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「僕はルパン三世になりたい」澤円がまわりとのズレをまったく気にしないワケ

プレジデントオンライン / 2020年10月19日 9時15分

コロナショックにより、これまでの働き方の「あたりまえ」が崩れ、どう生きていくかを問い直されています。そんなときに問われるのが「Being(ありたい自分)」ではないか――。「プレゼンの神」として知られる澤円さんはそう言います。
新著『個人力』(プレジデント社)は本の要約サービス「フライヤー」の要約公開後、週間ランキング1位になるなど、読者から大きな反響がありました。私たちが「ありたい自分」を核にアップデートを続けるにはどうすればいいのか。澤さんにこれからの時代の人生戦略を聞きました。

※本稿は、フライヤーの掲載記事<「あたりまえ」が揺らぐなかで問われる「個人力」とは?>を再編集したものです。

■人間の「本質」があぶり出されやすくなっている

コロナショックによって、いままさに世界中で、インターネット登場以来の大きなリセットが起きています。

かつてインターネットの登場は、人々の行動様式や経済活動のリズムだけでなく、マインドセットを劇的に変えました。今回のコロナショックでは、さまざまな制約のなかで、有効な治療法やワクチンのない「見えない敵」との戦いを強いられています。そこでは、人間の「本質」があぶり出されやすくなっている。同時に、「どう考え、どう行動したいのか」という問いと、愚直に向き合うことが求められているのです。

これまで会社勤めなら、生き方や働き方について深く考えなくても、仕事の「あたりまえ」に乗っかっていればよかった。満員電車に揺られて朝9時に出社し、夕方5時に退社。これで働いたことになったわけです。ところが、三密を避けるために出社が禁止され、これまでの常識が一気に崩れた。そこで、どうしたらいいのかわからず、自分を見失ってしまう人が世の中にあふれたのではないでしょうか。

そんな現在は、ビジネスのエコシステムを再構成し、いままでと違うやり方に挑戦できるチャンスでもあります。物理的な制約はありますが、インターネットを通じてなら、個人同士が有機的につながり、新しいものを生み出していける。そのとき問われるのが、ゆるぎない自分自身の本質。すなわち、僕が「Being(ありたい自分)」と呼ぶものです。

■他者とのズレが気になるのは、キャリアを二次元で考えているから

学歴や肩書きなどを取り払った先に残る、本当の自分。その「Being」を大事にしながら人生を楽しんでいく力を、本書のタイトルである「個人力」と表現しました。「Being」を中心として充実した人生をつくるための思考サイクルは、「Think(あたりまえを疑う)」「Transform(常にアップデートする)」「Collaborate(個として協働する)」という3つの要素から成ります。

もちろん、個を研ぎ澄ませて個人力を発揮したいものの、どこからアップデートしていけばいいかわからないという方もいるでしょう。そうした方に向けて、『個人力』が思考のとっかかりになればいいなと思っています。

澤円氏

これからの時代を生き抜くうえで大事なのは、ありたい自分を言葉にしておくこと。自分の内側から湧き出てくる感情や、「Being」にバカ正直に生きることです。そうすればいつでも原点に立ち戻れるし、生きることに迷いがなくなります。他者とズレていてもまったく問題ありません。

そもそも他者とのズレが気になってしまうのは、キャリアを二次元で考えているから。年齢を横軸、肩書きを縦軸にとるとしましょう。年齢に比例して肩書きも上がっていくべきだと思っていると、役職がなくなったときにショックを受けてしまう。また、自分と同世代で肩書きが上の人がいると、自分とのズレを感じて嫉妬が起きてしまいます。

■好き、興味、志……「利他的自己中戦略」をとる

ポイントは、キャリアを三次元で考えること。自分自身のまわりを、ボールが取り囲んでいる様子をイメージしてみてください。これを僕は、「やわらかくて、しなやかで、やさしいボール」と表現しています。このボールは三次元の時空に浮かんでいて、他のボール(他者)と交差することもあれば、離れることもある。そんなフラットな関係です。他者との比較から逃れられ、肩書きの上下が気にならなくなります。

またこのボールは、自分の内側から湧き上がる「好き」「興味」「志」などによって広がっていきます。すると、興味が似ている他のボールと遭遇しやすくなり、つながりが生まれていく。

注意したいのは、単に自分勝手にやりたいことをやるわけではないということです。「相手のために自分にできることは何か」と考え、自発的に行動していくことで、つながりや仲間ができる。ひいては自分のやりたいことが実現できていく。これを「利他的自己中戦略」と呼んでおり、ニューノーマルに対応するうえでの人生戦略になると考えています。

澤円氏

■入社して2年ほどは、「ポンコツエンジニア」だった

僕自身のBeingとは、「最大多数の最大幸福」です。これを明確に言語化できるようになったのは、この数年くらいのこと。どんなときに自分が幸せなのかと考えていくと、究極的には、周囲の人がご機嫌な状態だと気づきました。

その背景には、幼少期、僕のまわりに不機嫌な人が多かったという事実があります。学校生活では画一的な価値観や空気があって、それになじめずにいた。その影響もあり、自己肯定感はずっと低かったんです。

信じてもらえないかもしれませんが、大人になってからも自己否定の連続でした。けれども、そんな時期もあってか、「ありたい自分」について考えるようになり、「自分を正しく評価できるのは自分だけ」と心底信じられるようになった。こうして「Being」を軸に人生の選択ができるようになったのです。

自分自身の意思決定を振り返ってみて最高によかったなと思うのは、文系でIT業界に飛び込み、エンジニアの道を選んだこと。入社して2年ほどは、「ポンコツエンジニア」と自称するくらい、プログラマーには向いていませんでした。

■まずは「ちょっとグレてみたら」と伝えたい

ところが、1995年に「Windows95」が登場し、インターネット時代元年を迎えた。そこではコンピューターに詳しいかどうかを問わず、誰もが初心者としてインターネットに向き合うことになりました。だからプログラミングに向いていなくても、エンジニアというだけで「素人として詳しい」というポジションを確保できたわけです。

澤円氏

その後も、つい最近まで勤めていたマイクロソフトでは、「競合他社の製品に詳しい人」という、ちょっとユニークな立場をとることで、他者と比較されないようにしてきました。これができたのは、「ありたい自分」について自己との対話を続けてきたからだと思っています。

個人力で勝負したいものの、人の目が気になって一歩が踏み出せていない方もいるでしょう。そんな方には、「ちょっとグレてみたら」と伝えたいですね。普段まずやらないことをやってみる。メイクや髪の色を変えるとか、それくらいのことでいいんです。「上司や同僚に嫌われるかもしれない」と心配するかもしれません。ですが、実際に行動を変えてみると、たいして周囲への影響はないと気づくはずです。

起きもしない未来に対して、「~かもしれない思考」で生きていると、人生をムダにしてしまう。まずは何でも試してみるのが大人のグレ方です。

■自分の憧れているものに「探究心」をもつ

自分の「Being」を大事にしたいけれども、現実には周囲の期待や世間の「こうあるべき」にとらわれ、それをあたかも自分の「Being」だとしてキャリアを歩んでいる――。そんな状況にある方でも本来の「Being」に気づき、自分をアップデートしていくためにどうすればいいか。

澤円氏

1つは、自分が憧れているものに「探究心」をもつことです。憧れている人がいたら、なぜその人に憧れているのかを具体的に分解して、言語化するといいでしょう。

よくロールモデルが見つからないという人がいますよね。それは「自分と職種や世代が近い人のほうがいい」などと、勝手に候補を絞っている場合が多いから。ロールモデルは歴史上の人物でもいいし、実在した人でなくてもいいんです。

僕のロールモデルといえば、ルパン三世。けれんみがないし、自分の欲望にバカ正直に生きていて、それでいて利他的でもある。仕事観におけるロールモデルは、『007』シリーズに出てくるQや『バットマン』のアルフレッドのような、凄腕エンジニア。彼らに憧れてプログラマーになったくらいですから。彼らはたとえ目立たなくても重要な役割を果たし、主人公たちの活躍を支えていた。そういう存在への憧れがあり、自分のBeingを下支えしてくれていました。こんなふうに、自分が憧れている人の要素を思い切り受け入れ、取り入れていくことをおすすめします。

■厳しいことばかりいう人とは、距離をとったほうがいい

自分をアップデートさせるための2つめの秘訣は、徹底的に自分の味方になり、自分を褒めてくれる人を見つけておくことです。僕の場合は奥さんがまさにそんな存在ですが、同僚でもメンターでもいい。応援者がいると背中を押してもらえます。

あとは、厳しいフィードバックばかりしてくる人っていませんか? 「あなたのためを思って」というけれど、それは全然違います。本当に自分のことを考えてくれているなら、「こうするといいよ」と助言はしても、厳しい発言ばかりしてくるはずはありません。そういう人とは距離をとったほうがいい。真の応援者は、どんな夢や目標に対しても、プラスのフィードバックをしてくれるというのが僕の持論です。

『個人力』では、「Transform(常にアップデートする)」の重要性についてふれています。この「アップデート」は、フライヤーで提案している、知的筋力を鍛えて、人生満足度を高めるための習慣、「ビジネスワークアウト」に近いと感じました。僕は「必ずこれをやる」というルーティン化はあまりしませんが、1つ意識していることがあります。それは、新しいものが入り込む「余白」をつくることです。

■幸せな人生を歩めるのは、アップデートを続けられる人

最近は、YouTube Liveや音声メディアVoicy「澤円の深夜の福音ラジオ」の配信、書籍の執筆、来年開設予定の武蔵野大学アントレプレナーシップ学部のプレ講義など、やりたいことがやれています。ただし、他者とのコミュニケーション前提の言語化されたインプットとアウトプットばかりでは、心が疲弊してしまうんです。そこで気晴らしにピアノを弾いたり、音楽を聴いたり、詩にふれたりするようにしています。

澤円『個人力 やりたいことにわがままになるニューノーマルの働き方』(プレジデント社)
澤円『個人力 やりたいことにわがままになるニューノーマルの働き方』(プレジデント社)

いま考えているのは海の見える場所への半移住です。海も山も見える地で、ゆっくり釣りをしたいなと。仕事の生産性は下がるかもしれないけれど、人生を意味あるものにするために、余白となる時間を意識的にとりたいですね。

よくビジョンは何かと聞かれますが、僕は「これを成し遂げたい」というのはありません。都度、楽しいと思ったことを追求している感じでしょうか。「あたりまえ」にとらわれず、自分をアップデートし続けられる人が幸せな人生を歩んでいける。そんな応援のメッセージを、『個人力』を通して伝えていけたらうれしいですね。

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澤 円(さわ・まどか)
圓窓 代表取締役
1969年生まれ。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報共有系コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任。2019年より現職。著書に、『外資系エリートのシンプルな伝え方』(KADOKAWA)、『マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1 プレゼン術』(ダイヤモンド社)、伊藤羊一氏との共著『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)などがある。 Twitter:madoka510 Facebook:Madoka Sawa

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(圓窓 代表取締役 澤 円)

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