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高学年になるほど、成績が落ちることになる…中学受験のプロが「これだけは絶対NG」と親に指導すること

プレジデントオンライン / 2023年7月11日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

中学受験の準備はいつから始めればいいのか。受験指導に携わって40年以上になるプロ家庭教師の西村則康さんは「受験に向けた土台作りは生まれたときから始まっている。ただし、幼い頃から学習系の習い事やドリル学習をやりすぎるのは良くない」という――。

※本稿は、西村則康『中学受験の成功は、幼児期・低学年がカギ!「自走できる子」の育て方』(日経BP)の内容を再編集したものです。

■「中学受験の準備はいつから始めたらいいのでしょうか」

中学受験の指導に携わるようになって40年以上になる。この時期になると、毎年予約が殺到するのが「6年生の夏の対策」「秋以降の伸ばし方」といった入試本番を控えた受験生の親向けのセミナーだ。この傾向は昔も今も変わらないが、近年大きく変わったことがある。それは入試本番までははるか先の幼児・低学年向けのセミナーが、時期を問わず盛況であること。

その際、毎回必ず挙がるのが、「中学受験の準備はいつから始めたらいいのでしょうか?」という質問だ。

そんなとき、私はこう答えている。

「実は、受験に向けた土台作りは生まれたときから始まっているんですよ」

すると、親たちは血相を変えて「何をやっておけばよかったんですか?」「今からではもう間に合いませんか?」とたたみかける。

安心してほしい。もちろん、今からでも十分に間に合う。

■遊び・お手伝い・親子の会話が中学受験の土台になる

一般的に中学受験の勉強は、大手進学塾の受験コースがスタートする3年生の2月から始まる。長年、中学受験の指導をしてきたプロから見ても、それが妥当ではないかと感じている。しかし、近年の中学受験の入試問題は、単に知識を詰め込み、演習をくり返すだけの勉強法では太刀打ちできなくなっている。いわゆる“思考系”と言われる、自らの手を動かしながら考えさせる問題にシフトチェンジしているからだ。

こうした問題を解くときに必要になるのが、「もしかしてあのときのあのことを言っているのかな」「○○をしたらこうなったから、この問題もその方法で考えてみたら答えが見つかるかもしれない」といった身体を伴った経験だ。小学生の子供の場合、それは幼児期・低学年の頃に経験した遊びやお手伝い、親子の会話などが当てはまる。

■“逆算思考”であれもこれも手を出してしまう

ところが、親たちの関心事は、もっぱら「何をやらせればいいか」だ。昔も今も、中学受験をするからには、できるだけ上の学校を目指したいと考える家庭が多い。その考え自体を否定するつもりはないが、どうも今の親たちは「○○をすれば、子供の成績がグングン上がる」「小さい頃から○○をやらせておくと、受験に有利に働く」と、“何をやらせたらいいか情報”に飛びつきがちだ。おそらく共働き家庭が増えたことと、あふれるネット情報が大きな要因になっているように感じる。

親である自分が忙しく、子供の勉強を十分にサポートできない分、「わが子のために良さそうなもの」があれば、できるだけ早いうちからやらせておきたいという“逆算思考”であれもこれもと手を出してしまうのだ。

先を見据えて、早くから準備をしておくことは、賢い考えだと思う。しかし、子育ては大人同士の関係で成り立つビジネスとは違って、「これをやっておけばスムーズに事が運ぶ」という単純な展開にはならない。「これをやっておけば、必ず勉強ができる子になる」という因果関係は存在しないのだ。

■子供の「気分」に合わせて親がサポートするしかない

そもそも子供は気分で動く生き物だ。大人のように、この目標を達成するためには、「いつまでにこれをやって、いつまでにこれを終わらせておく」といったタスク型の行動は取れない。まして、遊びたい盛りの小学生が、遠い未来にある受験のために、「毎日頑張って勉強をしなければ!」と、自分を奮い立たせることなんてできない。どんなに大人びた子でも、そこまでの自制心は育っていないからだ。

では、どうしたらやる気を起こすことができるのか――。これはもう子供の「気分」に合わせて、親がサポートしていくしかない。それにはまずわが子をよく観察すること。この子は何をやっているときに楽しそうにしていて、何が好きで得意なのか。どんなときに気分が乗って、どういうときに気分が乗らないのか。そして、どういう気分であれば頑張れるのかをよく観察し、気分が乗っていないときは、ちょっとだけ頑張ればできそうなことをやらせてみて、頑張っている様子が見られたら褒める。

母親と一緒にアルファベットを学ぶ子供
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

■「毎日勉強するのは当たり前」は大人の感覚

受験をするのだから、毎日勉強するのは当たり前、なんて思ってはいけない。大人からすれば出された宿題はやるのが当たり前であっても、きちんとやったらその頑張りを認め、褒める。そうやって、「認めて」「褒める」ことをくり返し、伴走していく。それが現実的な中学受験だ。

一方、気分がいいときは、大人の想像をはるかに超えた頑張りを見せるのが子供。そうなれば、親のサポートは最小限に、子供はどんどん自走していく。両者の違いは何かというと、

「楽しい」と思えるかどうか――。

大人でもそうだが、楽しいと思うことはどんどんハマっていくし、うまくいかないことがあっても、楽しいことなら「もうちょっと頑張ればなんとかなるかもしれない」と踏ん張りがきく。中学受験の勉強もそれと同じで、「知らないことが分かるのは楽しいな」「できなかった問題が解けるようになるのはうれしいな」と思うことができれば、子供は自ら学びに向かう。

だが、その土台を作る幼児期・低学年のときに、どんな過ごし方をしてきたかで、勉強に対するイメージは変わってきてしまう。

本を読む子供
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

■高学年になって成績が伸びなくなる子供たち

中学受験のプロ家庭教師である私のところには、日々さまざまな相談が来るが、なかでも特に多いのが「高学年になってから成績が伸びなくなった」というもの。そういう家庭に「お子さんが小さい頃、どんな過ごし方をされていましたか?」と聞くと、多くが「幼児期から学習系の習い事に通わせていた」「低学年の頃からドリルをいっぱいやらせていた」と話す。

こういう子はみんな低学年まではいい成績を取り続けるが、中学受験の勉強が始まる4年生頃から徐々に成績が下がり始め、5年生でさらにガクッと下がってしまうケースが少なくない。幼い頃からの“やらされる勉強”に疲れ、勉強が楽しいと思えないからだ。

一方、4年生のときは学習習慣にまだムラがあったり、落ち着いて勉強ができなかったりした子が、学年が上がるにつれてメキメキと頭角を現すことがある。この違いを一言で言うならば、「小さいときにどれだけ熱中体験をしてきたか」に尽きる。

■小さい頃の「熱中時間」がとても大事

例えば勉強は学校の宿題くらいしかしないけれど、魚や虫など自分の好きなものの図鑑なら何時間でも飽きずに見ていられる子。親からすると「なんで同じものばかり見ているのだろう? もっと勉強に役立ちそうな本を読めばいいのに」と思うかもしれない。しかし、この「熱中時間」こそが、実はとても大事なのだ。近年の中学入試は、知識の丸暗記は通用せず、与えられた問題の中から条件や状況を理解しながら、自分なりに解決法を見いだす思考力が欠かせない。この思考力を十分に発揮するのに欠かせないのが「熱中力」だ。

小さい子供は自分のやりたいこと、例えば好きなものについて書かれた図鑑を隅々まで見たり、時間がたつのを忘れて砂遊びをしたり、ああでもないこうでもないと頭をひねりながらパズルに夢中になっていたりするときに、「どうしてこうなっているのだろう?」「これとこれの違いは何なのだろう?」「どうやったらもっと上手にできるようになるのだろう?」と、頭の中で自然と「思考訓練」を行っている。

砂場で遊ぶ子供
写真=iStock.com/goodmoments
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/goodmoments

このような体験が粘り強く最後まで考え抜く力や、自分で考え解決策を見つける力を育んでいく。頭を使うことは疲れる。でも、本人が「楽しい」と思って取り組んでいれば、それは快感になる。つまり、中学受験の成功は「勉強は楽しい!」と思えるかどうかにかかっているのだ。

■「遊びの経験」と「知識」が結びつくとワクワクする

子供は自分が経験したことは身体感覚として残り、その経験と知識をつなぎ合わせることで理解を深めていく。小学生にとっては、その多くが遊びや家族と一緒に過ごした時間になる。中学受験の入試問題は、小学校で学習する内容と大きく違うため、何か特別な勉強を早くからやっておかなければ難関校には合格できないと思われがちだ。だが、「なぜそうなるのか」を理解しながら正しく勉強を進めていけば、12歳の子供でも対応できるようになっている。

扱うテーマも遊びや生活に関連するものがほとんどで、「へぇ~、いいことを知ったな」と新しい発見できるし、「あ、あのときのアレはこういうことだったんだな」と自分の遊びの経験と知識がピタッと結びついたとき、謎解き問題を解けたような快感を味わえる。つまり、本来であればとてもワクワクするものなのだ。

■「日々の生活」を大切にしてほしい

西村則康『中学受験の成功は、幼児期・低学年がカギ!「自走できる子」の育て方』(日経BP)
西村則康『中学受験の成功は、幼児期・低学年がカギ!「自走できる子」の育て方』(日経BP)

しかし、「これは入試に出るから覚えろ」「この問題のときはとりあえずこの式で解け」といった勉強だけをしていると、勉強が楽しいと思えないばかりか、自分で考えることができなくなってしまう。また、幼いときから習い事やドリル学習といった“先取り”ばかりに走ってしまうと、遊びや生活で得られるさまざまな体験ができず、自分の経験と照らし合わせて考えることができなくなる。

ただ、幼少期のどの経験が「勉強好き」に化けるかは分からない。だが、たまたま良いタイミングで何かの経験をして、それが知的好奇心を刺激し、学びに向かうことがある。この「偶然」を信じて、日々の生活を大切にしてほしい。そして、それは子供が生まれた瞬間から始まっている。

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西村 則康(にしむら・のりやす)
中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員
40年以上難関中学受験指導をしてきたカリスマ家庭教師。これまで開成、麻布、桜蔭などの最難関中学に2500人以上を合格させてきた。

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(中学受験のプロ家庭教師「名門指導会」代表/中学受験情報局 主任相談員 西村 則康)

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