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「自分は月5万アパート、元妻は6000万円マンション」ペアローン離婚の恐ろしい格差

プレジデントオンライン / 2021年7月14日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

夫婦でマンションを購入する時、どんなことに気をつければいいのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「それぞれが独立して住宅ローンを組む『ペアローン』を希望する人がいる。だが、離婚でのリスクが大きいので注意が必要だ」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山氏のもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

丸山さん(仮名/35歳)のケース
本人 会社員 年収500万円
元妻 会社員 年収400万円住まい 新築分譲マンション
(本人の住宅ローン10万5000円/元妻の住宅ローン5万5000円 ※管理費・修繕積立金 月額2万円。それぞれ1万円ずつ負担)

■離婚後も解消できない「ペアローン」問題

「男は仕事、女は家庭」という従来の性別役割分業が崩れ、現在では共働き世帯が1000万世帯超。性別にかかわらず共に稼ぎ、生活をシェアする家族の増加は、「家」にまつわるお金や所有意識も変化させています。

今回の相談者も、マイホーム購入にあたって夫婦間の住宅ローンを「平等」にしたいという希望から、ペアローンを選択しました。しかし、そのチョイスが生活を脅かしてしまったのです。丸山さん夫婦(仮名)の例から学んでいきたいと思います。

「丸山さん夫婦」と書きましたが、実は2人はすでに離婚しており、相談にいらしたのは、夫の航平さん(35歳/仮名)でした。すれ違いが離婚の原因だったそうですが、離婚後も解消できない問題として、ペアローンが重くのしかかっていたのです。

■誤算を招いたのは、ローン返済が進んでいない段階での離婚

丸山元夫婦の世帯年収は航平さん500万円、ひとつ年下の元妻は400万円の計900万円で、30代のDINKSとしては珍しくないものでした。互いに自立し、「結婚後も財布は分けたい」という2人の希望から、住宅ローンもそれぞれが独立してローンを組む「ペアローン」にしたのです。

購入したのは東京都内の新築マンションで、6000万円。300万円の頭金をきっちり折半し、残りの5700万円のうち夫が3700万円、妻2000万円でペアローンを組みました。当時の世帯年収は900万円ですから、手取りにすると2人で毎月55万円ほど。毎月のローン返済金額は夫約10万5000円、妻約5万5000円です。管理費・修繕積立金も加味すると収入に対する住居費の割合は約32%で、都心部に家を買うなら許容範囲です。ただし、収入に対する理想的な住居費の割合は、25%といわれています。

しかし、2人は2年後に離婚。私がまず厳しいと感じたのは、まったくローン返済ができていない段階での離婚になってしまったことです。もちろん離婚は2人の幸せのために必要なことだったという前提で、あくまでFP的な視点での話です。

住宅ローンについては、固定金利1%の手堅い借り入れをしていました。また、丸山元夫婦が選択した住宅ローンの返済方法は「元利均等返済」でした。この返済方法は、毎月の返済額は一定ですが、返済当初ほど、返済額に占める利息の割合が大きいため、2年間ではほとんど元金が減っていない状態になります。

■マンションが売れてもローン残債が残る状態

さらに「新築物件」という点にも、落とし穴がありました。皆さんは「新築プレミアム」をご存知でしょうか。新築プレミアムとは、相場価格にプラスされる「新築物件を完成させるまでにかかった費用」のことを指します。

新築物件では建築費はじめ、モデルルームの費用や広告宣伝費といった「物件を建てて売るまでにかかったあらゆるコスト」をもとにして販売価格が設定されます。これは、市場の需給から価格が決まる中古物件とは値段設定の仕方が根本から異なるものです。

その上で丸山さんが買った物件を見てみましょう。彼らが買った新築マンションは6000万でしたが、同じような条件の物件の市場価格は4800万円ほどでした。購入してから2年ほどしか経っていないので、極端に値下がりするのは考えづらいとなると、差額の1200万円分のほとんどが新築プレミアムにあたると予想されます。

これが厄介なのは、丸山さん元夫婦が離婚を機にマンションを売ろうとしても4800万円でしか売れないため、ローンの残債が2人に残ってしまうということなのです。

離婚
写真=iStock.com/Andrii Yalanskyi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Andrii Yalanskyi

■家賃5万円のアパートに住みながら、月10万5000円のローンを返済

金融業界ではこのような状況をオーバーローンといいます。反対に、ローンの残債より高く物件が売れることをアンダーローンといい、利益がでれば2人で折半して後腐れなくお別れできたことでしょう。たとえオーバーローンでも、互いに貯金が1000万円ずつでもあればローン返済も可能でしたが、2人に貯蓄はほとんどありませんでした。

そんな丸山元夫妻は現在どうしているか。離婚したものの、家については離婚時に決着がつかず、航平さんは家賃5万円のアパートに引っ越して毎月10万5000円のローンを返済し続けており、元妻はそのままマンションに暮らしてローンを払っています。

そもそも名義人である夫が住まないのは規約違反となるため、良くない方法ではあるのですが……。

とはいえ、元妻はマンションに暮らせているだけいいかもしれませんが、ペアローンは互いが連帯保証人になっている点も、この状況では非常に危ない。だって、自分は安アパートに暮らして、離婚した元妻が住む新築マンションのローンを払うモチベーションって……。航平さんの立場になったら相当キツいことがわかると思います。もし航平さんに新しいパートナーができて返済が滞った場合、元妻がその責任を負うかたちになるので、彼女も気が気でないはずです。そして元妻も払えなくなると、家は差し押さえられることになるのです……。

■「どちらかのものにする」のも難しい

そこで今は、私が提携している専門家の方と連携して、銀行に「任意売却」の可能性について相談しているところです。自分の意思ではなく強制的に売却されてしまう「競売」は安く買い叩かれがちですが、任意売却の場合、市場価値に見合った価格で売却でき、明け渡し時期も自分たちで決めることができます。さらに売れた後のローン残債を銀行が無理のないかたちで組み替えてくれる可能性もあるので、航平さんは元妻を説得して、前向きに検討したいと思っているようです。

ただ航平さんとしては、ペアローンを一本化して、不動産をすべて自分のものにしたいそうなんです。たしかに、手取り30万円ほどの彼が毎月16万円ほどのローンを背負うのはかなり大変なことですが、今現在もアパート代とローン返済で同じくらいの住居費がかかっているため、同じ金額を払うなら、新築マンションに住みたいのは当然かもしれません。

しかしこれも一筋縄ではいきません。当然、元妻の合意が必要ですし、そもそも世帯年収900万円のペアローンだからこそ、銀行側も貸してくれた金額です。ローンを一本化するのであれば、銀行が航平さん一人でも返済能力があるのかどうかを再度、審査することになるのです。

不動産
写真=iStock.com/GOCMEN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GOCMEN

■「一人でも引き受けられる額なのか」を含めて慎重に検討する必要

私の感覚では、「財布も家も自分の持ち分をしっかり確保したい」という自立心の強いカップルがペアローンを選んでいる気がします。実際丸山さんだけでなく、私のもとに来るご夫妻でペアローンを希望する方は少なくありません。気をつけなくてはいけない点もありますが、住宅ローン減税やすまい給付金といった控除や支援もそれぞれに受けることができ、長期的な視点で見るとお得な場合もあります。

ただしそれらはすべて「離婚しない」前提の話。今の時代、互いに自立していればなおさら、無理してまで一緒にいる理由はありません。

ということで私が強くおすすめしたいのは、どんなにラブラブな時期でも、ペアローンを組むなら「仮に離婚して一人になっても引き受けられる額なのかどうか」も含めて慎重に検討してみましょう、ということです。

また新築を購入する場合は新築プレミアム分を頭金で入れておくか、万が一の時に備えて、その物件の資産価値を調べておき、売却するとなった場合、いくらで売却でき、その際にローン残債はいくらになるかをあらかじめシミュレーションしておくといいでしょう。

■「離婚の可能性」も考えて家を買おうとする新婚カップル

最近いらした新婚の若いカップルは、まさに「離婚をする可能性」も考えて家を買おうとしていました。とっても仲良しだけど、「将来に備えてリスクヘッジをしておきたいんです」とニコニコしながら話すんです。冷静ですごいなあと感心しました。愛と資産問題を分けて考えている若い方を見ると、心強い気持ちになります。

それに、コロナ禍でライフスタイルがガラッと変わったことで、不動産の価値観も様変わりしています。投資用物件を見ていても、かつては山手線の内側で駅チカならどんなに狭くてもすぐ借り手がついたのに、今は都心の狭小分譲賃貸がすごく苦戦しています。一方で、郊外の駅から徒歩20~30分の広い家がバンバン売れて賃貸もつきやすくなっているというから、本当にわからないものです。

生涯で一番高い買い物になる「家」。ピカピカのモデルルームを見て不動産屋に勧められると、つい熱くなってしまいがちです。大きなお金が動く時こそ、利害関係のない第三者のファイナンシャルプランナーにぜひ相談していただきたいですね。

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高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。

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(Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士 高山 一恵 構成=小泉なつみ)

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