「また学校に行くのか…」夏休みが減るにつれてしょんぼりしてくる我が子に親がかけられる言葉
プレジデントオンライン / 2023年7月29日 9時15分
■登校しぶりの子の夏休みはこう過ごす
確かに夏休み明けは不登校が多く、お子さんに登校しぶりや不登校の兆しがあったら、やはり親御さんは心配ですよね。では、どんな夏休みを過ごせばいいのか。
よくいわれるのが、まず「生活リズムを大きく崩さない」ことです。たとえば学校があるときに6時半に起きていたら、遅くとも7時には起きる。起きたら太陽を浴びるといったことです。
また「大きな宿題をあとに残さない」ことも大切です。夏休みの最後に宿題が残っていたら、2学期に学校に行く大きな抵抗になってしまいますから、そういうものをなるべく減らしておく。学童保育で宿題をすませられるなら、学童保育を利用するのもよいでしょう。
さらに夏休みは、親子で一緒にいる時間が増えますから、家族旅行をしたり、地域のイベントに参加したり、子どもがリラックスして、リフレッシュできる楽しい経験ができたらよいのではないでしょうか。夏休みがエネルギー補給の時間になれば、子どもは2学期に向けて動けることもあります。
■夏休み終盤になると「また緊張が待っているのか…」と構えてしまう
そもそも登校しぶりや不登校の子は、学校では緊張し無理をして過ごしています。夏休みという長い中断が起きると、無理をしていた子どもほど、リラックスしてほっとしている時間の向こうに、またあの緊張が待っているのか……と夏休みが終わりに近づくと表情が暗くなっていきます。
親は、わが子にそういう気配を感じたら、学校生活に不安を持っているサインととらえて、なぜ子どもにとって学校がそれほど緊張させる場所になっているかを改めて考えてほしいと思います。
子どもが学校生活に緊張しているというと、親は学校が子どもにどんな教育をしているのか、先生や友だちとはどんな関係なのか、と学校に目がいきがちです。もちろんそれも重要ですが、同じぐらい重要なのは家庭です。親が子どもとどう接しているか。子どもに何か強いていないか、親自身の関わりにも、その要因がないかを考えてみてほしいのです。
■子どもを緊張させてしまう親のタイプ
親が子どもを緊張させる要因は、2つ考えられます。
1 親の不安が強い
子どもから見て、傷つきやすく壊れやすそうな母親は、とても反抗できない、自己主張できない存在です。自己主張すると、ママはつらそうな顔をするから、決してそんなことはしないんだと思っている子どもは、幼児期からけっこうたくさんいます。
不安の強い親は「子どものため」と言いながら、実は自分が安心するために、あれやこれや先のことばかり心配したり、先回りして手を出したりする傾向があります。のちに子どもが元気に学校復帰できた際に「私の方がいつも先回りして不安になっていたんですね。変わるべきはあの子ではなく私でした。」とおっしゃったお母さんがいました。
いずれも母親が自分の問題と子どもの問題を切り離せず、子どものパフォーマンスによって、自分自身もぐらぐらする、それが子どもの心を知らず知らずのうちに縛り、緊張させていたのです。
2 親が理想像に当てはめようとする
もうひとつは、自分の理想像に子どもをかっちりと当てはめようとする親です。これは父親のほうに多い傾向があり、子どもの生き方をガチガチに決めてしまって、それに当てはまらない子どもを厳しく叱ったり、つき放したりします。
そして、そういう父親は、子どもがうまくパフォーマンスを示さないと「お前は子どもに何をやっているんだ!」と今度は母親を責め始めます。「あんたに何がわかるのよ」と言い返せる母親ならよいのですが、たいていは黙ってしまう。黙るだけならまだしも「あんたのせいで私がパパに怒られる」と、子どもを叱責(しっせき)する母親もいて、そうすると子どもは母親の向こうにいる父親に縛られてしまいます。縛られながらも子どもは恐れと同時に、怒りも感じています。
でも子どもにとって、そういう父親は絶対に歯向かえない、こわいお父さん。ですから、子どもは、だんだん抑うつ的になって力を失ったり、失敗するんじゃないかと不安が強くなったり、もっと残念なのは、自分を傷つけることで怒りを表現しようとするようになります。リストカットなどの自傷行為もそうですし、物をたっぷり与えられているのに、人の物を盗むようになる。こうした父親は子どもの健やかな発達を阻害する環境をつくってしまうのです。
■しょぼんとしているなら話し合いを
親として考えて、これは子どもと共有したほうがいいと思えば、子どもの気持ちをまず聞いたうえで、お母さんはこう思う、と話し合うのも悪くありません。間違っても説得を目的としてはいけません。
ただ学童期の子どもは、幼児期のように、親の言うことを「そうだね、わかった」と素直に聞きません。だからといって自分の言いたいことを、うまく表現できるわけでもありません。しかし子どもが反対意見を言えなくても、顔がくもってきたり、だんだん横を向いたり、下を向いたりしてきたら、間違いなく親の考えは空回りしています。
それに気づいたら、説得になっている話し合いはやめて「何かお母さんがわかっていたほうがいいことがあったら教えてくれる?」と言って、聞くことに徹したほうがいいと思います。
ただ、そういう話題自体、子どもは構えることですから、どの子にもやったほうがいいということではありません。しかし夏休みが終わりに近づくにつれて、しょぼんとしている、不安そうにしている、そんなサインがあらわれている子には「そんなに学校で緊張しなくていい」「学校でいい子じゃなくていいよ」と伝えるためにも、話し合ってみることは価値のあることかもしれませんね。
■子どもは「親が自分の最大の成功を期待している」と思い込んでいる
親御さんに知っておいてほしいのは、子どもというのは「親が自分の最大の成功を期待していると思い込んでいる」ということ。実際は、それほどでもない親でさえ、子どもはそう思い込んでいますから、いわんや本気でその気になっている親なら、子どもはもう本当にプレッシャーでガチガチになります。結局、いちばん子どもを追い詰めているのは、親ということもあるのです。
特に今は幼児期から受験準備をし、私立の小学校に入学し、そのパフォーマンスのままに中学、高校、大学に入って、と子どもの人生をデザインしようとしている親が多いように感じます。それはときに心理的虐待といってもいいような域に入ってしまう危険もあることを承知していなければなりません。
学校に行きたくないというわが子が、どんな思いで学校に行き、夏休みを過ごし、そして新たな学期の始まりを予想して、どんな表情をしていて、どういう雰囲気なのか。そういう客観的な視点を、親御さんはぜひ夏休み中に持ってもらいたいですね。そして親御さん自身が自分の言動を振り返りながら、子どもは親の思い通りにならないものだと腹をすえてほしいですね。
そのうえで本当にリスクが高かったり、現に休み始めたりしたら、胸襟を開いて学校や教師と話し合うのがよいだろうと思います。
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恩賜財団母子愛育会愛育相談所所長,医療法人社団翠松会松戸東口たけだメンタルクリニック
千葉大学医学部卒業。国立精神・神経センター精神保健研究所児童思春期精神保健部長。独立行政法人国立国際医療研究センター国府台病院精神科部門診療部長。恩賜財団母子愛育会 総合母子保健センター愛育病院小児精神保健科部長を経て現職。松戸東口たけだメンタルクリニック医師
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(恩賜財団母子愛育会愛育相談所所長,医療法人社団翠松会松戸東口たけだメンタルクリニック 齊藤 万比古)
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