「東大卒がコンプレックスだった」香川照之さんがそう告白した理由
プレジデントオンライン / 2021年1月9日 11時15分
※本稿は、『ものごとに動じない人の習慣術(新装版) 冷静でしなやか、タフな心をつくる秘訣』(KAWADE夢新書)の一部を再編集したものです。
■調子が悪いときがあってもいい
自分でも信じられないほど、どんどん仕事が片づいていくことがある。そんなときは、結果までついてきて、自分でも「オレは仕事ができる!」と確信に近い思いがある。いわゆる絶好調だ。
そうかと思うと、やることなすこと裏目に出て、絶対、勝てるはずの企画コンペだったのに、思わぬ伏兵に敗れてしまう。誰もが驚くような負け! 自分でも、なぜだかわからない。こういうときは絶不調だったとしかいいようがない。
こんなふうに、自分でも、優秀なんだかダメ人間なのか、わからなくなることはないだろうか。
まあ、どっちの自分もまぎれもなく自分自身なのだが、どうせなら、優秀な自分とだけ向き合って生きていったほうがずっと気分がよいのではないか。絶好調ならば、そのまま勢いにのっていけばいいが、問題は絶不調のときに、どうするか、である。
どうにも、うまく自分をのせられない。がんばろうとするのだが、力が湧いてこない。我ながら、冴えがない。こういう不調時は、いまは勝負するときではないと割り切ってしまう、という手もあることを知っておきたい。
■うまくいかないときは、自分ではなく“ツキ”のせいにする
四柱推命は占いではなく、中国五〇〇〇年の経験則を統計的にまとめた結果から、一人一人の運気のサイクルを見るものだという。それを信じなさい、というわけではないから誤解のないように。
ただ、人には力を発揮しやすい時期と、何事もうまくいかない時期がある。それはある一定のサイクルで順ぐりにめぐっている、という考え方だけを“いただいてしまおう”というわけだ。
何をやってもうまくいく。こういうときは、「いまはツキまくりのサイクルなのだ」と勝手に思いこみ、思う存分、がんばるのだ。
ツイているサイクルなのだから、かならず、結果はついてくる。自分を、というより、絶好調のサイクルを信じてしまうのである。反対に、モチベーションが下がったときは、力を発揮しにくいサイクルに入ったのだと考えればよい。
ものごとがうまくいかないのは、ツキのないサイクルのせいで、自分のせいではないと考えるのだ。それなら、気持ちはずっと楽になる。
この“思いこみ”のよいところは、人生のツキにはサイクルがあると信じるところにある。サイクルがあるのだから、悪いときは、そのうち、いいサイクルに変わるはずだとひたすら“待ち”に徹していればよいということになるわけだ。
■ビジネスで大きな成功をおさめている人がやっていること
モチベーションが下がったときには、ジタバタせず、運気のサイクルがよいほうに変わるのを待っていればいい。ジタバタすればするほど、穴は大きく、深く広がっていくだけなのだ。
自分はいま、不調のサイクルなのだからと思うことにし、積極的な行動には出ないようにし、必要なことだけをたんたんとこなしていれば、それで十分だ。
もちろん、会社を休むわけにはいかないだろう。不調のサイクルのときは、与えられた仕事をいっそうていねいに、地道にやることに専念する。うっかりミスをすれば、さらに不調感が増幅してしまうからだ。
そうしているうちに、やがてサイクルは変わる。そうすれば、自然にパワーが満ちはじめ、好調から絶好調へとサイクルが変わっていく。
まわりを見まわしても、つねに勝ちっぱなし、常勝将軍だという人はまずいないはずだ。じっさい、実業の世界で大きな成功をおさめている人でも、話を聞くと、たいてい、信じられないような絶不調期を経験しているものだ。
いっけん常勝に見える人は、不調のサイクルには待ちに徹して、コツコツ地道に仕事をしながら、じっと力を蓄えている。そして、潮目が変わったとき、それまでの蓄えを一気に吐き出し、力を炸裂させる。そんな術に長けているのである。
もし、いまが、あなたの不調時だと思うなら、そのうちに、絶好調のサイクルが回ってくることをまず信じよう。そして、コツコツと目の前のやるべきことをこなしながら、潮目の変わり目を待つのである。
絶不調時に、なんとかしなければ、とジタバタすると、潮目の変わり目が訪れたとき、それを感知できなくなってしまうというマイナスもある。潮目が変わるまで、ジタバタせずに待てるか、待てないか。それしだいで、結果は大きく分かれてしまうのだ。
■世間の価値観と一致することが“いい人生”ではない
一流大学を出て、有名会社に就職して、三〇代で年収一〇〇〇万円を目指す。“いい人生”とは、そういう人生だと思っている。そんな人がまだまだ多いようだ。
もちろん、そうした人生を否定するわけではないが、いい人生とは毎日が心地よく過ぎていくことが大原則だ。
これまでも書いてきたが、世間や社会の価値観は、無視していいわけではないが、それをそのまま、自分の価値軸にしてしまうと、どこかに違和感を覚えるポイントに突き当たることがある。
俳優の香川照之さんは、人もうらやむ東大卒。最近では東大在学生のタレントも珍しくないが、香川さんが俳優になるころは、「せっかく東大を出ているのに」という目がなかった、といえばウソになる。
東大を出て、一流会社に就職して、いいポストについて……。おそらく、香川さんの周囲でも、そういう期待は大きかったのではないだろうか。香川さんは、歌舞伎役者の市川猿之助さんと元宝塚のトップスターだった女優・浜木綿子さんのあいだに生まれた。幼いころ、両親が離婚。香川さんは浜さんの手元で成長した。
そういう環境だからこそ、東大に進学した自慢の息子が俳優になると言い出したときは、浜さんは相当悩み、なんとか、息子の俳優志望を変えさせる方法はないか、と親しい人に相談したらしい。
だが、香川さんは、自分を貫いて、俳優の道を選んで突き進んでいく。その本当の動機の底には、彼の東大コンプレックスがあったと知って驚いた。
■学歴コンプレックスを抱えていた香川照之
あるとき、香川さんがテレビでこういっていたのだ。
「ぼくは、東大にいったことがずっとコンプレックスだったんですよね」
えっ? と驚く人も多いだろう。香川さんの話によると、母子家庭に育った香川さんは、小さいころから、周囲の期待や視線に敏感に応じてしまうタイプだったそうだ。「勉強をして、いい成績をとってくれば、周囲は喜ぶ」。そうした周囲の期待に応えていれば、ほめられ、喜ばれ、それなりに居心地は悪くない。
だが、香川さんは自分を押し殺して、まわりの目に応えてしまう自分が卑怯なような気がして、ずっと自分を許せなかったというのである。
一流大学、有名会社コースを歩むことにこだわり、それを実現した人のなかには、それ以外の視野をもてない人、それさえ満たせばよいと思っている人がいる。しかし、正直にいって、こういう人は、精神的に未成熟であることが多く、人間的に強く引かれることはむしろまれだ。
エリートが悪いといっているわけではない。価値観が硬直していることに問題があるのだ。こういう人は、自分の価値軸の基本が自分自身ではなく、世間や社会だから、もっとも気になるのは、世間や社会がどう思うか、ということだ。
その結果、たえず人の顔色をうかがっていないと安心できず、ちょっとしたことにも心が揺れ動いてしまう。
いつも平常心をもって生きていく。その原点は、自分の価値軸をしっかりもち、大事なことだけしっかり押さえ、それ以外のことは、どうでもいいと言い切ってしまう姿勢をもつことだ。
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フリーライター
早稲田大学文学部卒業後、コピーライター、出版社を経て、執筆活動に入る。ライターとして、ビジネス界のキーパーソンや作家、文化人などを数多く取材。著書に『育ちのいい人が身につけている ちょっとした習慣』(KAWADE夢文庫)、『ものごとに動じない人の習慣術(新装版):冷静でしなやか、タフな心をつくる秘訣 』(KAWADE夢新書)などがある。
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(フリーライター 菅原 圭)
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