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橋下徹「"お金の不安"を消すことができるたった一つの方法」

プレジデントオンライン / 2021年4月13日 11時15分

写真提供=徳間書店

老後を安心して過ごせるだけの資金をつくるにはどうすればいいのか。元大阪市長の橋下徹弁護士は「貯金だけで老後資金を賄える人はそういない。貯蓄から投資へとマインドを転換する必要がある」という――。

※本稿は、橋下徹・堀江貴文『生き方革命 未知なる新時代の攻略法』(徳間書店)の一部を再編集したものです。

■公的年金だけに頼っていては毎月5万円の赤字

2019年6月に金融庁が公開した報告書「高齢社会における資産形成・管理(※)」は、大変な話題を呼んだ。話題を呼んだというよりも炎上したというほうが正しいかもしれない。

(※)市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」:金融審議会

報告書では「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1300万円~2000万円になる」と述べられている。

公的年金だけに頼っていては毎月5万円の赤字になるから、計画的に資産形成、運用を行う必要があるというのが報告書の主旨だ。

しかしニュースでは「老後資金は年金以外に2000万円が必要」という部分が強調され、「年金制度が破綻していることを政府が認めた」「2000万円なんてとても用意できない」といったヒステリックな反応が巻き起こった。

報告書の試算では、高齢夫婦無職世帯の支出が毎月約26万円、(おもに年金での)収入が毎月約21万円としているが、年金支給額も支出も世帯によって異なるし、資産をどれだけ持っているかは考慮されていないので、一概に老後資金がいくら必要だと言い切るのはなかなか難しい。

この報告書によれば、現在の高齢者は年金以外に、約1300万円~2000万円ほど使える資産を持っているとも読める。

それはさておき、我々は老後資金をどうすればいいか。

■労働による貯金だけで老後資金を賄える人はそういない

政治行政に関わってきた経験からまず大きな視点で言うならば、老後に安心できる社会保障の仕組み作りは、政治の責任だと僕は考えている。

だからといって、現行の年金制度をどれだけいじっても安心できる年金額を給付することは難しい。給付額を上げようと思えば、年金料を引き上げるか、税金の投入量を増やさなければならないが、いまの政治の力では、それをやり切ることはまず困難だろう。

このような状況を打破するのは、やはり「投資」だろう。

そして国民の投資を成功させるためには、政治が国の経済成長をしっかりと実現していかなくてはならない。

国としては、付加価値の高い産業を育成し、きちんと儲けられる企業を増やす。個人についても、ただ貯金するのではなく、成長している国内外の有望な業界に投資してリターンを得るという考え方を身につけてもらう。

世の中には、経済成長はもう要らないと言う人たちが少なからずいる。日本の人口減少は不可避として衰退を受け入れ、「平等に貧しくなろう」という「清貧」を説く。そういう人たちはたいてい学者などで、贅沢しなければそれなりに生活が保障されている身分の人であることが多い。

確かに十分に資産を蓄えて逃げ切れる人であれば、国が経済成長せずとも意に介さないだろう。

だが、現役世代、そして未来世代はそういうわけにいかない。

経済成長のない国では、基本的に給料も上がらない。安い給料から貯蓄をしようとしても、いまの銀行に預けたところでマイナス金利の時代に利息はつかない。労働による貯金だけで老後資金を賄える人はそういないだろう。

■いっそ半強制的な積立投資の仕組みがあってもよい

お金を儲けられる能力を全員が持っているなんてことはありえない。ビジネスモデルを思いついて起業し、人を雇用して利益を上げるというのはとても難しい。

僕にしてもなんとか弁護士としてそれなりの収入を得ることができたが、多くの雇用を生み出すような企業を作ったわけではない。

お金儲けの得意な人間が企業を経営して利益を出し、ほかの人はその企業に投資してリターンを受け取れればいい。株式会社とはそもそもそういうものだし、利益を出せる企業が増えれば社会は経済成長していく。

21世紀に入って政府も「貯蓄から投資へ」としきりにアピールするようになり、iDeCo(個人型確定拠出年金)や、つみたてNISA(少額投資非課税制度)などの制度も整備されてきた。

成長の投資概念
写真=iStock.com/Ghing
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ghing

これらは要するに、株式や国債などに対して定額積立投資を行う仕組みだが、掛け金が全額所得控除されたり、運用益が非課税になったりと、一般的な投資に比べて税金が優遇されている。

こうした制度で投資を促すことは良いことだと僕は考えているし、いっそ半強制的な積立投資の仕組みがあってもよいのではないかとも思う。

■ETF投資ではその国の経済が伸びることが重要になる

さらに株式の個別銘柄に投資するには、これまた一定の知識が必要となる。

そこでアメリカや日本の経済全体に投資するという方法がある。「ETF(上場投資信託)」だ。ETFとは、S&P500(アメリカ)や日経平均など、その国の株価指数そのものに投資するようなものだ。株価指数はその国の複数の株価から弾き出されるが、その計算に用いられる株式を売り買いするようなもので、結局、株価指数に投資したことと同じになる。

個別銘柄への投資ではなく、その国の経済力に投資するようなものだ。

株価が上がることはもちろん、ETF投資ではその国の経済が伸びることが重要になる。

ゆえに投資制度だけでなく、日本社会全体の経済成長を促進することも重要となるのだ。GDP(国内総生産)世界1位のアメリカ、そして2位の中国は急速に成長を続けている。翻って日本は、バブル崩壊以降ほとんどGDPが伸びていない。

■新たな市場は流動性の高い社会で生まれる

そして国々の経済成長は、つまるところ流動性に左右されるものだ。

例えば、南アフリカ出身の実業家イーロン・マスクはアメリカに移住して、テスラやスペースXなどの企業を立ち上げ、アメリカ経済を牽引している。失敗をものともせずロケットの打ち上げを繰り返し、宇宙ビジネスの市場を切り開いていった。

ロケット打ち上げの失敗動画を堂々と公開し、ロケットが大爆発しても、ちゃんとデータが取れたから成功だと言ってのける自信。その様子には、僕も感動してしまった。

アメリカは新参者がチャレンジすることを大いに認める社会だ。もちろん市場のニーズに合わなければ容赦なく退場を迫られる。

中国は共産党の一党独裁体制下にあり、そのことには僕は反発を覚える。だが、ビジネスについてはアメリカと同様激しすぎるほどの流動性のなか、企業は切磋琢磨し、世界で戦っている。

そのような流動性のなかで従来にない市場が生まれ、そこにヒト、モノ、カネが流れ込み、さらに市場が拡大していく。

これが経済成長するということだ。

社会としての流動性を高めて、企業活動を盛んにして、経済成長を促す。庶民の投資を促す制度を整備し、最低限の生活についてはベーシックインカムで支えるようにし、そして庶民の投資が果実を得られるだけの経済成長を果たす。これが老後も安心して暮らせる社会ではないだろうか。

そのために一般の人々も貯蓄から投資へとマインドを転換する必要があるだろう。

■まずはお金に関する基本的なリテラシーを身につける

かつては年率6%もの利息がつくこともあったが、これは当時の日本が急速に経済成長していたからだ。郵便局(現在のゆうちょ銀行)にお金を預けておくだけで、一般の人々も経済成長の恩恵を受けることができた。

橋下徹・堀江貴文『生き方革命 未知なる新時代の攻略法』(徳間書店)
橋下徹・堀江貴文『生き方革命 未知なる新時代の攻略法』(徳間書店)

いまは、各人が投資することを考えなくてはいけない。もっとも、投資が重要だからといって、とにかく株を買えとか、通貨FXやビットコイン取引をやって一攫千金を狙えと言うのではない。

その場その場の利益を目指す「投機」と、その国や企業の中長期的な経済成長を期待する「投資」との違いをしっかりと認識しなければならない。

まずは、お金に関する基本的なリテラシーを身につけるべきだろう。国のGDPが増えていくとはどういうことなのか、株式会社はどんな仕組みになっているのか、複利とはどういうことか、複式簿記とはどういう仕組みなのか。

お金に関するリテラシーがあれば、無理な借金をしなければならないケースも減るだろうし、少しずつ積み立てて資産形成をするといったこともできるようになる。

学校ではお金に関する知識をほとんど教えてくれないので、なかなかお金のリテラシーを身につける機会がない。いまは自分で本やネットなどを活用して勉強するしかないが、公的な教育プログラムにももっとお金に関するカリキュラムは入れ込むべきだ。

どういったカリキュラムにするかは専門家が判断するべきだが、お金に関する国民のリテラシーが高くなれば、政治の政策論争もより生産的なものになるのではないだろうか。

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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年、東京都生まれ。弁護士、政治評論家。2008年から大阪府知事、11年から大阪市長を歴任し、大阪都構想住民投票の実施や、行政組織・財政改革などを行う。15年に大阪市長を任期満了で退任。現在、テレビ出演、講演、執筆活動を中心に多方面で活動。『実行力』『異端のすすめ』『交渉力』『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』など著書多数。

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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹)

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