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「用を足したらすぐ流す」人は大損している…医師が「超長生き時代に"便を見る力"が必須」と説く理由

プレジデントオンライン / 2024年3月29日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fcafotodigital

体調管理を徹底するにはどうすればいいか。医師の石井洋介さんは「かつて便は草木の肥料として生活の中に共存していたが、便を介したコレラなどの感染症が蔓延すると一気に汚物、悪者の立場になり『すぐに流すもの』になった。しかし今は、人間の寿命が行き着くところまで長くなってきた超長生き時代である。そんな時代にはいったん便を見ることでお腹や便の調子と向き合い、体調管理の一部として『便を見る力』を使いこなすことが必要だ」という――。

※本稿は、石井洋介『便を見る力』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

■「いつもの便の状態」=「平便」からのズレを見る

ここまで、カンベン(観便:便の観察)にあたって基準になるうんこの色と形について説明してきました。けれど、この基準から推測して、自分は腸の病気なのかも、とすぐに心配する必要はありません。

たとえば情報番組などで、大腸がんになると便が細めになると聞いて、「自分も便が細めなんだけど、大腸がんなんでしょうか」と心配する方もいます。

けれど、今までは普通だった便が突然細くなったわけではなく、昔から常に便が細めなら、それは体質と考えていいでしょう。それがその人の「平便」なんです。

自分の平熱がだいたい何度かということは、たいていの人が知っていますよね。そして平熱が35度台の人もいれば、36度台後半の人もいます。それと同じで、便も人それぞれに「いつもの便の状態」=「平便」があるのです。

それが人によって細めだったり、硬めだったり、ゆるめだったりするわけです。たとえばブリストルスケールでtype2やtype6のように、「正常」の枠外だったとしても、それがいつも通りなら心配はありません。

気をつけたいのは、そのいつもの状態とは違う便が続くときです。普段から平熱が35度1分くらいの人にとっては、36度5分でもちょっと熱っぽいわけです。

反対に37度の熱でも、平熱が36度8分くらいの人にとっては、ほぼ平熱の範囲になります。ポイントはいつもの状態からのズレで、それは便も同じです。だからこそ、自分の「平便」を知るために、毎日のカンベンが重要なのです。

■ヨーグルトが逆効果になる便秘もある

40代の特に女性の場合、無理なダイエットで体内の水分が減って便秘になったり、更年期との関係で便秘になりやすい方がいます。そういった場合、便秘の薬だけで調整しようと思っても、下痢になってしまうなどうまくいかないことが多いです。

また、便通をよくしようと思って、いろいろな乳酸菌飲料を飲んだりヨーグルトを食べ過ぎたりしたことが逆効果になって治療に来る方も意外といます。

ヨーグルトは慢性便秘症には効果がありますが、過敏性腸症候群(IBS)という疾患によって便秘している方の場合には逆にお腹が張って、便秘が悪化することもあります。

よかれと思ったことでも悪化することがあるヨーグルトは、便通全般にいいわけではなく、慢性便秘など一部の症状だけに効果があることを理解しておくとよいでしょう。

40代はライフサイクルの変わる時期でもあります。生活の変化や暴飲暴食、仕事のストレスなども便秘の原因になります。自分の生活を見直してみて、ストレスを減らせるところがないか考えてみましょう。

こんな症状があったら、消化器内科へ行ってみようリスト
出所=『便を見る力』

便通をよくするためには、極端なことをしないのが大切。適度な運動とバランスのいい食生活という、当たり前のことが一番効果的です。

反対に、いつも通りの食生活を送っているのに便の調子が悪い場合は、何かの病気が隠れている可能性もあるので、自分で判断せずにまずは一度、消化器内科の診察を受けることをおすすめします。

もうひとつ便秘の理由として気をつけたいのは、IBSです。これは本書で詳しくお話ししますが、IBSの場合はストレスが原因なので、便秘薬を使っても効きません。

たとえば消化器内科で慢性便秘症と診断されて便秘薬を出されたものの、それがうまく効かずに病院を転々として、私のところに来てみたらIBSだった、ということも意外と多いのです。

ですから、まずは消化器内科へ行ってみて、あまり症状が改善されない場合は、ホームページにIBSの記載があるなど、IBSに詳しそうなクリニックを受診してみましょう。

■その昔、便は草木の肥料として生活の中に共存していた

「皆さん今日は自分のうんこ見ましたか?」と聞いたとき、「トイレが自動で流してしまって見られなかった」という声をよく聞きます。「便はすぐに流すもの」になったのには歴史があり、そこには医学も関係しています。

その昔、便は草木の肥料として生活の中に共存していました。ところが近代化・都市化が進み人口密度が高くなった都市部で、便を介したコレラなどの感染症が蔓延しました。

昨今の新型コロナウイルス感染症のことを思い返してみてください。周囲の人が次々に感染していくことは、私たち人間に大変な恐怖心を与えます。コレラが大流行していた時代にも、緊急事態宣言の頃のような、パニックが起きていたと予想されます。

当時の人々は研究を重ね、感染の経路が便にあることを突き止めました。しっかりと下水道をつくって、便をばらまかないようトイレを設置し、そこだけで排泄するような政策が取られたのです。このようにして、便は一気に汚物、悪者の立場になりました。

昭和初期、つまり戦後はまだまだ日本中に病院が不足している時代でした。この頃はコレラほどの強烈な胃腸炎でなくても、おそらくロタやノロ、食中毒などの現代でも起こる胃腸炎で死者が出る時代でした。

胃腸炎で人が亡くなる理由は脱水症です。下痢や嘔吐(おうと)で食事や水分が取れずに脱水症になり、亡くなってしまいます。当時は病院が少なかったため、胃腸炎とわかっても病院にたどりつけず点滴を受けられなかったり、満床で入院できず、助けることができませんでした。

以降、全国に病院をしっかりと充足させるよう政策も動いていき、それに合わせて医師も増やすべく各都道府県に医学部が新設されていきました。

■超長生き時代は「便を見る力」を使いこなす

こうして病院や医師が充足するようになってきた我が国では、平均寿命が男性81.05歳、女性87.09歳(厚生労働省「令和4年簡易生命表」)と世界でもトップレベルの長寿国といわれるまでに伸びてきました。

石井洋介『便を見る力』(イースト・プレス)
石井洋介『便を見る力』(イースト・プレス)

現代における死因を多い順にみてみると、1位 がん(悪性新生物)、2位 心疾患、3位 老衰となっており、4位に脳血管疾患が続きます(厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計月報年計」)。

天寿を全うされた高齢者の解剖をすると、半分以上の方にがんが見つかるといわれています。つまりがんとは年齢を重ねることで起こりやすくなる、細胞の老化に伴う病気とも言えます。

心疾患や脳血管疾患は生活習慣病とも深い関係があるといわれていますが、僅かな血管の詰まりでも、長年かけて血管がボロボロになっていき、治療が難しくなります。

そのため、こちらも年齢を重ねることがリスクとなる病気です。そして老衰がすごい勢いで増えてきています。

人間はいつか天寿を全うして全員が死亡します。そう考えると、現代の死因上位は年齢に比例してリスクの高まる病気であることから、医療が発展してきた結果、おそらく人間の寿命が行き着くところまで長くなってきた時代だと言えるのだと思います。

そんな超長生き時代においては、感染症時代のようにすっと便を流すのではなく、いったん便を見ることでお腹や便の調子と向き合い、体調管理の一部として「便を見る力」を使いこなすことを提案していきたいと思います。

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石井 洋介(いしい・ようすけ)
医師、日本うんこ学会会長
19歳の時に潰瘍性大腸炎により大腸全摘出術を受けたことをきっかけに医学部受験を決意。高知大学医学部卒業後、研修を経て横浜市立市民病院へ。消化器外科医として大腸がんの手術などを多数手がける一方、厚生労働省勤務や「日本うんこ学会」創設など意欲的に活動。「大腸がんは見つかった時点で寿命が決まる」という厳しい現実を打開すべく、毎日うんこを観察するカンベン(観便)を推奨し、医療の現場はもちろん、ゲームアプリやエンタメを通して発信し続けている。近年は、病気の予防・治療に加えて在宅医療の必要性を感じ「おうちの診療所」を開設。著書に『19歳で人工肛門、偏差値30だった僕が医師になって考えたこと』(PHP研究所)。

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(医師、日本うんこ学会会長 石井 洋介)

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