「グアムキラー発射でアメリカを挑発」中国の軍拡路線が止まらない

プレジデントオンライン / 2020年9月8日 18時15分

中国の弾道ミサイル「東風26」=2019年10月1日、(中国・北京) - 写真=EPA/時事通信フォト

■発射の事前察知が難しく、核弾頭も搭載できるミサイル

8月26日、中国が中距離弾道ミサイル4発を南シナ海に撃ち込んだ。4発のミサイルはいずれも中国大陸部から発射され、海南島とパラセル(西沙)諸島の洋上に着弾した。アメリカに対し、攻撃能力の向上を見せつける作戦だった。

報道によると、中国軍が同海域で24日から29日に実施した軍事演習の一環として行われたもので、発射されたのは射程1500キロ以上の「東風(DF)21D」と、射程4000キロの「DF26B」。2つのミサイルはいずれも空母を攻撃できる対艦弾道弾である。

とくにDF26は南シナ海だけでなくアメリカ軍の基地があるグアムも射程に入り、「グアムキラー」と呼ばれる。移動式の発射台から飛ばすことができ、発射を事前に察知することが難しい。しかも核弾頭が搭載でき、目標に命中しなくても核爆発によって周囲に大きな打撃を与える。アメリカにとって大きな脅威である。

新型コロナウイルス感染症の世界的流行(パンデミック)のなかでも、中国はアメリカに対して自国の軍事力を見せつけながら、着々と軍事力を強化している。アメリカは11月の大統領選で国内の政治が落ち着かない。その隙をつきたいのだろう。

■中国に歯止めを掛けられるのはアメリカしかいない

中国が南シナ海に弾道ミサイルを発射した翌27日、アメリカはミサイル駆逐艦のマスティンをパラセル諸島に急行させ、南シナ海での中国の動きを牽制した。アメリカ艦艇による「航行の自由作戦」と呼ばれる軍事行動で、これまでも中国の強引な海洋進出に警告を発する意味で、度々実施している。

たとえば7月にはマイク・ポンペオ国務長官が南シナ海での海洋権益主張に対し、「不法だ」との声明を発表するとともに、2回、南シナ海に空母の航空戦力を柱に巡洋艦や駆逐艦、潜水艦を編成するいわゆる空母打撃群を派遣して演習を行った。

しかしながら、中国は「アメリカが緊張感を高めている」との主張を繰り返している。アメリカの航行の自由作戦は今年、これまで以上の頻度で行われそうだ。

中国の軍拡に、軍事的に歯止めを掛けられるのはアメリカしかいない。ここはアメリカの頑張りに期待したいところだ。

■習近平主席の「国賓来日」を認めたままでいいのか

アメリカと中国の軍事的対立が激化するなか、日本はどう動いているのだろうか。

報道によれば、8月29日、河野太郎防衛相と米国のマーク・エスパー国防長官がグアムで2時間ほど会談し、中国のミサイル発射で緊張の高まっている南シナ海の情勢について、国際社会と連携して対応することで合意した。

国際秩序をまったく考慮しない中国に対し、国際社会と連携して対抗していくのは当然である。そして中国の無法ぶりに対し、日本も断固たる措置を取るべきだ。

具体的には、延期された習近平国家主席の国賓としての来日を正式に中止し、中国に猛省を求めるべきである。安倍政権の後に誕生する新政権にその決意を強く望みたい。

河野太郎防衛相とエスパー国防長官の会談では、日本が断念した地上配備型迎撃システム「イージスアショア」に代わるミサイル防衛網の新設も確認された。このミサイル防衛網構築の趣旨は、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対する軍事的備えである。

■朝日社説の「両政府は自制する必要がある」という書き方は確信犯

9月4日付の朝日新聞の社説は「米国と中国の対立が軍事面での緊張に発展しつつある。これまでの貿易や先端技術などにとどまらず、安全保障の分野でも応酬が目立ってきた」と書き出し、こう主張する。

「双方とも限定的な牽制や示威を意図しているようだが、偶発的な衝突に陥るおそれは否めない。両政府は事態の危うさを認識し、自制する必要がある」

見出しも「米中軍事対立 緊張の連鎖を回避せよ」だ。

「偶発的な衝突」の危険性はよく分かる。だが、今回アメリカと中国の両方に自制を求めるのはどうだろうか。どう見ても悪いのは中国である。国際社会に批判されてしかるべきなのは中国なのだ。喧嘩両成敗には無理がある。

そう思って読み進めると、「いまの緊張を招いた責任の多くは、中国の側にある」と指摘し、その理由を「長年続けている軍拡路線に加え、近年は近海への強引な進出で周辺国の不安を高めてきた」と説明している。

朝日社説は分かっていながら書いている。確信犯である。

■「健全な関係づくり」より、中国の軍拡を止めることが必要

朝日社説は書く。

「この8月、南シナ海に複数の中距離弾道ミサイルを発射したことは強く非難されるべきだ。米領グアムまで射程に含むため『グアムキラー』と呼ばれる新型兵器などと伝えられる」
「これまで中国は、南シナ海で他国が領有権を唱える岩礁などを埋め立て、軍事拠点にしてきた。過去の約束や国際法に反する行為を、国際社会は見過ごすわけにはいかない」

冒頭で沙鴎一歩が指摘したように対空母の弾道ミサイル発射こそ、批判の対象であることは間違いない。そればかりか、ここ数年の中国の軍事行動は異常としか思えない。

朝日社説は主張する。

「両外交当局も非難のトーンを高めている。とくにトランプ政権は11月の大統領選を意識して中国共産党体制を批判し、それが米軍の動きにも反映しているとみられている」
「政治の思惑で軍事的な事態の悪化を招くような行為は、厳に慎まなければならない」

トランプ政権の言動が米軍の行動に影響しているとしたら、米中の軍隊の偶発的衝突など事態の悪化もあり得る。偶発的衝突に対する警戒は欠かせない。ただし忘れてならないのは、まず批判されるべきは中国ということだ。確信犯である朝日社説の書き方は頼りなく、そこが分かりにくい。

最後に朝日社説はこう指摘している。

「米中の覇権争いは長期に及び、両国関係のあり方は世界の未来に直結する。双方に近い主要国として、日本は米中の健全な関係づくりに寄与する外交が求められている」

「米中の健全な関係づくり」もいいが、やはりその前に中国の強引な軍拡を止めることが肝要である。

■日米は同盟に隙が生じないように警戒を強めるべきだ

次に9月1日付の読売新聞の社説を読んでみよう。

「中国の海洋進出 日米同盟強化で力の空白防げ」との見出しを掲げ、書き出しから「日米両国の政治体制が今秋、節目を迎えようとしている。アジアに『力の空白』を招かぬよう、安全保障協力を積み重ねることが重要だ」と訴える。

読売社説は日米の政治体制が新しくなる過程で、中国の軍事行動がますます強まることを懸念している。

読売社説は後半で「安倍首相が退陣を表明し、米国では11月に大統領選が行われる。政治が不安定化すれば、紛争の危険性が高まりかねない」と指摘する。そのうえでこう主張する。

「日米両国は、同盟に隙が生じないよう、警戒を強める必要がある。閣僚や次官級、制服組などが重層的に協議し、不測の事態に備えることが大切だ。中国に自制を促し続ける努力も不可欠である」

読売社説が主張するように、警戒の強化や備えは必要である。中国という国は相手国の隙に付け込むからだ。

■国際社会の批判を受ければ、中国の軍拡路線は鈍化するはず

読売社説は前半でこう書いている。

「日本政府の再三の抗議にもかかわらず、尖閣周辺では、中国公船が領海侵入を繰り返している。中国公船2隻が日本の漁船に接近する動きを見せ、海上保安庁の巡視船が間に入る事態も生じた」
「海上保安庁と自衛隊が連携し、重点的に周辺海域の警戒監視にあたらねばならない。南西諸島への自衛隊の部隊配備も急がれる」
「自衛隊と米軍は、感染症の拡大で中止していた東シナ海での共同訓練を再開した。戦闘機間の戦術確認、洋上での燃料補給が主な任務だ。感染防止のため、人の往来は制限している。工夫を重ね、抑止力の維持に努めてほしい」

日本の海保と自衛隊の役割は大きい。自衛隊は米軍との協力も欠かせない。すべては中国の過激な軍事行動が原因である。国際社会が中国を厳しく批判することが重要だ。国際社会の批判を受ければ、中国の軍拡路線は鈍化するはずである。

香港がいい例だ。自由と民主化を求める香港市民を厳しく取り締まってきた中国政府も、欧米の批判を受けてその手を緩め、逮捕した市民活動家らを保釈した。中国は国際社会の反発を無視できないのである。

読売社説はこうも主張する。

「中国は、軍事的な緊張を高めるべきではない。自国の覇権的な行動が地域の不安を生んでいることを認めねばなるまい」

中国は強硬な軍拡路線を強く反省すべきである。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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