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経営者、開業医、地主…本物の富裕層が「日本の税金は世界一安い」とこっそり笑う大きな抜け穴の正体

プレジデントオンライン / 2022年4月21日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

日本の最高税率は45%で、「日本の富裕層は世界一高い所得税を払っている」と言われることがある。しかし、それは事実なのだろうか。元国税調査官の大村大次郎さんは「日本の税金が世界一高いというのはまったくのデタラメだ。むしろ、世界一安い。本物の富裕層たちはある抜け穴を利用している」という――。

※本稿は、大村大次郎『世界を変えた「ヤバい税金」』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

■消費税を払わずに買い物をするシンプルな方法

日本に住んでいる限り、誰もが消費税を払います。商品やサービスを買う時点で店が徴収するため、消費者としては逃れる道がありません。生活するためには「何も買わない」という選択肢はないので、嫌でも消費税を払わなければならないのです。

絶対に逃れられないように見える消費税ですが、実は逃れる方法がいくつかあります。

大村大次郎『世界を変えた「ヤバい税金」』(イースト・プレス)
大村大次郎『世界を変えた「ヤバい税金」』(イースト・プレス)

まず、消費税を払わずに買い物をするもっとも簡単な方法は、海外から「個人輸入」をすることです。海外の店舗に直接、申し込んで購入するのです。

昨今ではネットの発達により、海外から物を買うことも非常に簡単になりました。自分で自覚していなくても、海外から物を買っているケースも多々あるのです。

たとえば、ネットで売られているイラストや写真などには、海外サイトで販売されているものも多々あります。知らないうちに海外サイトから買い物をしているケースもあるのです。

本来、輸入品には消費税と関税がかかります。それは海外の通販サイトから何か買った場合でも同様です。

しかし、個人が自分で利用するために買うとき(商売品ではないとき)は、1回の取引が1万6666円以内であれば、消費税と関税は免除されるのです。

■海外の品物は20万円以内の購入で

個人輸入には、1回の取引が1万円以内の場合、消費税、関税が免除になるという規定があります。そして輸入品の1回の取引額を判定する際、その価額は、輸入品の購入価額の60%でいいということになっているのです。

1万6666円であれば、60%は1万円以内に収まっているため、消費税・関税は払わなくていいことになります。

消費税を払わないで買い物をするには、海外旅行をするという手もあります。海外旅行の際、基本的に現地で購入したものには日本の税金はかかりません。

ただし海外の免税品についても、合計20万円以上を購入した場合は、日本国内に持ち込むときに消費税がかかるという決まりになっています。逆に言えば、20万円以内であれば、消費税は払わなくていいことになります。

また、海外の空港で売っているものであれば、日本の商品を消費税抜きで買うことも可能です。ご存じのように、国際空港で入管を通った先には、いろんな免税ショップがあります。そこで買い物をすれば消費税は払わなくて済むのです。

■お土産で1000円のチョコレート10個は免税になる

なぜ入管を通った後なら免税になるのでしょうか? それは、消費税が国内で消費するもの(使用するもの)に対してかかる税金であり、入管を通ったなら海外に持ち出すことが明確なので、消費税は免税になるのです。

ただし日本の空港で買った免税品を日本に持ち帰った場合は、海外の免税品を買ったのと同じ扱いになります。そのため、もし日本の空港で20万円以上の買い物をし、それを持ち帰った場合は、消費税がかかります。

このように、海外旅行で買ったものは、日本の空港であれ、海外で買ったものであれ、20万円を超えれば消費税がかかります。が、実は20万円以上の免税品でも、消費税を払わずに済む方法があります。

免税品の持ち帰りについては、「1種類の商品について合計の値段が1万円以下のものについては税金が課せられない」となっているのです。これは、商品1つの値段が1万円以下ではなく、1つの商品の合計購入額が1万円以下ということです。

1000円のチョコレート10個ならば、1万円以下なので消費税はかかりません。1000円のチョコレートが11個ならば、1万円を超えるので消費税はかかります。

一方、1000円のチョコレート10個、1000円のアメが1個だと合計は1万円を超えますが、各品目で1万円以下なので消費税はかかりません。1品目あたり1万円以下であれば、どれだけ買い物をしても免税になるのです。

ベルギーのチョコレートショップ
写真=iStock.com/Sjo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sjo

この仕組みをうまく使えば、合計額が50万円でも100万円でも免税になります。高額な買い物でも、消費税を払わずに日本に持ち帰ることができるのです。

ただし、商売のための仕入れ商品は対象外です。海外の商品を安く買い付けて日本で販売する場合には、消費税や関税が課せられます。無税で持ち込めるのは、あくまで「個人的に使うもの」だけなのです。

■住民税は「どこも一緒」ではない?

日本に住み、一定の収入を得ていれば誰もが払う住民税。税額は全国一律と思っている人も多いのですが、実は若干のばらつきがあります。

住民税の課税方法には、「均等割」と「所得割」があります。この2つの税額を合算したものが、払うべき税額です。

均等割は、一定以上の所得のある人に対し同じ金額を課すものです。生活保護受給者など以外は、原則としてすべての人が払わなければなりません。

標準税額は市町村民税3500円、道府県民税1500円ですが、自治体によって若干の違いがあります。

たとえば、宮城県では県民税の均等割が2700円です。これは、標準税率の1500円に「みやぎ環境税」の1200円を含めた数字です。森林や海洋環境の保全などのため、2011年から導入されました。

所得割は、所得の額に税率をかけて算出されます。標準税率は、市町村民税が6%、道府県民税が4%で合計10%です。

所得割についても、自治体によって差があります。たとえば神奈川県は2017年から2021年まで、所得割が4.025%で、標準税率より高く設定されています。また、名古屋も2017年までは5.7%と安くなっていました(2022年現在は7.7%)。

ちなみに国民健康保険の場合、自治体による違いはもっと大きくなります。

国民健康保険とは、自営業の人や年金暮らしの人などが加入する健康保険です。この保険料は、世帯ごとに課せられたり、個人ごとに課せられたり、収入に応じて課せられたりと、計算方法が市区町村によって本当にバラバラなのです。年間数万円単位で差がついている場合もあります。

このように、どの都道府県、どの市区町村に住むかによって、負担する税金、社会保険料は大きく変わります。引っ越しなどを考える際には、検討材料とした方がいいかもしれません。

■「日本の富裕層の税金は高い」という大ウソ

「日本の金持ちは世界でもトップレベルの高い税金を払っている」こんな話はよく聞きます。インターネットでも、「日本の富裕層は世界一高い所得税を払っている」といった意見を目にすることが少なくありません。

しかし、これはまったくのデタラメです。

たしかに、日本の所得税の最高税率は45%で、先進国ではトップクラスです。これだけ見れば、日本の金持ちはたくさん税金を払っているように見えるかもしれません。

が、日本の所得税にはさまざまな抜け穴があって、名目税率は高いのだけれど、実質的な負担税率は驚くほど安いのです。むしろ、日本の富裕層は先進国でもっとも税金を払っていないと言えるのです。

日本の富裕層がいかに税金を払っていないかは、アメリカと比較するとわかりやすいでしょう。

富裕層の最高税率だけを見れば、日本は45%、アメリカは37%なので、日本は8ポイントも高くなっています。しかし、実際に支払われた税額はどうでしょうか。2021年度予算における日本の所得税収は、わずか18.7兆円に過ぎません。

一方、アメリカの所得税収は、約200兆円です。なんと日本の所得税収は、アメリカの10分の1以下しかないのです。

日本の経済規模はアメリカの4分の1ですから、明らかに日本の所得税収は少なすぎます。経済規模を考慮しても、日本の所得税収はアメリカの半分以下と言えるのです。

ほかの先進諸国と比較しても、同様の結果となります。

アメリカ、イギリス、フランスなどは、いずれも所得税の税収がGDPの10%前後です。が、日本の場合、6%程度しかありません。ほかの先進国の半分くらいしか所得税収がないのです。

先進国では、所得税収の大半を富裕層が負担する状態になっています。所得税収が少ないのはすなわち、富裕層の税負担が少なすぎるのです。

いかに、日本の金持ちの税金が抜け穴だらけか、ということです。

自宅でビジネスマンと握手する高齢の男性
写真=iStock.com/Charday Penn
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Charday Penn

■富裕層の大半が恩恵を受けている優遇税制

なぜ税率は高いのに税額は低いのかというと、日本には、配当所得(株式の配当金などの所得)に対する超優遇税制があるからです。

配当所得は、どんなに収入があっても所得税、住民税合わせて一律約20%でいいことになっているのです。20%というのは、平均的なサラリーマンの税率とほぼ同じです。

これは、配当所得を優遇することで、経済を活性化させようという小泉内閣時代の経済政策によるものでした。

富裕層には、持ち株の配当から収入を得ている者が少なくありません。富裕層の大半は、この優遇税制の恩恵を受けているのです。

また配当所得者に限らず、「経営者」「開業医」「地主」など富裕層の主たる職業ではだいたい税金の大きな抜け穴が用意されています。名目通りの高額の税率を払っている富裕層はほとんどいないといっていいのです。

国会に提出された資料でも、日本の実質税負担率は所得が1億円になるまでは税率が上がっていきますが、1億円を超えると急激に税率が下がるというデータがあります。

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大村 大次郎(おおむら・おおじろう)
元国税調査官
1960年生まれ。大阪府出身。元国税調査官。国税局、税務署で主に法人税担当調査官として10年間勤務後、経営コンサルタント、フリーライターとなる。難しい税金問題をわかりやすく解説。執筆活動のほか、ラジオ出演、「マルサ!! 東京国税局査察部」(フジテレビ系列)、「ナサケの女~国税局査察官~」(テレビ朝日系列)などの監修も務める。主な著書に『あらゆる領収書は経費で落とせる』(中公新書ラクレ)、『ズバリ回答! どんな領収書でも経費で落とす方法』『こんなモノまで! 領収書をストンと経費で落とす抜け道』『脱税の世界史』(すべて宝島社)ほか多数。

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(元国税調査官 大村 大次郎)

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