円満夫婦のやりとりは「ポジ5:ネガ1」だが離婚夫婦は「0.77:1」…ポジ分量が85%減という生き地獄の修正法
プレジデントオンライン / 2023年8月9日 11時15分
※本稿は、岡本純子『世界最高の伝え方』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。
■「北風と太陽」の話の続きを知っていますか?
「北風と太陽」のお話をご存じでしょうか。
北風と太陽で、「旅人の服を脱がせたら勝ち」という勝負をしました。北風は強い風を吹かせましたが、旅人は飛ばされまいと必死で服を押さえつけるだけ。太陽が日光を注ぐと、旅人は暑さで、自分から脱ぎました。
こんなお話ですが、じつはこの話には続編があるようなのです。
私のセミナーに参加してくれた人が教えてくれました。北風と太陽は、しばらくして2回戦をすることになりました。今度は、旅人の帽子を脱がせることができるか勝負をすることにしました。太陽がその光をさんさんと降り注ぐと、あまりの暑さに、旅人は逆に帽子を目深にかぶりなおしました。
ところが、北風がぴゅ〜っとひと吹きしただけで、帽子はあっという間に脱げてしまいました。今回は北風の勝利です。
太陽のような温かい言葉のほうが、北風よりはるかに効果があるという話かと思ったら、じつは「北風も時には効果を発揮する」というのが結論のようです。
■「ポジ」と「ネガ」の黄金比
太陽だけでも北風だけでもダメ。ほめは重要だけれども、ネガティブな話でも、きちんと伝えるべきことは伝えないといけない。問題はそのメリハリ、バランスなのです。
「ポジティブとネガティブのフィードバックの最適割合」を科学的に証明しようとする研究も多々あります。
2005年、心理学者のマーシャル・ロサダ氏とノースカロライナ大学教授のバーバラ・フレドリクソン氏は、人間が幸福を感じる転換点は、「ポジティブな感情とネガティブな感情の比が2.9013のバランスにある」と結論付ける論文を発表し、ポジ3:ネガ1の「ロサダ比」として話題になりました。
「ポジティブな感情がネガティブな感情を上回るには、ネガ1に対して、ポジが3つ必要」と説いたのです。
あるアメリカのコンサルティング会社の研究では、「ポジティブが6」に対して、「ネガティブが1」という割合がベストという結論も出ています。
結婚生活においても、この割合は大きな意味を持ちます。男女関係学の権威であるワシントン大学のジョン・ゴットマン名誉教授によれば、結婚生活がうまくいっているカップルのポジ・ネガ比は5:1、離婚したカップルの場合は、0.77対1、つまり4つの否定的なコメントに対して3つの肯定という割合だったそうです。
ちなみに、ゴットマン教授は、関係性を壊す4つの要因として「批判」「軽蔑」「自己防衛」「無視」を挙げています。
みなさんのご家庭は大丈夫でしょうか。
職場でも、業績の高いチームほどポジティブなフィードバックの比率が高く、ポジティブなフィードバックほど効果が持続することが明らかになっています。
このように、比率には諸説あるわけですが、「ポジ>ネガ」の割合は維持したほうがよさそうです。
ほめるときは、きちんとほめ、信頼関係をつくったうえでなら、多少ネガティブなフィードバックも、受け入れてくれるでしょう。
まずは「ほめる」が基本動作というわけです。
■「ポジ」と「ネガ」は、混ぜるな、危険!
ネガティブな話をするときは「ポジ→ネガ→ポジ」というサンドイッチ話法にしなさい、という説があります。つまりほめてから批判し、ほめて終わるという手法ですが、これはもう時代遅れ! と言われています。
ネガな情報ばかりに気をとられるという「ネガティビティバイアス」が働いてしまい、ほめワードの無駄遣いになる一方で、本当に伝えたい内容が、ポジティブワードの陰に隠れてしまう。
結局、何が言いたいのかわからないということになりがちです。最新研究では、「このサンドイッチはおいしくない、つまり、まったく効果がない」とバッサリ。この話法で叱られた人の半数は「ネガティブな内容には気づかなかった」という実験もあります。
アメリカ有数の組織心理学の研究者であるペンシルベニア大学ウォートンスクールのアダム・グラント教授も、「伝える側として、安心感はあるかもしれないが、受け取る側にはまったく効果がない」と言い切っています。
「中身」はパンではさんで覆い隠してしまわずに、しっかり、はっきり伝えましょう。基本は「ネガティブよりポジティブで」、そして「ポジとネガは混ぜない」が正解です。
■ほめられすぎは人をダメにする?
最近、聞こえてくるのが、
「いまどきの子は怒られたことがないから、叱るとすぐに折れてしまう」
「子どもがほめられることに過度に依存するのではないか」
といった声です。
結論から言うと、「ほめること」が人をダメにすることはありません。
一般的にほめることは子どもにいい影響を与え、効果的な育児法であることが研究で一貫して示されています。
ほめることは、成績の向上や、親切で役に立とうとする行動の増加、社会的能力の向上に結びつき、子どもにいい影響を与えるほか、共感性、良心に関わる脳内物質を増加させる、ということもわかっています。
■「すごいね、最高だね、素晴らしい」は実はNG
つまり、ほめることは子育ての核となる行動であり、不可欠の要素ということなのです。
結論は、ほめることがダメなのではなく、質の悪いほめ方がダメということ。たとえば、
×
「ほめているつもり」で、じつは表面的な、心に響かないほめ方をしている言葉だけで、気持ちがこもっていないので、相手に届いていない
ほかの子と比較して、優位な点をほめる
「すごいね」「さすが」など、型通りのほめ言葉で終わっている
型通りということでは、よくマニュアルなどで紹介されているほめ言葉の「さしすせそ」。
×
さすがだね。最高だねしっかりしているね。知らなかった、信じられない
すごいね、素晴らしい、素敵
世界一! センスがいい
そうなんですね。そのとおり
といったほめ方。
もちろん、これらが悪いわけではありませんが、いかにも上っ面なおべっかに聞こえてしまうリスクがあります。マニュアルのような、歯の浮くような、心のこもらないほめ言葉にならないように注意したいものです。
繰り返しますが、多少、ぎこちないほめ方でも、ほめないよりはマシです。まずは、相手を肯定する言葉を日常に取り入れていきましょう
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コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師
「伝説の家庭教師」と呼ばれるエグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト。株式会社グローコム代表取締役社長。早稲田大学政経学部卒業。英ケンブリッジ大学国際関係学修士。米MIT比較メディア学元客員研究員。日本を代表する大企業や外資系のリーダー、官僚・政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチ等のプライベートコーチング」に携わる。その「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれる。2022年、次世代リーダーのコミュ力養成を目的とした「世界最高の話し方の学校」を開校。その飛躍的な効果が話題を呼び、早くも「行列のできる学校」となっている。
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(コミュニケーション戦略研究家・コミュ力伝道師 岡本 純子)
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