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世界中の注目が集まる、「ESG投資」の基礎と上手な投資のコツ

プレジデントオンライン / 2021年1月1日 8時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Thithawat_s)

コロナ禍で、ますます注目を集めるESG投資。なぜ話題なのか。一体どういう企業に投資することなのか。またリターンはどうなのかをESG研究の第一人者に聞いた

■国連が主導して長期にリスクをなくすため

ESGとは環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の3つの頭文字をとったもの。ESG投資はこの3つの視点から投資することを意味します。

あくまで例ですが、Eなら、CO2の削減に積極的に取り組む企業、Sなら従業員が働きやすい社内制度を整えている企業、Gなら取締役の人種や性別に偏りがないなどの取り組みをしている企業がESGに配慮していると見なされます。

ESG投資は2006年に、国連の当時の事務総長コフィー・アナン氏が責任投資原則(PRI)を提案したことから始まりました。PRIは保険会社、銀行、年金基金、投資顧問会社など、大量の資金を株式や債券に投資して運用する大口投資家(機関投資家)に対して、企業の財務情報だけでなく、ESGの視点も併せ持って、地球や社会が持続可能であるよう、投資先を選ぶように呼びかけたものです。特に長期の視野で投資先を決める機関投資家がESGに配慮して投資すれば、企業もESGを意識せざるをえなくなる。結果的に世の中が持続可能な方向に向かうという考え方です。

■肯定的な観点で投資先を決める点が特徴

それ以前にもSRI(社会的責任)投資という似た概念がありました。SRIが、タバコ事業は有害なので外すというように、ネガティブな要素を見つけて投資先から外していくことから始まったのに対し、ESG投資は、長期的にリスクを下げられるという肯定的な観点で投資先を決める点が特徴的です(ESGでもネガティブ面でスクリーニングすることはあります)。

これは投資の基本は投資した金額に対して、リターンがなければならないという考え方にも合致しています。ESGに配慮している企業は長期的に見てリスクが少ない、つまりリターンにもつながるからです。

米国のカリフォルニア州職員退職年金基金(CalPERS)など欧米の主要公的年金は、06年時点ですでにPRIに署名していますが、15年に世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がPRIに署名したことで、一気に日本の金融業界の関心事となりました。国内でのESG企業への投資金額は16~18年の2年間で7倍の2兆米ドルになっているものの、欧州の7分の1、米国の6分の1で、まだまだ伸び代があります。

折しも気候変動による異常気象や、新型コロナウイルス感染症のまん延などの災厄が相次いで、気候変動や、従業員の健康への配慮は企業の当然の義務になっています。女性活躍、働き方改革、コンプライアンスに対する意識も高まっています。国連が言うからESGに配慮するというより、ESGに配慮していない企業はより切実に、生き残れなくなるという危機意識が、投資家側でも企業の側でも共有されてきているのです。

ESGに配慮しているかどうかのひとつの手がかりは、企業サイトの開示情報です。日本企業はアピールが苦手で完璧にできていることしか開示しない傾向があるといわれてきましたが、特に気候変動対策を中心に、最近は充実してきています。

開示情報を見るポイントは、ESGへの取り組みをアリバイ的に示すのではなく、企業戦略とESGと財務の話を「統合情報」として一体化して説明できているかどうかです。株主にはお金の話、一般消費者にはESGへの取り組みと分けているならあまり評価できません。

■ESG投資の意義はますます高まっている

業界によってどの部分を強調して見るべきなのかは異なります。個々の企業について、経営理念と事業との結びつけ方やサステナビリティへの貢献意欲を調べ、ESGに配慮しているのかを見比べるのはおもしろいプロセスですが、個人ではそこまで目配りができないかもしれません。そこで、ESGにどのくらい配慮しているかを客観的に測る「指標」を参照するのも手です。さまざまなESG調査機関がありますが、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数や、FTSEラッセル・ESGレーティングズなどの大手調査機関の指標を参考にするところから始めるのがわかりやすいでしょう。

ESG投資のリターンについては、さまざまな調査により、長期で見ればリターンが出ているというのが大方の見方です。ただし、企業の業績はさまざまな要因で変動するので、ESGに配慮している企業の業績がよくても、それがESGによるものか、別の要因によるものかが判別し難いところです。ただ、今コロナ禍で世界中の社会・経済が大きな混乱をきたしています。社会の変化に耐えられるよう、日頃から多様な人材を集めて、さまざまな新しいアイデアを出して対応していけるような企業が生き残っていくでしょう。その意味では長期でリスクを減らしサステナブルであるというESG投資の意義はますます高まっているのです。

ESGに関わるテーマは至るところにあります。地域に還元できるような新しい技術を開発して使っている、女性活躍が進んでいるなど、自分の立場や気になるテーマから、企業のESGへの取り組みを調べるのもおすすめです。

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村上 芽(むらかみ・めぐむ)
日本総合研究所創発戦略センターシニアマネジャー
京都大学法学部卒業。日本興業銀行を経て、2003年に日本総研入社。10年より創発戦略センター所属。企業のESG評価、環境と金融が専門。子どもの参加論にも傾注。著書に『投資家と企業のためのESG読本』『SDGs入門』など。

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(日本総合研究所創発戦略センターシニアマネジャー 村上 芽 構成=奥田由意 写真=iStock.com)

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