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なぜ三菱商事の平均年収は380万円も上がったのか…平均年収が高い「全国トップ500社」ランキング2023

プレジデントオンライン / 2024年3月14日 7時15分

プレジデントオンラインは、全上場企業の「平均年収ランキング(2023年度版)」を作成した。調査対象会社3892社のうち、平均年収が1000万円を超える企業は140社で、前回から20社増えた。ランキングの1位は、2478万円のM&Aキャピタルパートナーズだった。今回は「全国トップ500社」をお届けする――。(第1回)

■トップ500社の平均年収は約997万円

プレジデントオンラインは、全上場企業の「社員平均年収ランキング(2023年版)」を作成した。基にしたデータは直近の年次決算期における有価証券報告書(2022年10月期~2023年9月期)。データ抽出では、経済・金融データサービスの株式会社アイ・エヌ情報センターの協力を得た。

今回調査した全3892社の平均年収は631.6万円だった。表にしたランキング500位までの従業員平均年収額は997万0410円。平均年収が1000万円を超える企業は140社(前回比20社増)だった。

■M&Aキャピタルパートナーズが5連覇

「平均年収日本一」は、5年連続でM&Aキャピタルパートナーズだった。

ハウスメーカー大手・積水ハウスの営業マンが2005年に起業した会社で、後継者不在の中小企業経営者を主な顧客に、事業承継業務を手がける。「売りたい企業」と「買いたい企業」をマッチングさせるのが同社のビジネスである。

業務的に公認会計士や税理士など専門スキルを有する人材が不可欠だ。また、一般の事業会社とは異なり、収入は案件の大きさに比例する手数料なので、案件が大型になるほど高額の手数料を得ることになる。そのため、これだけの高額年収を支払うことができるといえる。

ただし従業員の平均勤続年数は3年。頻繁に社員が入れ替わっているのも現実である。

過去5期の平均年収の推移は「3109.3万円→2269.9万円→2688.4万円→3161.3万円→2478万円」で、今期は昨年より683.3万円下がった。広報部は「弊社は業績連動型の給与体系になっており、業績にともなう増減が出ます」と回答した。

23年9月期の有価証券報告書を見ると、給料手当:8億2133.2万円(前期比30.1%増)、賞与:25億1618.5万円(前期比21.4%減)とあり、給料手当てに対し、賞与が3倍も支給されていた。

業績に連動するボーナスがいかに大きいかよくわかる。ちなみに、経営トップの年俸は12億6439万円だった(基本報酬:1455万円、賞与:12億4984万円)。

■営業利益率5割のメーカー

2年連続で2位だったのは、キーエンスだ。ファクトリーオートメーション(FC)向けのセンサや測定器などを手掛ける。

顧客企業が要望している製品を先取りしてスピーディに開発・提供するだけでなく、その約7割が「世界初」「業界初」の商品というのは驚きだ。

営業面で興味深いのは、営業担当者は売上目標ではなく、利益ベースでの目標を立てる点だ。これにより、顧客から単価を下げてほしいという依頼があっても簡単には受け付けない。一人ひとりが独立した小売店の意識を持って動く。

高い技術力、商品企画力、営業力で、高い利益率(粗利益率は8割強、営業利益率は5割台)を実現していることが高給に結びついている。

過去5期の平均年収の推移は「2110.6万円→1839.2万円→1751.7万円→2182.7万円→2279.3万円」。従業員の平均勤続年数は、12年となっている。

■なぜ三菱商事は380万円もアップしたのか

3位はインターネット回線サービス提供や携帯電話・複写機などの販売を手掛けている光通信だ。前年度6位からランクアップ。420万円の増額で、2000万円を超えた。

ただし、従業員が少ない場合は、増減幅が大きく出る傾向が強い。光通信に限らず、持株会社の年収推移を見る場合は特に、留意したい点である。

4位~10位では、前年度7位の建設業のショーボンドHDが15位にランクを下げ、代わって、コンサルとベンチャー投資事業のドリームインキュベータ(約690万円アップ)が、73位から7位にランクインした。同社は電通グループの関連会社である。

今期は商社で年収アップの機運が高まっている。1558.8万円→1939.3万円と380.5万円の大幅アップとなった三菱商事(ランキング4位)にその理由を聞いてみた。

三菱商事ビルディング
三菱商事ビルディング(写真=Kakidai/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)

「21年度においては、資源価格が堅調に推移するとともに、自動車や鮭鱒養殖など各事業で収益機会を着実に利益につなげることができました。利益が伸びたことで業績に連動する報酬が伸長。23年3月期における年収アップの要因です」(広報部)

ちなみに、同社で1億円以上の役員報酬を得ている社内取締役は6名。彼らの役員報酬の平均は2億9316万円である。

■フジテレビが急上昇のカラクリ

1101万円のソニーグループ、915万円の日立製作所、895万円のトヨタ自動車も着実に平均年収がアップした。従業員が多いだけに増額の幅は驚くほどではないが、日本を代表する企業が従業員の年収増を実現したことは注目すべきだろう。

定期コンテナ船の事業統合などで業績が回復している海運大手3社は、年収が大幅に伸びた。平均年収のアップ額は、商船三井444.6万円、川崎汽船338.5万円、日本郵船240.2万円である。

上位陣ではフジ・メディアHDの大幅アップが目立つ。前年比700万円以上の増額で、久しぶりにランク上位に顔を出した。同業で1000万円台常連のテレビ東京HD、TBSHD、日本テレビHDを一気に抜き去った。フジ・メディアHDは3期連続で1000万円台を割り込んでいた(「775.6万円→801.2万円→866.6万円」)。

フジテレビ本社ビル
写真=iStock.com/TkKurikawa
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/TkKurikawa

ただし、これは平均年収算出の対象社員が大幅に入れ替わったことが、大幅増の最大の要因である。平均勤続年数が、前年の7.1年から10年以上も伸びて17.9年になったのだ。年収が高いメンバー構成になったことで1500万円台に乗ったといっていいだろう。事実、決算書で開示している人件費総額は横ばいである。

前年と比較可能な480社中ダウンは124社だ。ひろぎんHDやコンコルディアFG、じもとHDの地方銀行、ゲーム関連のスクウェア・エニックスHDとバンダイナムコ、LINEヤフー(旧ZHD)などである。大手不動産の三菱地所と三井不動産も微減だった。

有価証券報告書で開示される従業員平均年収額と業績には時期的ズレが生じる。大手を中心に実施された23年のベースアップは、これから開示される24年3月期などの有価証券報告書に示されることになり、次回のランキングに反映されるだろう。

【図表】平均年収が高い上場企業“トップ500社”ランキング(1位~50位)
【図表】平均年収が高い上場企業“トップ500社”ランキング(51位~100位)
【図表】平均年収が高い上場企業“トップ500社”ランキング(101位~150位)
【図表】平均年収が高い上場企業“トップ500社”ランキンググ(151位~200位)
【図表】平均年収が高い上場企業“トップ500社”ランキング(201位~250位)
【図表】平均年収が高い上場企業“トップ500社”ランキング(252位~300位)
【図表】平均年収が高い上場企業“トップ500社”ランキング(301位~350位)
【図表】平均年収が高い上場企業“トップ500社”ランキング(351位~400位)
【図表】平均年収が高い上場企業“トップ500社”ランキング(401位~450位)
【図表】平均年収が高い上場企業“トップ500社”ランキング(451位~500位)

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鎌田 正文(かまた・まさふみ)
ビジネスリサーチ・ジャパン代表
1995年、ビジネスリサーチ・ジャパン設立。金融・流通・メーカーなどの各分野から経済全般まで、幅広く取材、執筆。『2012年版 図解 これから伸びる企業が面白いほどわかる本』など、業界研究の著作多数。

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(ビジネスリサーチ・ジャパン代表 鎌田 正文 図版作成=大橋昭一)

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