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出社自粛をするべきなのにオジサン上司がせっせと通勤を続ける本当の理由

プレジデントオンライン / 2021年9月5日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ooyoo

政府は在宅勤務を勧奨しているが、多くのホワイトカラーは通勤を続けている。なぜテレワークに切り替えないのか。マーケティングコンサルタントの酒井光雄さんは「昭和型の上司は出社するのが当たり前だと思っている。部下はそういう上司の考えを先回りするしかないだろう」という――。

■メリットの大きいテレワークに潜む問題

パンデミックが広がって1年半以上が経過する中、テレワークにいち早く取り組み、社員を出社させずに業務を行っている企業があります。

テレワークは

・移動がなくなり交通費や出張費が削減できる
・リモート面接によって広域から人材を採用できる
・オフィススペースを減らし家賃と光熱費が圧縮できる

といった企業メリットがあります。また通勤に伴う感染リスクを低下させ、時間を有効活用できるため、社員からも歓迎されています。

新しい働き方としてテレワークにすぐ移行できる人は、一般社員を中心にオフィスワークの中でも自己完結型業務に従事している人たちが中心になります。

彼らからは

「話しかけられたり横やりが入ったりすることがないので、集中して仕事に取り組める」
「上司からPCのトラブルやシステムの使い方などを尋ねられることがなくなった」
「社内外からの電話がなくなり、仕事が中断しない」
「周囲の目を気にせずに働ける」

という肯定的な声を私自身よく耳にします。

また私生活でも「満員電車の通勤から解放される」「家族との時間が増やせる」「通勤時間がなくなった分、時間を有効活用できる」といった声も伺います。うまく定着すれば社員の働き方の自由度やQOLは向上するでしょう。

そんな企業とビジネスパーソンの両者にメリットのあるテレワークですが、水面下で新たな問題が生まれています。それは上司と部下のコミュニケーションに関する問題です。

■テレワークに潜む上司と部下の軋轢

まず、テレワークで社員の方々からよく聞こえる声をご紹介します。

「途中経過の報告を頻繁に求められる」
「上司の要請でオンラインミーティングを開くと、延々と会議が続く」
「必要性を感じないのに、出社させられる」

といったものが多いと感じています。

特に1つ目の、「途中経過や報告を頻繁に求められる」という声は、部下と上司の間に生まれた意識ギャップによる行き違いを端的に示す職場の大問題です。

仕事の進捗など、自己管理ができる社員からは、「お願いだから、仕事の邪魔をしないでくれ~」という切実な声が聞こえてくる一方、上司はこれまで以上に報告・連絡・相談を求める傾向が強くなっています。

窓辺で腕を組む真剣なビジネスマン
写真=iStock.com/electravk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/electravk

上司や管理職層との間で、なぜそうしたギャップがテレワークでは生じるのでしょうか。原因は、背景には上司や管理職層が抱える6つの要因に整理することができます。

■途中経過の報告を頻繁に求める“昭和上司”の心理

1.目の前で働く姿を見て、部下を評価すべきだと思い込んでいる

会社に出社するのが当たり前だった頃のまま、自分の目の前で働く姿を見て、部下を評価する方法が正しいと思い込んでいるケースです。このタイプの人は部下の働く姿がリアルに見えないため、リモートワークには否定的になりがちです。

2.長年続けてきた仕事の方法を変えられない

「打合せは、直接顔を突き合わせて行うのがミーティングだ」
「就業後は部下を誘ってなじみの店に行くのがコミュニケーションだ」

長年続けてきたこうした習慣を変えられない人はいます。

またメンバーシップ型マネジメントで育ってきたため、プロセス管理型マネジメントしかできず、リモートワークに最適なマネジメント方法を見いだせない場合もあります。

3.これまでの「労働時間管理」発想に縛られている

会社で長時間労働やサービス残業をさせないようにするために生まれた仕組みが、「労働時間管理」や「勤怠管理」です。しかしテレワークではこの制度をそのまま適用できない状況が生まれます。

テレワークでは出勤時間や退勤時間、昼食時間や休憩時間、残業時間などが自己申告になるなど、会社内で就労する場合とは異なる状況が生まれます。どこまで本人の申告を信じ、またその裏付けをどこでどう取るのか、立ち止まってしまう人も現れます。

4.ITリテラシーの不足

会社に届く紙の請求書や契約書を処理し、承認の印鑑を押すために出社するといったアナログ対応に疑問を感じていない。リモートツールやチャットツールに不慣れなため、テレワークに積極的になれない。こうした人はどの企業にも存在しています。

ITを活用した働き方に前向きに取り組んでこなかった人にとって、テレワークへの転換は傍で見るより難しいようです。

5.自宅で仕事をする環境にない

自宅に自分の部屋やスペースがない。子供が夏休みなどで家にいる時は騒がしくて、仕事に集中できない。夫が自宅にいることを妻が嫌がる。

こうした理由から、自宅で仕事ができないミドルエイジは結構存在します。本当はテレワークをしたいのに、出勤している人も少なくありません。

6.自身の存在感が希薄化する

管理職は会社に出勤すれば部下たちは自分に頭を下げてくれ、周囲ににらみを利かせることができます。会社にいることで満足感を得ていた人がテレワークになると、自身の存在が希薄化したように感じる人が出てきます。従来どおり出社することを望む管理職には潜在的に潜んでいる心理です。

■イマドキ上司に求められる「部下の伴奏者」

働き方の選択肢としてテレワークが位置づけられるようになれば、リアルを前提にしたマネジメントには限界が生じます。旧来のままでは管理職層である上司と部下の関係には軋轢(あつれき)が生じ、業務に支障が出る場合もあります。

階段を上る3人のビジネスパーソン
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

会社とは社員全員がそこに集まって仕事をする、ある面で強制されている場所です。会社には部下たちを「管理」する管理職がいて、部下たちの仕事を目の前でチェックします。同じ場所で働いていますから、上司が部下の仕事の進捗状況を確認するには、その場で声を掛ければ済みます。

社員は仕事の内容や進め方について上司に確認しながら進めることになりますから、どうしても「受動的」になり、時に「指示待ち」する社員が生まれる場合もあります。

その一方、テレワークでは管理職層の上司と部下たちは同じ場所で仕事をしていません。部下に指示したり確認したりする際には、「Zoom」や「Google Meet」などのオンライン会議システムやビジネスチャット、そしてメールなどを使い分けてやり取りすることになります。部下は目の前にいませんから、従来のように上司から部下に頻繁にやり取りすることはできなくなります。

■詳細な指示、命令では逆効果

社員の側も出社時のように上司から詳細な指示は出ませんから、「受動的」で「指示待ち」でいては仕事ができません。「自発的」に考え「計画的に仕事を進める」ことが社員にも欠かせなくなります。

テレワークで管理職層に求められるのは、詳細に指示や命令をするのではなく、部下が自発的に仕事に取り組めるように支援するスタイルに転換することです。

そこで必要になるのは、

●社として求められている成果や結果を明確化する
●よい結果を生むために必要な作業手順(作業プロセス)を導き出し、チームと社員がそれぞれ共有化する
●作業プロセスごとに、チームメンバー各人が、なにを、いつまでに、どのようにして達成するかを決めて仕事に取り組む

という流れにすることです。

仕事は想定外のことが起きるのが常ですから、問題が起きれば上司はすぐに部下の相談に乗り、共に検討して解決策を見いだす役割を果たしていくことになります。

働き方が転換期を迎える今、管理職層に最も必要なことは、プロセス管理を中心とした評価や査定だけでなく、結果から判断するマネジメントへの転換です。また進捗プロセスのチェックよりも、求められたら助言や支援を行い、部下が仕事に取り組みやすくなる伴奏者になることです。

■「部下の必須スキル」は“先手の報連相”

自己管理ができる優秀な社員が、これまでと変わらない上司と企業の対応に見切りをつけてしまう。リモートで意思疎通が減り、若手社員が孤独を感じてしまう――。こうしたことをきっかけに起きる人材流出は、社員にとっても会社にとっても不幸なことです。

テレワークが認められているのに、出社している若手社員がいます。彼らがそうなる理由は、「テレワークだけで、自分は上司から正しく評価してもらえるのだろうか」「仕事をさぼっていると思われないか」といった不安があるからです。こうした職場も互いに不幸です。

自己完結型の仕事をする部下と違い、管理職の仕事は部下がいてこそできる仕事です。部下たちの働く姿を見ることができず、慣れないテレワークで職務を続けることは、上司にも相当なストレスと不安があります。

テレワークに代表される新しい働き方では、管理職層が仕事の仕方を変える必要がある一方、管理職のもとで働く社員たちにも求められることがあります。

・仕事の進捗状況やプロセスが見えない上司には、求められる前に部下の側から報告を入れる。
・外出先からでも対応できるスケジュール管理やファイル閲覧、社員間で情報共有できるツールなどに上司も参加しやすいように協力する。
・わからないことや支障が生じた時には、すぐ上司に相談する。

こうした対応をしていけば、上司も安心して部下を支援できます。

これからまだしばらくはCOVID-19と共存することになり、私たちは最適な働き方を模索しながら仕事をすることになります。これからの社会は、出社とテレワークを組み合わせていくことは間違いありません。

行き違いを少しでも減らすために、上司は社員のやる気をそがないように心掛け、社員も上司の心理を踏まえた行動が求められてきます。

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酒井 光雄(さかい・みつお)
マーケティングコンサルタント
学習院大学法学部卒業。事業経営の本質は「これまで存在していなかった新たな価値を生み出し、社会に認めてもらう活動」であると提唱。価値の低いものはいつの時代も、必ず価格競争に巻き込まれ、淘汰されていくとして、一貫して企業と商品の「価値づくり」を支援している。日本経済新聞社が実施した「経営コンサルタント調査」で、「企業に最も評価されるコンサルタント会社ベスト20」に選ばれた実績を持つ。著書に『不況を乗り切るマーケティング図鑑』『デジタル時代のマーケティング・エクササイズ』(共にプレジデント社)、『全史×成功事例で読む「マーケティング」大全』、『成功事例に学ぶ マーケティング戦略の教科書』(共にかんき出版)、『コトラーを読む』『商品よりもニュースを売れ! 情報連鎖を生み出すマーケティング』(共に日本経済新聞出版)、『価値づくり進化経営』『中小企業が強いブランド力を持つ経営』『価格の決定権を持つ経営』(共に日本経営合理化協会)、『図解&事例で学ぶマーケティングの教科書』(監修)『男の居場所』(共にマイナビ出版)など多数ある。プレジデント社のオンラインサイト「プレジデントオンライン」で連載コラムを執筆し、多くのファンに支持されている。日経BP社が主催する日経BP Marketing Awardsの審査委員を長年務めている。http://www.ms-bgate.com/

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(マーケティングコンサルタント 酒井 光雄)

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