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「Aだと思います」と言ってはいけない…デキる人が自分の意見を言うときに忘れない2文字の言葉【2023下半期BEST5】

プレジデントオンライン / 2024年3月25日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Drazen Zigic

2023年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。仕事術部門の第5位は――。(初公開日:2023年10月27日)
相手の心を掴む会話ができる人は何をしているか。エグゼクティブ・コーチの林健太郎さんは「リーダーには、最初に自分の意見を表明するときに『私は』と前置きのひと言をつけて多様性を担保するスタンスが必要だ。しかし、日本人の多くはこの主語を意識して使えていない」という――。

※本稿は、林健太郎『できるリーダーになれる人は、どっち? 話し方・考え方・聞き方……「ここ」で差がつく!』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■「それについては、Aだと思います」ではまだ言葉が足らない

本書ではこれまで、「自分の意見を、臆せず、はっきり言いましょう」と訴えてきました。

ここで、逆に「自分の意見を強く主張したいとき」のスタンスについて触れておきたいと思います。

アメリカでは「自己主張はするけれど、それだけで終わるのではなく、相手の意見も尊重する」という文化があります。

私は、これがまさに「リーダーになれる人」のスタンスだと思っています。

「私の意見はこうです」と、自分の意見をハッキリと伝えたあとに続けて、次のように言える人が「リーダーになれる人」です。

「皆さんはどう思いますか?」

自分の意見を主張してただ押し通すのではなく、続けてすぐに周りの意見を聞く姿勢を見せることが大切です。これが、少し古い言葉で言うと「合議制」、最近の言葉で言うと「共創型の組織運営」の入口になります。

そのため、最初に自分の意見を表明するときに、忘れてはいけないことがあります。

それは、「主語を省略しない」ということです。

「それについては、Aだと思います」

ではなく、

「それについては、私はAだと思います」

と言うのです。

この「(あくまで)私の意見ですが」という前置きのひと言が、とても重要なのです。

この前置きによって、「これは私の意見なので、もしかしたら他にも別の意見があるかもしれませんが」という多様性を担保できるのです。

英語だと“This is my take.”とか、“As far as I’m concerned.”などの言葉をつけます。

英語では、自分の意見を主張するときの慣用句のようになっていますが、日本でこの前置きを意識して使っている人は正直まだまだ少数派だと感じます。

ですから、まれにこれができている人を見ると、「あっ! この人は自分の意見を主語を省略せずに伝えたあとで、周りの意見も聞く姿勢ができている」と感心します。

こんなリーダーが増えれば、日本のビジネスシーンも大きくさま変わりすると私は信じているので、こんなリーダーが増えますようにとささやかな祈りを捧げています。

■会話のキャッチボールがうまくいくコツ

自分の意見を伝えたあとで、「皆さんはどう思いますか?」というひと言を入れるのは、自分と相手との「会話」と「会話」に「橋」をかけるようなものです。

この「会話の橋」をかけないと、話がぷっつりとそこで終わってしまいます。

私は、いわゆる昭和型のトップダウンの会社で働いてきた経験が豊富です。

そんな職場では、会議の席で社長や部長などの上級管理職の方が、ワンマンショーさながらに自分の考えをノンストップでしゃべったあげく、社員にダメ出しします。そして最後に「こうしろ!」と命令する。そんな場面に嫌というほど立ち会ってきました。先ほどの「会話に橋をかける」というコンセプトのかけらもない職場の典型です。

部下に怒る人
写真=iStock.com/koumaru
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/koumaru

こんな環境では、一般社員は沈黙するしかありません。

自分の意見を押しとおすだけの社長や上級管理職の姿を見ても、社員は「ウチの社長は頼もしい」「社員を引っ張ってくれている」とは決して感じません。逆に、言いたいことが言えない不満がくすぶる可能性がとても高い。

つまり、社員のエンゲージメント(会社に対する愛着心)が薄れていき、仕事に対する満足度が低下していく原因になるのです。

ですから、たとえ社長であっても、共創型の組織づくりをして、モチベーションが高いスタッフと一緒に働きたければ、自分の意見を言ったあとで、「私の考えはこうなのだけれど、私が気づいていないことや、新たな切り口のアイデアなど、どんなことでもいいので教えてほしい」というように、「会話の橋」をかけてほしいのです。

■部下のこんな言葉は危険サイン

これはなにも、社長や上級管理職の方に限ったことではありません。これから課長やリーダーを目指す皆さんも、ひとつの嗜みとして身につけておいてほしいことです。

「会話の橋」をかけて、周りの協力者の心を摑む練習をぜひ重ねてください。

自分の意見を言ったあとで、「皆さんはどう思いますか?」などと「会話の橋」をもしかけなかった場合、何が起きるでしょうか?

相手は自分から「つまり、それってどういうことですか? もう少し詳しく教えてください」と疑問をはさんだり、「言いたいことはわかりましたけれど、○○という観点が抜けているように思います」と反論したりしなければなりません。

特に上下関係が決められた会社組織の場合は、下位者が上位者に向けてこうした発言をするのは、通常、高い緊張感が伴うものです。そんな負担を下位者に求めていては、チーム全体の心理的安全性はとても向上しません。こうした負担を下位者にかけないよう、リーダーの役割を担う人の心遣いがとても大切になってきます。

リーダーの側から「会話の橋」をかけていくことで、不安や緊張感が伴わない「会話のキャッチボール」を始めることができるのです。

■自分から「会話の橋」をかけているか意識する

さて、この「会話の橋」をかけるという考え方、本書の中で「文字」として読んでいるかぎり、コンセプトとしてそんなに難しくないと感じることでしょう。

ここがコミュニケーションの不思議なところ。技術レベルとしてはたいして難しくないことでも、職場でいざ活用しようと思うと意外と難易度が高いことに気づきます。

もし仮に、あなたの職場に、「会話の橋」をかけてくれる気が利く相手がいたとしたら、それにすっかり慣れてしまい、自分から「会話の橋」をかけていないことに気づかない人もいます。

実際、プロのコーチを目指している人でも、「自分の考えを口にするだけ」であとは黙ってしまう人が意外と多いのです。

そんなとき、私が「今、会話が終ってしまっているよ。会話の橋をかけていないよ」と指摘すると、「あっ! 忘れていました」と気づきます。

しかしここでも、「あっ! 忘れていました」と、「会話の橋」をかけない言葉を返すので、またもや会話が終ってしまうのです。

ここで例えば、「あっ! 忘れていました。でも、どうして林さんはそうやってすぐに橋をかけることを考えられるのですか?」といった働きかけがもしあれば、私もそこで必要なアドバイスが提供できます。

これが「会話に橋をかける」ということです。

■自分の意見を表明してから、会話の流れをデザインする

プロのコーチも、企業内での中間管理職、リーダー職やそれ以上の経営層も求められる技能は同じで、「人に影響を与えるコミュニケーションのプロ」でなくてはいけないと私は思っています。

その練習の一環として、会議などの場で自分の意見を表明したときは、ぜひ、言葉の最後で「会話の橋」をかけることを意識してみてください。

最後にもうひとつ、注意点をお伝えします。

「会話の橋」をかけるときには、「自分の意見」や「自分のスタンス」を、先に相手に伝えるのが鉄則です。

林健太郎『できるリーダーになれる人は、どっち? 話し方・考え方・聞き方……「ここ」で差がつく!』(三笠書房)
林健太郎『できるリーダーになれる人は、どっち? 話し方・考え方・聞き方……「ここ」で差がつく!』(三笠書房)

これをしないで、いきなり「皆さんは、どう思いますか?」と橋をかけるのはいささか乱暴すぎると思います。「いや、いきなりどう思うかと聞かれても……」と心理的安全性が一気に下がってしまい、言われた相手は警戒して「防御」の姿勢を取ってしまうかもしれません。

「んっ? リーダーはどんな回答を望んでいるんだろう?」
「課長は何を言わせたいんだろう?」

チームメンバーや関係者にこんなことを考えさせたり、言わせたりするのは、相手の負担を余分に増やす行為です。このような職場環境を作らないように、自分のスタンスを明らかにし、そのうえで「会話の橋」をかけることが肝心です。

「会話の橋」を使って、会話の流れをデザインする練習をしてみてください。

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林 健太郎(はやし・けんたろう)
リーダー育成家
合同会社ナンバーツー エグゼクティブ・コーチ。一般社団法人 国際コーチ連盟日本支部(当時)創設者。1973年、東京都生まれ。バンダイ、NTTコミュニケーションズなどに勤務後、日本におけるエグゼクティブ・コーチングの草分け的存在であるアンソニー・クルカス氏との出会いを契機に、プロコーチを目指して海外修行に出る。帰国後、2010年にコーチとして独立。リーダーのための対話術を磨くスクール「DELIC」を主宰。2020年、オンラインでの新しいコーチングの形態「10分コーチング」(商標出願中)を開発。

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(リーダー育成家 林 健太郎)

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