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「若くして認知症に」40代後半で一気に脳が老ける人の頭の中で起きていること

プレジデントオンライン / 2021年9月23日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ra2studio

40代を超えても脳が若い人、老化がどんどん進む人がいる。その決定的違いとは? 「脳をダメにする根本原因があるんです」と言うのは「脳の学校」代表の加藤俊徳氏だ。セブン‐イレブン限定書籍『45歳から頭が良くなる脳の強化書』からその驚きの仕組みを特別公開する——。(第1回/全3回)

※本稿は、加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■「若いころは頭がもっとシャープだったのに…」

「最近、もの忘れが多くなった」「人の名前が覚えられない」「まったくアイデアが浮かばない」「集中できない」……40歳を過ぎてこんな実感をしたとき、あなたは「もう歳だからしょうがない」と考えてはいないでしょうか。でも、それは間違いです。

加齢によって脳の中の神経細胞が減ったり、記憶に関係する「海馬(かいば)」という部分が萎縮したりすることは現実としてあります。でも、脳の機能低下の原因は老化だけではありません。

あなたは1日に5分でも、その日の出来事を振り返る時間を持てているでしょうか。1週間のうちにどのくらい、スマホを持たずに屋外に出て、自然の声に耳を傾けているでしょうか。

40代といえば、仕事や家事に最も忙しい世代。「そんな余裕はない」と怒られてしまいそうですが、そうしたちょっとした日々の時間が、実は脳にとっては大量の情報を整理して記憶を定着させ、本来の機能を取り戻すためにとても貴重な時間です。

ただ時間に追われ、マンネリ化した日々を送っていると、脳は「自動化」して、怠(なま)けることを覚えて働かなくなっていきます。ただでさえ、スマホやパソコンが「記憶装置」として働くことで、脳はすっかり楽をするクセがついてしまっているのですから。

■脳は死ぬまで成長する

脳は、あなたが生まれ落ちる前から成長を始め、生後の経験によって形を変えながら、40代になろうと、80代になろうと、100歳を超えても成長を続ける。「死ぬまで成長する器官」なのです。

これは、脳内科医で脳科学者でもある私が、これまで1万人以上の脳のMRI(磁気共鳴画像診断装置)画像を診て実際に確認した事実です。

あなたの脳は今、多忙かつ便利すぎる日々の中で、ちょっと怠けてしまっているかもしれません。でも、あなた自身が意識をして、日常生活の中で脳に刺激を与えることで、脳は目覚めて活性化し、3カ月もあれば生まれ変わったように変化します

とくに40代、50代という世代こそ、脳を鍛えることによって今後の人生が輝かしいものになるか、そのまま放置して老化していくかの分かれ目です。

■能力を引き出し、高める「日々の経験」

人間というのは、生まれたときから何でもできる天才であったり、逆に一生、何の能力もないままでいることは絶対にありません。私たち人間の能力は、日々の経験によって必ず育っていくものだからです。

私たちの「能力」を生み出しているのは、言うまでもなく「脳」です。脳には、異なる種類の「神経細胞」が1000億個以上も存在しています。

これらの細胞にはそれぞれの働きがあり、同じような働きをする細胞同士が集まって集団を形成しています。集団で活動することによって、複雑な脳の働きを支え、能力を生み出しているのです。

そして、同じような働きをする細胞集団は、脳の中でそれぞれ集合体としてまとまって配置されています。私はこれを「脳番地」と呼んでいます。

■すべての人間が「個性的な脳」を持っている

脳の神経細胞からは「神経線維」という回路が伸びています。これは、神経細胞が発する情報を、ほかの神経細胞に伝達するためのケーブルのようなものです。

神経細胞が活発に働くと、神経線維はだんだん太くなって、ネットワークができていきます。その様子をMRI画像で観察すると、まるで樹木の枝が伸びているように見えるので、私は「枝ぶり」と呼んでいます。

この枝ぶりの数や太さ、成長の度合いは人によって異なります。そのため、一人ひとりの顔が違うように、一人ひとりの脳の形も違います。人間の脳にはひとつたりとも同じものはない、といってもいいくらいなのです。

脳には個性がありますが、それは生まれながらのものではありません。

遺伝子によって、ある程度は成長の順番が規定されています。しかし、人生経験を積み重ねるうちに、脳は生まれ持った神経細胞の遺伝子を超えて成長していく、ということです。

脳は20代から40代にかけての時期に、非常に個性的になっていくことがわかっています。脳が「成長したい」という、その勢いが最も強くなるのがこの年代なのです。

とはいえ、人間の脳は、生まれてきたときも未完成、成人しても未完成。つまり一生涯を通して未完成のまま。その事実は、脳のMRI画像を見るとよく理解できます。

出典=加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)
出典=加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)

生まれたばかりの赤ちゃんの脳の中には、「枝ぶり」が全然育っていません(画像左)。だからツルツルで真っ白です。それが、2歳くらいの幼児になってくると黒い筋(枝ぶり)が出てきます(同中)。少しずつネットワークができていくわけです。そして、成人の脳には、太い「枝ぶり」がしっかりとできています(同右)。

ただし、成人になればみな同じようにしっかりとした「枝ぶり」が育つわけではありません。何の経験もせず、何の刺激も与えられない状況では、脳の「枝ぶり」が伸びることはありません。

脳は筋肉と同じで、使うことで鍛えられ、発達していきます。日々の生活で使われ鍛えられている脳は、40歳を超えても成長できる反面、使わないでいれば若くても退化してしまう可能性がある、ということなのです。

■40代後半から急増する「脳の老化物質」

脳の機能低下をもたらすのは、インターネットやSNSだけではありません。40代後半になると、私たちの体の中にも変化が起こります。

20代、30代であれば、内臓も元気で消化吸収・代謝機能が高く、多少の暴飲暴食をしても、体に何かトラブルが出てくることはほとんどありません。ところが40代後半になってくると、ちょっとしたタイミングで、体の不調、老化のサインが出てきます。

海辺の砂
写真=iStock.com/Pra-chid
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pra-chid

神経系の器官である脳も、例外ではありません。テレビに出てくるタレントを見て、顔はわかるのに名前が出てこなかった。冷蔵庫を開けた途端に、何を取ろうとしていたのか思い出せなかった……。40代後半の多くの人が経験する「もの忘れ」は、「脳の老化のサイン」です。

なぜこうしたことが起こるのか。それは、40代後半になると、それまで脳の中には存在しなかった「老化物質」が増えてくるからです。

健康で元気な人であっても、神経細胞が老化を始め、脳の中心部にあって記憶を司る「海馬」に萎縮がみられることもわかっています。こうした変化が脳の成長を阻み、機能を低下させてしまうのです。

■50代以降にピークになる脳のエリアがある

その一方で、50代を過ぎてから成長のピークを迎える脳の部分もあります。それが、脳の前方にある「超前頭野」と呼ばれる部分です。

「超前頭野」は実行力や判断力を司る部分です。これに、30代でピークを迎え、記憶や理解に関係する「超側頭野」、40代でピークを迎え、五感で得た情報をもとに分析や理解をする「超頭頂野」を合わせた3つを、私は「超脳野(ちょうのうや)(スーパーブレインエリア)」と名づけています。

超脳野は人間特有のもので、脳の中でもとくに複雑な情報処理をしている超エリート脳細胞集団だといえます。「天才」と呼ばれる人々の生み出すひらめきは、この3つの超脳野の機能が関係していると考えられています。

中でも「超前頭野」は、80歳以上の高齢者でも、元気な人にはあまり萎縮がみられないだけでなく、100歳を過ぎても成長を続けることがわかっています。また、超前頭野が活発に働く人は、ストレスに強い耐性があることが確認されています。

「超前頭野」が発達すると、本来の実行力や判断力が高まるだけでなく、人生の経験をもとに深く理解して考える力や、人と接することで培ってきたコミュニケーション力を生かすことができるようになります。

ということはつまり、社会の中で多くの経験を積み重ねてきた40代後半から50代こそ、「超前頭野」が活発に働くことによって、難しい話や込み入った事情を理解し、適切な判断ができるということ。この世代は、さまざまな経験や知識に裏打ちされた思考力や理解力を兼ね備えた個性が、最も輝く「黄金世代」だともいえるのです。

■脳の老化が早い人=認知症リスクの高い人

問題は、40代後半になると、脳の成長が低下する人と、右肩上がりに成長する人に分かれることです。図表1を見てください。45~55歳の間に、人間の脳の成長度が大きく分かれていくことがわかると思います。

出典=加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)
出典=加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)

Aのラインは、脳を鍛え続けることで50歳を超えても脳が成長し続けているケースで、認知症とは無縁。Bのラインは、ごく一般的なケースで、加齢とともに緩やかに脳が衰えていきます。Cのラインは、記憶力低下を自覚しつつも、何も対策を取らなかった結果、急激に脳の機能低下が起きたケースで、若くして認知症になるリスク大です。

次に図表2を見てください。

出典=加藤俊徳『定年後が楽しくなる脳習慣』(潮新書)
出典=加藤俊徳『定年後が楽しくなる脳習慣』(潮新書)

脳の成長力が早く衰えて老化度が早く上がる人(グラフ中の「交差年齢」がより早く訪れる人)は、早期に認知症になりやすい。逆に100歳まで脳が成長する人は老化度の上がり方が遅く、認知症になりにくいことがわかります。

そのため、今の国際的な見地としては、できるだけ長く脳を成長させ続け、高い認知機能を維持することが、老化を抑えるために重要だとされているのです。

■脳トレで「右肩上がりの脳」を実現

脳は鍛えることで成長していきます。たとえば2週間「筋トレ」をしたら、運動に関係する脳の場所が育ってきます。それぐらい脳は柔軟に変わるのです。

加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)
加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)

脳を成長させる(「枝ぶり」を伸ばす)ことは、もの忘れや認知症予防だけでなく、老化防止にもつながります。同時に、仕事や社会生活においては、能力を維持したり高めたりすることにつながるのです。

あなた自身で脳を鍛えて、50歳を超えても右肩上がりに成長する脳を手に入れることができれば、未来は本当に明るいですよ。

目標は実年齢が90歳になったときに脳は実年齢マイナス25歳、つまり、脳年齢65歳に保つこと。今50歳だとすると40年、実年齢が40歳増えても脳は15しか歳をとらない。夢のような話ですが、老化のスピードに負けない脳の成長力を維持することで、この夢がかなう可能性が見えてきます。

「もう歳だから」とか「これでいい」とか「これが限界」などと考えてしまうと、脳は成長を止めてしまい、能力はどんどん低下します。まずは自分で自分の「脳を育てる」という意識を持ってください。

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加藤 俊徳(かとう・としのり)
脳内科医
加藤プラチナクリニック院長。脳の学校代表。発達脳科学・MRI脳画像診断・認知症などの専門家。独自開発した加藤式MRI脳画像法を用いて、1万人以上の診断・治療を行う。著書に『何歳からでも! 脳を育てるトレーニング』ほか多数。

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(脳内科医 加藤 俊徳)

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