

しかし、ここへ来て小池氏は戦略を変えつつあるのではないか。都知事選では予想以上の得票で圧勝できた。彼女は、自民党のおかげで勝ったとは微塵(みじん)も思っていないはずだ。そして、都知事選後の政府・自民党とのバトルでは自分の方に世論がついていると考えているだろう。

だとすれば、もう一度「都民ファースト」の陣形を立て直し、来年の都議選では自民党との全面対決の構図をつくり、最終決戦を目指すという選択肢が見えてくる。さらにその先には、小池氏の国政復帰というシナリオも見えてくるだろう。最近の小池氏への政府への敵対的な姿勢は、このシナリオを意識したものではないか。

それは、政局としては実に見応えのある展開ではある。しかし、来年まで政府と首都がコロナ対応を巡り対立しつづけるということになれば、それは国民にとって不幸なことだ。

(永田町コンフィデンシャル)

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