これから日本株の黄金時代がやって来る…「日本株は儲からない」という人が知らない長期投資の醍醐味
プレジデントオンライン / 2023年8月10日 10時15分
※本稿は、澤上篤人・渡部清二『本物の長期投資でいこう! 40年に一度の大チャンスがやってくる』(かや書房)の一部を再編集したものです。
■1878年からの144年間で日本株はどれだけ値上がりしたのか
【渡部清二】(以下、渡部)私は長期投資を基本に投資を教えています。図表1を見ていただけますか。
グラフは1878年に東京株式取引所が開設されて以降の日本株の平均株価(戦前は東京株式取引所の平均株価、戦後は日経平均株価)の推移を表しています。
日本株は、1878年9月から戦前のピークである1920年3月までで297倍、戦後は1949年5月から1989年12月のピークまでで225倍にも上昇しています。
戦前と戦後の値上がりを掛け合わせた数字もあります。「三和・岡本株価指数(兜日本株価指数)」によれば、株式の配当リターンを含めると、1878年から2022年までの144年間で、日本株は584万倍にも成長しています。
これは配当などのリターンを含めた数字ですが、配当を除いた数字(戦前の制度を勘案した修正株価)でも、日本株は約60万倍にもなっているのです。
私は「四季報リサーチ」という会社を始める前に、このグラフを一年かけてつくりました。
私は神社検定とか日本史検定を持っているほど、日本の歴史が好きなんです。戦後の株式市場の動きは簡単に勉強できるのですが、戦前についてはよくわからない。
野村證券でも「戦前にも株式市場はあったらしいけれども、具体的なことはわからない」と言われていたので、自分でつくってみました。
戦前には、現在の日本株式市場が目安としている日経平均はなく、東京株式取引所(通称「東株」)の株価を目安としていました。これをすべてチャート化しようと考え、国会図書館でデータをバラバラに取ってきました。増資にともなう新株割当で増加した株数で修正して、計算し、全部自分でつなげました。
このチャートで、日本に株式市場が誕生した1878年9月16日から現在までの株価の推移を知ることができます。
■日本の株式市場144年の断面
【澤上篤人】(以下、澤上)このグラフはよくつくったね。明治大学の三和裕美子先生と「I-Oウェルス・アドバイザーズ」の岡本和久さんの「三和・岡本日本株価指数」ができたのが2021年だから、渡部さんのほうが先だね。
【渡部】そうなんですよ。私がこの資料をつくったのは2013年です。
【澤上】これは対数でチャートにしたの?
【渡部】対数でつなげると形が見えてくるみたいな感じなんです。
【澤上】これはすごい。
【渡部】『会社四季報』一冊で見ることができるのは、断面です。私は100冊完全読破して、25年間の断面を見てきたのですが、このチャートは日本の株式市場144年の断面を見ることができるツールなんです。
『会社四季報』は、「歴史」「流れ」を意識して読むと、株式市場が生き物として見えてきます。
■「1950年に買ったトヨタ株」どれくらい値上がりしたのか
【渡部】トヨタのチャートもつくりました(図表2)。
証券会社のデータベースから普通にデータを取ると、1971年からになってしまいますが、これは1950年から取っています。
なぜできたかというと、『会社四季報』に85年の歴史があるからです。
『会社四季報』を1ページずつ追いかけていって、株配や株式分割などを全部調整してつなげました。
■トヨタ株は約18万倍にも値上がり
【澤上】すごい。
【渡部】澤上さんがおっしゃるとおり、誰も見ない時にこそ投資する、という意味では、1950年6月がトヨタ自動車(当時はトヨタ自動車工業)の、ど安値なんですね。
株価は一株23円50銭。
1950年6月に発売された『会社四季報』第3集のコメントが非常に面白いです。
「経営合理化のための二工場閉鎖、一千六百名の人員整理、一割賃下案をめぐって争議中。しかし三首脳の辞任(後略)」、【前途】には「わが自動車工業の前途は楽観を許さぬものがある。当社の再建も容易ではない」と書かれています。
もしこの時点でトヨタ株を買い、最高値をつけた2022年1月まで持ち続けたとしたら、同社の修正株価(株式分割を考慮した株価)は18万倍になっているんです。
物価を考慮しても約1万1700倍です。
■日経平均よりはるかに儲かった
【渡部】ちなみに日経平均は同じ期間で456倍。トヨタ株を買ってずっと持っていたほうが、はるかに儲かっている。これが個別株投資のすごさです。
澤上さんがおっしゃったように、長期投資の醍醐味(だいごみ)はここにあるんですよ。『会社四季報』を字面だけ読んでいるわけではなく、こういった流れも見ながら銘柄を発掘しています。
【澤上】なるほど。
【渡部】例えば、塾生には「コメントが全部悪い銘柄は買いだ」と教えています。
「複眼経済塾」では、『会社四季報』のこういった使い方を教え、株式投資の考え方を教えています。
【澤上】渡部さんは、教育伝道師として素晴らしい。しかも説明がわかりやすい。
■「株主総会に行く」「企業の原点を全部回る」
【渡部】文化という面では、我々はフィールドワークも大切にしています。野村證券では23年間、頭でっかちの机上の空論をやっていました。それが恥ずかしくて、辞めて最初にやったのが「株主総会に行く」ことと「企業の原点を全部回る」ことです。
「企業の原点」は、これまで60カ所以上回りました。
最初に行ったのが茨城県日立市にある日立創業の掘っ立て小屋で、ここが日立製作所の発祥の地。次がトヨタ自動車の発祥の地。
続けて、住友グループの原点である別子銅山から東洋一の亜鉛鉱山「神岡」など、さまざまな場所に行きました。
■「投資ツーリズム」を広めたい
【渡部】4番目に行ったのが、日本の株式市場の父・渋沢栄一の深谷駅、富岡製糸工場、生家、渋沢栄一記念館で、この時にはまだお札になることも、ドラマになることも決まっていませんでしたが、結果論として、先見の明があったかもしれません(笑)。
「複眼経済塾」では、定量と定性、フィールドワーク、先ほどお話しした歴史などを重視して、自分の好きな企業を応援しようという方法をとっています。
私は、この延長線上に「投資ツーリズム」というものを考えています。
投資も最初は、「儲けた」「儲からない」でいいと考えています。
しかし、そうはいっても、会員のみなさんは知的好奇心も非常に高いので、いずれ、「この企業って、どういう歴史だったっけ?」と気になってきます。その時、私たちが行っているフィールドワークをモデルに、「企業の原点」を回ることをもっと広めていきたい。
投資人口が増え、みんなが投資先の会社の原点を回るようになると、投資からのツーリズムが生まれ、地方創生になるのではと願っています。
■「現実があとからついてくる」ぐらいがちょうどいい
【澤上】面白いねえ。渡部さんの話には「なるほどな」という点がいっぱいある。ようやっているねえ。
渋沢栄一があとで話題になったというのがあったけど、“あとになってエピソードがついてくる”というのが、長期投資の醍醐味なのよ。
時間が経ってから、「おっと、これって俺、確か、3年前に議論していたな」とか、「えー、これは4年前にやってたぞ」と、現実があとからついてくるぐらいが、ちょうどいい。
将来の納得に対して、好奇心も含めて、なんだかんだ、ああだ、こうだと読み込みをしていく。
【渡部】あとから話題になると、嬉しいですよね。
■「時間」と「企業の可能性」を味方につける
【澤上】マーケットを追いかけて、うまくサヤを抜こうと考える連中からすれば、一刻も早く買わなければ、となりがち。
ところが我々は違う。価値が高まるのを待つ。なおかつ、暴落を待つ。
暴落が来た! よし、ここでいこうと。
渡部さんは、啓蒙(けいもう)も含めてやっている。すごくいいことだと思うよ。
【渡部】長期投資は、「時間」と「企業の可能性」を味方につけることですから。
【澤上】そう、長期投資は、ずっとしつこく追いかける、しつこくね。
これはいけると思って買うと、どこかの時点で、これまでの不納得が納得に変わるんだよ。
その時は、株価が10倍とか、20倍とか、当たり前。これが長期投資の醍醐味なんだよ。
ちょこちょこ何%を追っかけるなんてのはつまらない。目指すのは、先ほどのトヨタ自動車の18万倍とかなんだよ。
----------
さわかみホールディングス代表取締役
さわかみ投信創業者。1971年から外資系運用会社などでの勤務を経て、99年に長期保有型の「さわかみファンド」を設定。日本における長期投資のパイオニア。2つの公益財団法人も創設。
----------
----------
複眼経済塾 代表取締役・塾長
1967年生まれ。1990年筑波大学第三学群基礎工学類変換工学卒業後、野村證券入社。個人投資家向け資産コンサルティングに10年、機関投資家向け日本株セールスに12年携わる。野村證券在籍時より、『会社四季報』を1ページ目から最後のページまで読む「四季報読破」を開始。20年以上の継続中で、2022年秋号の会社四季報をもって、計100冊を完全読破。2013年野村證券退社。2014年四季リサーチ株式会社設立、代表取締役就任。2016年複眼経済観測所設立、2018年複眼経済塾に社名変更。2017年3月には、一般社団法人ヒューマノミクス実行委員会代表理事に就任。テレビ・ラジオなどの投資番組に出演多数。「会社四季報オンライン」でコラム「四季報読破邁進中」を連載。『インベスターZ』の作者、三田紀房氏の公式サイトでは「世界一「四季報」を愛する男」と紹介された。著書に、『会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業』(SB新書)、『会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方』(東洋経済新報社)、『「会社四季報」最強のウラ読み術』(フォレスト出版)、『10倍株の転換点を見つける最強の指標ノート』(KADOKAWA)などがある。
----------
(さわかみホールディングス代表取締役 澤上 篤人、複眼経済塾 代表取締役・塾長 渡部 清二)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【これから上がる株銘柄はどれ?】元・大手証券マンのプロ投資家が『会社四季報』で必ずチェックする“4つの数字”
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月6日 8時0分
-
“割安”な〈成長株〉で勝ちを狙いたいなら…『会社四季報』の読破こそ「手間はかかるが割に合う」手法と言える“納得のワケ”【人気投資ブロガーが読み方のコツを伝授】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月29日 11時0分
-
「日本人でよかった」…プロ投資家が実践している〈これから上がる銘柄〉の見つけ方
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月29日 8時0分
-
『プロ投資家の先を読む思考法』(SB新書)【書籍紹介】
トウシル / 2024年4月21日 11時0分
-
大人気の投資塾講師が「日経平均10万円」と強気予測する根拠とは。10倍株を探す「四季報読破」のコツも伝授
日刊SPA! / 2024年4月9日 15時59分
ランキング
-
1ドンキの“固すぎる”Tシャツがじわじわ売れている 開発者が生地の厚みにこだわったワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年5月6日 8時0分
-
2「認知症にだけはなりたくない」高齢者が多いが…実は「恐れる必要はない」と和田秀樹氏が断言する“これだけの理由”
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月6日 10時0分
-
3なぜラスクをギフト菓子に変えられたのか…ガトーフェスタハラダが「王様のおやつ」で年商200億円を築くまで
プレジデントオンライン / 2024年5月6日 10時15分
-
4「中国市場に頼りすぎていた」資生堂1500人早期退職募集で見えた"名門ブランド企業"3つの低迷理由
プレジデントオンライン / 2024年5月6日 8時15分
-
5アングル:インドIT企業、地方都市へ相次ぎ進出 人材確保やコスト削減狙い
ロイター / 2024年5月6日 8時3分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください