「口減らしされる人 vs 口がかかる人」同じ会社で同じ仕事なのに、この差はどこからくるのか
プレジデントオンライン / 2020年11月11日 9時15分
■同じ会社、同じ仕事なのに、なんでこんなに差がつくのか?
新型コロナにより私たちの「働き方」は一変し、雇用環境も刻々と変わっています。業績の悪化で「年収3割カット」を余儀なくされた航空会社のようにダメージの大きい業界もあります。
今回に限らず、生き残りに必死な企業というのは、とにかく売り上げの確保と経費の削減を最優先します。そして、その経費において最も負担となるものが、固定費でしょう。固定費の代表は、賃料と人件費。特に人件費は社会保険費も企業が半額負担するため、企業における支出は生産性を伴わなければ、単なる“お荷物”となってしまいます。
リモートワークによる賃料の減少は企業にとってメリットが大きく、場合によっては社員にとっても都合のよい場合が少なくありません。その一方、人件費に関しては、労働者は法律によって一定程度保護されているため、いきなり解雇ということにはならなくても、中長期的にはリストラされるリスクがあります。
特に衰退産業において、それは顕著でしょう。そのとき、企業は生産性の高い人を残し、そうではない人がその犠牲になる可能性が高い。
では、企業が残す人材・手放さない人材とリストラ対象になる人材の違いはどこにあるのでしょうか。
■企業が絶対手放さない人材とリストラされる人材の違いはどこか
筆者は、これまで教育評論家として上場企業の人材研修を多数行ってきましたが、そのとき人事部の社員と話題になるのが次の3つのタイプなのです。
<タイプ1>仕事から学ぼうと思っていない人
このタイプは、仕事は仕事として割り切っており、与えられた仕事以上のことについては考えないタイプ。また、できる仕事はマニュアル化されたルーティンワーク止まりで、特にそれ以上動こうともせず、学ぼうとも思っていません。
<タイプ2>仕事中しか学ばない人
2つ目のタイプは、与えられた仕事をきちんとこなすことに加え、向上心も備えている人です。仕事に関係することはマジメに学び働くというタイプ。周囲からも信頼されます。いわゆる世の中の常識人と言われる人たちがやっているスタイルで、勤務年数が長ければ、徐々に昇格していくタイプです。タイプ1~3の中ではこのタイプが一番多いことでしょう。
実際、このタイプは職場でも円滑な生活を営むことができ、戦力としては悪くありません。しかし、このタイプの人は、非常時においては生き残りが難しくなる可能性があります。なぜなら、仕事という枠を超えた思考ができないからです。
ちなみにこの<タイプ2>には次の3つの特徴のいずれかがあります。
a)「両立」という言葉をよく使う
仕事とプライベートをきっちり分けて考えています。思考回路も2つの異なる時間で異なるものになっており、そのため「両立」という言葉がしばしば出てきます。
b)「気合い」「根性」「努力」が是という考え
これらの言葉の背景には、「やりたくないことも、気合で行け!」という精神論があります。こうした精神論のみで21世紀のテクノロジーの時代を生き抜くのは至難の業でしょう。
c)トップになれない自分を責める
<タイプ2>は、全体的に大きな失敗をすることもない代わりに、大きな成長もしません。そのため自分が周囲の期待に沿えない場合、自らを責めるか諦めの念を持つことがあります。人によっては<タイプ1>に格下げになってしまう人もいます。
■プライベートの時間でも頭を休ませない人が生き残る
<タイプ3>睡眠時以外はすべてが学びの人
<タイプ3>は、通勤途中、帰宅途中、昼休み、休日、趣味、夫婦や子どもとのコミュニケーション中、カフェでゆったりとしているときですら、仕事に関連する何かを考え、学んでいます。つまり、時間的なONとOFFはあっても、思考の世界では境目がないのです。
こうしたOFFタイムで得られたアイデアや考え、スキル、方法がONタイムに生かされることは多く、会社にも本人にも有益です。
以上の3タイプを学習科学の分野に置き換えると次のようになります。
タイプ1)学びはほぼなく、進歩がない
タイプ2)意図的学習(仕事中に学べることは学ぶ割り切り型)
タイプ3)偶発的学習(日常のあらゆる出来事からも偶発的に学んでしまう)
本当に<タイプ3>のような人がいるのかと疑う人がいるかもしれませんが、世の中には、実際に一定の割合で存在することは、多くの上場企業の人事部の方たちが述べています。
このようなタイプの人は、数の割合からみれば少ないものの、筆者の知人であるビジネスマンの中にもいます。彼らは仕事をしている専門領域で圧倒的な能力を発揮するだけなく、好奇心旺盛でいろんな訪問の勉強を楽しみ、人生を楽しむ。それが「普通」なのです。
■人事部長「普通に働いている人は会社にい続けられなくなる」
また、企業の人事部長クラスの人と話をすると必ず出てくるのが、次の話です。
●属しているのが衰退産業の場合は<タイプ2>の“普通”の人たちも、そのまま居続けることが困難となる。<タイプ2>は本来、与えられた仕事をこなし、その対価であるサラリーを受け取ることで成立しているが、業界自体がシュリンクしていく状況では、仕事の数がそもそも減るため、リストラの対象となる可能性がある。
●<タイプ3>の人たちは、企業の成長に貢献できるタイプであり、変革期において新しい情報をキャッチアップし、時代の潮流をマクロ的に把握する視野を持っているため、必然的に残るだろう。
しかし、このような人は、自らの能力を人から指示されることなく伸ばすことができるため、独立してしまう可能性もある。これは企業側のリスクとなる。特に新型コロナによって、リモートワークが進み、可処分時間が増えることで、<タイプ3>の人たちは、副業や複業をすることで、さらに自分のフィールドを増やすことできるため、いつ独立しても経済的に困らない状況になれば、即辞表を出すこともできてしまう。
上記3つの「格差」や「予測」はまさにコロナ禍の現在のような非常時において出てくるものです。
筆者が主宰する「21世紀型経営者会」(自分の人生・経営をアップデートさせたいというビジネスパーソンを集めた会議)でも、実際、大企業に勤めながら、独立の準備をしている人は少なくありません。
読者の皆さんの<タイプ>ははたして1、2、3のどれだったでしょうか。同期入社でも、キャリアを積むうちに、転落危機にある<タイプ1>になる人がいる一方、引く手あまたの<タイプ3>になる人がいます。同じ社風、同じ仕事をしていても自然と差はつく。非情な現実ですが、それは日常生活の「意識」の差が生み出すものなのです。
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教育デザインラボ 代表 都留文科大学特任教授
1968年横浜生まれ。20歳で起業し、学習塾を創業。3500人以上の生徒に直接指導。講演会やセミナーを含め、5万人以上を指導。「心の状態を高め」「生活習慣を整え」「考えさせる」の3つを柱に、学力上昇のみならず、社会に出ても活用できるスキルとマインドを習得させてきた。現在は特に、「日本から 勉強が嫌いな子を1人残らずなくしたい」と、Mama Cafe、執筆、講演を精力的に行う。国際経営学修士(MBA)、教育学修士(東京大学)。著書に『はじめての子ども手帳』『子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」』『子どもの自己肯定感が高まる魔法のことば』ほか多数。講演、執筆相談はこちらから。公式サイト/公式ブログ/Facebook
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(教育デザインラボ 代表 都留文科大学特任教授 石田 勝紀)
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