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「ゴミ屋敷になる家」は玄関でわかる…老後のひとり暮らしが破綻する人に共通する「玄関のサイン」とは

プレジデントオンライン / 2024年3月29日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Toru Kimura

老後のひとり暮らしが破綻して、自宅を「ゴミ屋敷」に変えてしまう人がいる。『老後ひとり暮らしの壁』(アスコム)を書いた山村秀炯さんは「ゴミ屋敷のような部屋を片付けていると、玄関の様子が似ていることに気づく。また、居間と寝室にも2つの共通点がある」という――。

■老後のひとり暮らしには「壁」がある

私は仕事がら、とにかく他人様の家や部屋を見る機会が多くあります。これまで見たお住まいは数千軒にのぼるでしょうか。そのなかで、以前、こんな方に出会いました。

ある70代の男性です。とにかく他人の世話になるのが嫌で、人付き合いをほとんどしないで暮らしていました。もともと建築関係のお仕事をされていて体力には自信があったようですが、無情にも体は衰えていきます。

私がお会いしたときは、すでに足を悪くされていて下半身の自由がきかず、這いずるようにして部屋の中を移動していました。それでもなお、人の手は借りたくないし、頼る人もいないのです。

自由なひとり暮らしを手放したくないために、施設への入居は頑なに拒んできたそうです。しかし自由でありたい気持ちとは裏腹に、自分でできることは減っていきます。買い物にも満足に出かけられないため、甥が定期的に食料や日用品を届けています。食事やお風呂などは訪問介護のヘルパーさんの助けでなんとか成り立っている状況でした。

これは、ご本人の意思を最大限に尊重してきた結果ですし、望んだとおりの状態なのかもしれません。でも、最期まで自立して生きていくには、乗り越えるべき壁があることを意識せざるを得ませんでした。

■自宅をゴミ屋敷に変えてしまう人の特徴

多くのおひとりさまとお会いする中で感じるのは、「壁」を上手に越える人と、「壁」を見て見ぬ振りをする人がいること。そして、うまく「壁」を越えられる人ほど、自分の生き方に納得していて、幸せに暮らしているように思えます。

もちろん、幸せかどうかはご本人の感じ方によりますし、他人が決め付けるわけにはいきません。ただ、これまで生前整理や遺品整理でいくつもの部屋を見てきてわかったことがあります。自立して老後ひとり暮らしを謳歌(おうか)している人と、そうでない人の違いが、部屋のあるポイントに現れていることです。

ゴミで埋め尽くされた部屋のイメージ
写真=iStock.com/carstenbrandt
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/carstenbrandt
① 玄関と靴

まず目に入るのは玄関です。特に靴、履物の状態は、つい気になってしまいます。

ボロボロでかかとが潰れたスニーカーが無造作に玄関に転がっていると、あまり積極的に外出したり、人と会ったりすることがない人なのかなと思います。

たくさん履いて外に出ているからボロボロなのではないか? と思うかもしれません。でも私が見てきた人たちは、サンダルのようにつっかけて近くのコンビニやスーパーに行く程度のケースがほとんど。あまり出歩かないからこそ、同じ靴を履き続けて、履き心地なども気にならないのだと思います。あらためて人と会う機会も少ないので、見た目も気にしていないのかもしれません。

オシャレは足元から、などといいますが、靴がボロボロでも洋服はそれなりに洗濯されていたりしますから、たしかに足元にこそ、その人の性格やこだわりが出やすい気がします。

また、靴がこのような状態の人は、たいてい部屋も散らかっています。単にだらしないだけじゃないかといわれたらそうかもしれませんが、意外と玄関や靴にはその人の生活感がにじみ出るのです。

■貴重品が家のあちこちにしまわれている

② 貴重品のありか

私たちのような業者が遺品整理に行ったとき、早めに確認しておくことがあります。なんだと思いますか? それは、お金や通帳や印鑑など、貴重品のありかです。

衣装箪笥のいちばん上の引き出しだったり、女性だったら化粧台の引き出しだったりと、ある程度は傾向があるのですが、当然人によってバラバラですから、家のあちこちに無造作にしまわれていることも、多々あります。

なぜ早めに確認したいかというと、もちろん死後の手続きに必要なものだからです。万が一、後で「見つからない」と騒ぎになったり、うっかり処分してしまったりしたら、とんでもないことになります。

余談ですが、あるお宅でお菓子の箱を開けたら、数百万はあろうかという札束がぎっしり入っていたことがあります。私たちは逐一中身をチェックするので発見できますが、ご家族の方などが見たままのゴミだと思って捨ててしまう危険性もゼロではありません。

ちなみに遺品整理の現場では、室内の分別作業に参加する従業員は長年の経験のある信用ある自社スタッフに限定します。というのも、この業界でいちばん怖いことですが、こっそりネコババする人間が紛れ込むのを防ぐためです。

残念ながら身内の方が窃盗を働くケースもあるようですが、外部の業者に依頼する場合は、派遣スタッフが入っていないかや、その会社の社歴を調べるなど、より慎重になったほうがよいでしょう。

■テレビ周りがまるで「コックピット」

さて、こうした貴重品の類がなかなか見つからなかったり、あちこちに点在したりしている人は、やはり総じて整理整頓がなされていません。自己管理が苦手で、相続でも「え? そんな資産があんなところにあったの?」などとトラブルを招きがちです。

決して誤解してほしくないのですが、貴重品をわかりやすいところにまとめておきましょう、と言いたいわけではありません。防犯の意味では、見つかりにくいことはむしろメリットでもあります。

③ テレビの周りと寝床

ゴミ屋敷のような部屋を片付けにいくと、その散らかり具合も多種多様なのですが、ある2つの点は不思議と共通しています。

ひとつは、テレビの周りです。

ゴミ屋敷にはあらゆるゴミが散乱しているのですが、お酒の空き缶がテレビ台や、もしくはテレビ近くのテーブルに集中して置かれているのをよく見ます。

リモコンと飲み物の缶を持つ人のイメージ
写真=iStock.com/andriano_cz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/andriano_cz

考えてみれば当たり前のことで、生活の中心がテレビになっているので、自然と空き缶が溜まるわけですね。このようなケースの人は、テレビや、テレビの前に置いたテーブルの周辺で1日の大半が完結しています。すぐ手が届くところにいろいろなものが配置されているのです。さながらその人の基地あるいはコクピットといった様相です。

■「万年床」は、自己決定できず、孤立しているサイン

非常に省エネで面倒くさがり、消極的な生活スタイルが透けて見えます。なにしろ空き缶をゴミ袋にまとめることすら、しないのです。

テレビは受動的なメディアです。なんとなくテレビをつけて、なんとなく眺めて、平穏に1日が終わる。これは決して悪いわけではありません。ただ、積極的に自己決定する経験は非常に限られているのではないかと想像します。

もうひとつは、寝床です。

布団のシーツや枕カバーは、とにかく洗ったり取り替えたりするのが面倒で、ひとり暮らしの人では長く使いっぱなしの「万年床」になりがちです。

和室に敷かれた布団のイメージ
写真=iStock.com/liebre
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/liebre

生活情報サイトなどを見ると、寝具はだいたい週に1回は洗濯する人が多いようです。ひとり暮らしの場合、自分しか使わないし、寝られれば構わないとつい放置してしまうのは無理もないかもしれません。ただ、先々のことを自分で決定していたり、適度な人付き合いを保っているおひとりさまは、こういった面倒なこともしっかりとこなしている印象があります。

■ものを捨てられない

④ モノの多さ

モノに囲まれた部屋と、モノが少なくスッキリした簡素な部屋。あなたなら、どちらに住みたいですか? これは完全に好みの問題ですよね。モノが少なくて見た目がきれいな生活をしたい人は、それができていれば幸せです。

一方で、趣味が多くて、常に多くのモノに囲まれていたくて、それを実際に所有していることに満足を感じる人もいます。

他人からすると散らかり放題に見えても、自分の中では何がどこにあるかがだいたい把握できている、といった経験があなたにもありませんか? 要するに自分の生活を自分で管理できているから幸せといえるのです。

「ゴミ屋敷」と「モノ屋敷」は違います。

「ゴミ屋敷」というのは、食事の食べ残しや空き缶、ペットボトル、タバコの吸い殻やペットの糞尿などがあふれていて、臭いもきつく、文字どおりゴミで部屋が埋め尽くされている家のことです。

一方「モノ屋敷」というのは、フィギュアやプラモデル、ゲームやCDやレコード、本や雑誌、あるいはブランド品など、趣味性の高いものが大量に収集されている家のことです。興味のない人にはゴミと変わらないものを集めていたとしても、周囲に迷惑をかけていない限り非難される筋合いはありません。

■自己管理できる人はものに固執しない

私が仕事で知り合った80代後半の女性・林さん(仮名)は、着物や食器のコレクションをどんどん処分しています。私たちから見ても、そこまで減らす必要はないのではないかというほどの勢いです。

「もう、私は絶対に着ることはないし、娘も欲しがらないから、いらないの」

林さんはそう言います。

「でもね、いいものもあるから、それは価値のわかる人にあげたいの。それで、よくないものは捨てて身軽になりたい。だって、この先、使うことはないんですもの」

林さんがモノの処分を急ぐのは、自分自身の体が動かなくなってきているのを自覚しているからです。

「重いものが持てなくなってきているし、階段の上がり下りもゆっくりにしかできなくなっているの。家が広いのも考えものね。ひとり暮らしには広すぎるし、モノが多すぎるわ」

たしかに、着物や食器など、その手のものの価値がわかる人は多くありません。価値のわからない遺族の手に渡ると二束三文で処分されてしまう危険性があります。それなら、自分がしっかりしているうちに、同じ趣味の仲間や弟子などに譲るほうが、その相手にとっても着物や食器にとっても、どれだけ幸せなことかわかりません。

■決められるうちに決めておくのがベスト

とはいえ、自己管理ができている人ほど、徐々にモノを減らしていく傾向があります。

山村秀炯『老後ひとり暮らしの壁』(アスコム)
山村秀炯『老後ひとり暮らしの壁』(アスコム)

自分で自分の生活を管理することも歳をとるにつれて徐々に難しくなっていくので、死後のことも見据えて、趣味のコレクションなどもだんだん処分していくと、生活のストレスが減っていきます。

もちろん、死ぬまで好きなものにめいっぱい囲まれているのが幸せだ、という人もいます。そうであっても、自己管理ができている人は「自分がいなくなったらこうしてくれ」と段取りをつけています。

老いは誰にでもやってくるものです。判断力も記憶力も衰えていきます。自分の管理能力の衰えに備えて、決められるうちに決めておける人の部屋は、比較的モノが少なくシンプルな傾向にあると思います。

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山村 秀炯(やまむら・しゅうけい)
株式会社GoodService代表
愛知県を中心に遺品整理、生前整理などの事業を行う中で、ひとり暮らしシニアのさまざまな問題に直面。親族や友人に頼れない、頼りたくない「おひとりさま」という生き方を尊重し、なおかつ不安やトラブルなく生きていくためのサポート事業を新たに立ち上げる。東海テレビ「スイッチ!」、名古屋テレビ「UP!」など、メディアへの出演・取材協力も多数。著書に『老後ひとり暮らしの壁 身近に頼る人がいない人のための解決策』(アスコム)などがある。

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(株式会社GoodService代表 山村 秀炯)

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