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知的障害疑いの42歳資産家令嬢に900万貢がせた「初彼氏」をどう遠ざけるか

プレジデントオンライン / 2020年10月10日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sean_Kuma

都内在住で知的障害の疑いがある42歳独身女性はネットで出会った「山陰地方に住むバツイチ男」に約900万円を貢いだ。女性の老親はマンション1棟を所有する資産家で貯蓄は1億円超、年収は年金以外に1000万円超。男はさらに1500万円の生前贈与を狙っているようだ。そこでファイナンシャルプランナーが諭したアドバイスとは――。

■「貯蓄1億円超」資産家の40代の次女が貢いだ900万円

今回の相談者は、都内に一棟建てのマンションを所有する高齢の資産家の家族。マンションの家賃収入で、現役時代も、年金生活になってからも、家族の生活費を十分にまかなってきた。

生活費の問題はこの先もない。そう思われたが、この家族には40代の2人の娘がいる。2人とも外出は可能だが、現時点で就労していない。この先も就労する可能性は低いだろうと、親は考えている。

長女のAさん(47歳)は、高校を卒業後は家事手伝いをするくらいで、外で働いた経験はない。アルバイトの経験もないという。

次女のBさん(42歳)は1年くらい前まで、一般企業で働いていたとのこと。実はBさんには知的障害の疑いがあるのだが、診断は受けていない。高校を卒業して就職してからは、社員30人以下の小さい会社ではあるものの、普通の会社員として働いてきた。

Bさんは仕事でミスを起こすことが多く、ミスの多さからか、社内で嫌がらせを受けることも少なくなかったよう。数年前からはときどき、「会社に行きたくない」と言うようになり、1年くらい前からは、うつ病のような状態に。無断欠勤を続けた後、復職できぬまま、退職した。

Bさんは自宅と会社を往復する日々だったこともあり、給料は多くなかったが、退職時点ではコツコツ貯めた貯蓄が900万円ほどあった。ところが、現在、Bさんの手元には10万円ちょっとしかない。

これほど早く、貯蓄が減った理由。それはBさんの近くにいる「男性」が関係していることは明白だった。

■高齢の親はマンション1棟所有、賃料収入は年1000万円以上

【家族構成】
父親 80歳
母親 75歳
長女(Aさん)47歳
次女(Bさん)42歳

【家計・資産状況】
貯蓄
約1億3500万円
このほかに、娘たちへの生前贈与分が2人分で3000万円くらいある
収入
父親:年金収入 120万円、賃貸収入 年1100万円
母親:年金収入 100万円、賃貸管理 年200万円
長女、次女とも収入は0円
支出
家族4人で年間600万円程度

※長女、次女の国民年金保険料は、次女が働いていた時期を除くと、親が払っている。現在は、生活費やおこづかいとして、ふたりに月5万円ずつを渡している。

■知的障害の疑いのある42歳次女が「初めての彼」にのめり込む

今回、相談者の母親(75歳)が頭を悩ませているのは次女のBさん。

前述の通り、1年前に会社員を辞めた時点で、Bさんにはコツコツ貯めた貯蓄があった。その貯蓄が10万円にまで減ったのは、Bさんが「付き合っているという彼氏」に原因がある。

Bさんの彼氏は、年下の30代後半。遠く離れた山陰地方に住んでいて、離婚経験がある。前妻との間には子供はいない。Bさんはそう両親にカミングアウトした。

その彼氏とBさんは、ネット上で知り合ったらしい。Bさんにとっては、40代でできた初めての彼氏で、気持ちが完全に舞い上がっている。母親の目にはそう映っていた。現在は数カ月に一度の割合で、彼氏の居住地に足を運んで、2人の時間を楽しんでいるそうである。

スマートフォンでやり取りする男女
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

■母親が気づいたときには、900万円が消えていた

本当に2人が好き合っているのであれば、親としては、離婚歴がある人でも受け入れたかもしれないという。

だが、母親が気づいたときには、900万円あったはずの次女の貯蓄は底を突いていた。手元に残った10万円は、親が渡したおこづかいの残りである。

900万円の使いみちはよくわからないが、「仕事で急に資金が必要になった」とか、「知り合いがケガをして、現金が必要になった」、「免停になったので、もう一度、免許を取らなくてはならない。申し訳ないけど、免許取得費用を貸してほしい」など、どれも疑いたくなるような理由を次々と述べたという。

貯蓄が底を突いてからは、「生前贈与でもらったお金を、私が使えるようにしてほしい」という次女からの無心がはじまった。

本来の贈与では、贈与したお金は贈与された側が管理すべきだが、知的障害の疑いがあることなどから、贈与したお金は親が管理を続けている。母親が「このお金は、あなたの将来の生活費だから、今は渡せない」というと、今まで見たことがないくらいBさんは激高したという。

Bさんは今、彼氏が住む場所で暮らすために、免許の取得を考えている。その費用を自分名義の貯金(親からの生前贈与分)から引き出してほしいと懇願されているが、渡すべきか、母親は悩んでいる。

■「山陰地方のバツイチ男」が本当に独身なのかは、確認できていない

相談者は資産家で、金銭面では不安など感じられない家庭だが、母親は、次女が彼氏に騙されているのではないか、心配でならないことからと相談にきた。

一緒に歩道を歩いているカップル
写真=iStock.com/Masaru123
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Masaru123

ファイナンシャルプランナーである筆者が「娘さんは、彼氏の家に行ったり、ご親族に会ったりしていますか?」と聞くと、「家の近くまでは行っているらしいのですが、住んでいるはずの実家には一度も呼んでもらったことがなく、宿泊先のホテルで会っているようです」という。

「彼氏には離婚歴があるとのことですが、もしかしたら現在も結婚しているということはありませんか?」と聞くと、母親は黙り込んでしまいました。

「娘さんは結婚詐欺に巻き込まれている可能性がありますね。私はひきこもりのお子さんが、結婚詐欺に巻き込まれたケースを何例か見てきており、それらのケースと似ています。もし結婚詐欺だとしたら、お金を巻き上げられるだけ巻き上げて、いきなり連絡がつかなくなるかもしれません」

こうした私の話を聞いて、母親はますます寡黙になりました。そこで、このように提案しました。

「彼氏に会うことを止めると、逆効果といいますか、周囲に反対されることで、娘さんは意固地になってしまうかもしれません。反対されると気持ちが盛り上がったり、駆け落ちをしたいと言われたりする可能性も出てきます。それなら逆に、彼氏を東京に呼ぶことを提案してみてはいかがでしょうか。たとえば、皆さんがお住まいの家の近くに彼氏が住む部屋を借りるから、そこに住んではどうかと提案してみるんです。もちろん、現在の居住地で仕事をしているはずですから、すぐに引っ越しはできないと思いますが、まずは東京に住む提案をして、相手の反応を見てはいかがですか」

■「そのうちね」といって、親に会おうとしない男

それから数カ月後。母親から再び相談を受けました。

Bさんと彼氏のその後の様子をうかがうと、次女を通して、東京に来るように何度も誘っているけれど、「そのうちね」といって、かわされたままだそうです。

次女が連絡を取ろうとしても、3回に1回程度しか、電話に出てくれなかったり、LINEの返事もなかなか返ってこなかったり。

親としては、このまま連絡がつかなくなってくれたほうが良いと思っているが、元気のない次女の様子を見ていると、今のまま、放っておくこともできず、悩みすぎて抜け毛が多くなったと、苦笑いする母親。

そこまで聞いて、筆者はこう母親に言いました。

「あくまでも個人的な意見ですが、先方の居住地に行っても実家には入れてもらえず、東京に来ることを勧めても、話をはぐらかされるだけであれば、ゴールが結婚になるとは思えません。それでも万が一、結婚することになったら、今度はお母様たちに対して、お金の無心をはじめるかもしれませんよね。他人から900万円ものお金を受け取っても平気でお金の無心を続けるのは、普通の神経ではないですから、もしかしたら結婚したのちにすぐに離婚を言い出し、手切れ金をよこせという話になる可能性もあります」

母親は「結婚は認めたくないけれど、次女が望むなら、仕方がないかも」と思っていたが、今度は自分たちがお金の無心をされる可能性があることや、そもそも次女は働けないため、生活費を丸抱えする可能性も考えると、結婚にOKを出すことは無理だと決めた。

この母親の決断を受け、アドバイスした。

「事態を動かしたいのなら、次回、娘さんが彼氏の住む場所に行かれるときは、お母様も同席されてはいかがでしょうか。親が出てくることを聞いた彼が、及び腰になったり、連絡がなかなかつかなくなったりして、そのうち自然消滅していくのではないでしょうか」

■ひきこもりの子供が結婚詐欺で大金を失う事例が増加

今回の相談は、ふだんアドバイスをしているひきこもりの子供がいる家庭の家計サバイバルプランとは、かなり趣が異なる。

ただ、前述したように筆者はひきこもりの子供が結婚詐欺と思われる被害に遭って、何千万円もの預金を失った事例をいくつか見てきている。

何千万円も失ってしまったひきこもりの子供たちは、親亡き後、生活保護の受給しか生活を成り立たせる手段がなくなった。お金の問題だけではなく、詐欺に遭ったひきこもりの子供は40代前後。明らかに中年世代だが、精神的なダメージが大きすぎて、それまで外出ができていたのに、ほとんどのケースで家から出られなくなっている。中には自殺をしようとする子供も出てしまい、今でもその子供の様子が心配でたまらない。

今回のケースでも、娘さんががんばって貯めた900万円を失ってしまったのは、残念でならない。だが、この先、お金を渡さずに済めば、次女が親亡き後を暮らしていくサバイバルプランは十分に成り立つ。

まだまだ予断を許さないが、相談に来ることで、気持ちを奮い立たせたいという母親とは、今後も進捗状況を確認しながら、次女がお金を渡さないで済む方法を一緒に検討していきたいと考えている。

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畠中 雅子(はたなか・まさこ)
ファイナンシャルプランナー
「高齢期のお金を考える会」主宰。『ラクに楽しくお金を貯めている私の「貯金簿」』など著書、監修書は60冊を超える。

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(ファイナンシャルプランナー 畠中 雅子)

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