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人事部はガチだ「査定の厳格化」で進む"B評価社員"の転落地獄

プレジデントオンライン / 2021年2月25日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/alphabetMN

コロナ禍の2021年、会社員の懐がますます寂しくなる。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「企業の規模を問わず、人事部はこれまでの年功的給与体系から結果を残さない者を容赦なく減給・降格させることが可能なジョブ型人事制度導入の動きを活発化させています」という。そうした厳しい状況下でも「給与が上がる人」の鉄板の3つの法則とは何か——。

■2021年の給与・ボーナス減は必至……ヤバいのはその先だ

春闘の賃上げ交渉が本格的に始まっている。しかし、今年は給与だけではなくボーナスも大幅な減少が避けられない冬の時代に突入しそうだ。

2020年末のボーナスは、新型コロナウイルスの影響で2009年のリーマンショック直後以来の大幅なマイナスだった。厚生労働省の調査によると従業員1000人以上の企業の平均額は前年の86.8万円から9.64%減の78.6万円だった。2013年以来、毎年伸び続けてきたが、8年ぶりに減少に転じた。

今年は給与の減少も必至の情勢だ。

労務行政研究所が上場企業の経営側・労働組合・専門家の3者に実施した「2021年賃上げ等に関するアンケート調査」によると、全回答者平均で今年の賃上げ額は定期昇給込みで5524円、率にして1.73%となった。“官製春闘”が始まる2013年以来、8年ぶりに2%を下回るとの予測だ。

同所の予測は実際値に近いことで定評がある。2020年の予測値は2.05%だったが、実際は2.00%(厚生労働省調査)だった。

今年、昨年を下回るのはベア(ベースアップ)を実施する企業が少ないとみられているからだ。毎年一定金額ずつ上がることがルール化されている定期昇給に上乗せされるのがベアだが、今年ベアを実施する予定と回答した企業はわずか4.8%(20年16.9%)。「実施しない予定」が61.9%に上っている。

調査では夏のボーナスの全体予想についても聞いている。

「2020年夏と比べて増加する」と回答したしたのは経営側・労働側・専門家も一桁にとどまるが、減少すると回答したのは経営側33.8%、労働側41.3%、専門家62.1%。下がるにしても労働組合側のほうが厳しい見方をしている。減少率の予測については経営側・労働側ともに「10~20%未満」が最も多い。

ちなみに2020年夏の平均ボーナス額は82.8万円(厚労省調査)。10%減なら74.5万円、20%減なら66.2万円と大幅に低下する。

■業績の悪化やテレワーク導入で残業代で稼ぐことがほぼ不可能

毎月の給与やボーナスが減少するのは確実な状況であるが、すでに足下の給与もジリジリと下がっている。

給与はコロナ下の2020年4月以降から減少に転じ、同年の月額平均給与は前年比1.1%減の33万7367円(パートを除く)。これにボーナスなどを加えた現金給与総額は41万7330円。前年比1.7%の減少となった(厚労省「毎月勤労統計調査」速報)。

給与のうち最も減少幅が大きいのが残業代のマイナス12.4%だ。業績の悪化やテレワークの導入によって残業代で稼ぐことがほぼ不可能な状況になっている。

今後さらに給与がダウンすれば生活も苦しくなる。ちなみに食料費や住居費などの生計費や、税金・社会保険料の負担は年々増している。

例えば、さいたま市の4人世帯の標準生計費は28万6700円。これに税・社会保険料を加えると40万4384円になる(2020年4月、都道府県人事委員会調査)。前出のボーナスを含む平均月額給与の41.7万円だとカツカツの生活を強いられることになる。

■大企業も中小企業も「賃金制度の見直し」で減給・降格当たり前に

ここまではマクロの給与の見通しであるが、個々の企業に着目すると単純に給与が下がるという話だけではない。

コロナ禍を契機に業績不振の企業を中心に賃金制度の見直しを行う企業が増えている。

人事部長で構成する日本CHO協会の調査(2021年1月25~2月10日)によると、人事・評価制度の抜本的な見直しは予定されているかという質問に対し「具体的に計画している」が38%、「検討はしているが未定」が36%となっている。

なぜ今、人事・評価制度の見直しが必要なのか。

一部上場企業のサービス業の人事部長はこう語る。

「コロナ禍の業績不振で来期の見通しが明るくない中で人件費予算も厳しくなることが予想されている。人事部としてはこれまで甘かった人事評価制度を厳しくする方向で検討している。コロナ前の業績好調のときはほとんどの評価が真ん中のB評価やA評価に集中し、それなりに昇給していた。しかし今後は評価項目の内容を明確化し、厳格に評価し、評価が高ければ若くても昇格・昇進させる一方で、評価が低い社員は降格させる。じつはこれまでは100人昇格しても、降格するのは1~2人程度というユルユルの仕組みだったが、今後は50人程度が降格するような厳しい運用を行っていく予定だ」

評価制度の厳格化によって給与減を伴う降格を実施していくという。この考え方は大企業に限らない。あしたのチームが実施した調査(2021年1月27日~29日)によると、従業員300人未満の企業の経営者のうち「直近1年で報酬(給与)に見合う成果を出していないと思う社員がいると回答したのは62.7%。逆に報酬以上の成果を出していると思う社員がいると回答したのは76.7%。給与と成果が不均衡だと感じている経営者が多い。

そして「期間内の成果(出来高)に応じて給与額を増減させる賃金制度にしたいと思うか」の質問に対し、「とても思う」が24.0%、「まあ思う」が54.0%と、8割近くが成果重視の賃金制度の見直しを望んでいる。

■コロナ不況で人事部は「痛みを伴う賃金改革」を本気でやる

業績が好調であれば賃金制度を見直す企業は少ないが、業績不振が続くと人件費の負担が重くのしかかり、成果主義をより強化する傾向にあるのは過去の不況時も同じだった。

だが、今回のコロナ不況において人事部は「社員の痛みを伴う改革」を本気でやろうとしている。

中でも、注目されているのがジョブ型人事制度だ。

日本企業が導入しようとしているジョブ型は2つある。

一つは、日本的ジョブ型とも呼ぶべきもので、組織目標に応じて担当者、係長、課長などのポストごとに発揮すべき役割を定義し、役割の責任と役割達成度で給与(役割給)が決まる。

もう一つが、アメリカ的なジョブ型で、職務(専門性)に着目し、職務内容を明確に定義した職務記述書に基づいて評価され、給与(職務給)が決まる。役割ごとに給与を格付けしたものを役割等級、職務の難易度で格付けしたものを職務等級と呼ぶ。

ビジネスマンの様々な姿勢と動き
写真=iStock.com/alphabetMN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/alphabetMN

前出の日本CHO協会の調査によると、今年(2021年)中に「ジョブ型雇用」に取り組むべきテーマと考えている企業が26%もある。あしたのチームの調査でも、導入したいと思う経営者が3.3%、興味・関心はある経営者が52.7%に上る。

いずれにしても役割等級や職務等級の2つの制度に移行すると間違いなく今までの給与が大きく変化する。なぜなら年功的給与を完全に否定した仕組みであり、役割や職務レベルが低いと評価されると給与が下がるからだ。

上司に「毎日がんばっている」とか「彼なら課長が務まる能力がある」とかいう曖昧な評価で予定調和的に給与が上がることはなくなる。

実際、役割等級制度を導入しているネット広告会社では「同じ40歳でも年収600万円の等級の社員もいれば、30代から等級がそのままで年収300万円の社員もいる」(人事担当者)のが現実だ。

■人事コンサルタント「コロナ禍でも給与が上がる人」鉄板の3法則

では、これから主流になる可能性があるジョブ型人事制度の中で給与を上げるにはどうすればよいのか。

何人かの人事コンサルタントに聞いた「コロナ禍でも給与が上がる人」の鉄板の法則は次の3つだ。

①市場価値のある専門性のスキルを高める人
②ビジネスを伸ばすための企画力・提案力がある人
③企業内外の幅広い人脈を駆使し、経営層へのアピール力が高い人

専門性は時代の変化とともに陳腐化していく。①のように常に新しいスキルを磨くことが大切だ。しかし、30代後半から40代になると専門職としてキャリアアップしていくことも難しくなる。給与を上げるには管理職になる道もあるが、それも難しければ自分のスキルを必要とする企業に転職する道もあるという。

ビジネスマンの様々な姿勢と動き
写真=iStock.com/alphabetMN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/alphabetMN

職務給の世界では自ら仕事をつかんでいくことが求められる。企業の経営環境を踏まえ、②のように、ビジネスを伸ばしていくために自分がどんな貢献ができるかを考え、ビジネスを企画し、積極的に提案していくことで仕事のチャンスを切り開いていくことが必要になる。

さらに上の地位を目指すには③のように会社の上層部とのつきあいだけではなく、外部の人脈を駆使し、たとえば企業間提携による新規事業を提案し、自らその一翼を担う存在になることだ。

3つに共通して求められるのは起業家精神だ。

与えられる仕事だけをこなしていては何歳になっても給与が上がらない厳しい世界が待っている。これまでのように職場で皆と仲良く仕事をやっていれば、給与も上がっていく甘い時代ではなくなりつつあるのは確かだろう。

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溝上 憲文(みぞうえ・のりふみ)
人事ジャーナリスト
1958年、鹿児島県生まれ。明治大学卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。著書に『人事部はここを見ている!』など。

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(人事ジャーナリスト 溝上 憲文)

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