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痩せた女性で筋肉が少ない人ほど高血糖のリスクが高い

PR TIMES / 2018年4月13日 16時1分

~糖尿病発症予防には適切な食事と運動が重要~

順天堂大学大学院医学研究科・スポートロジーセンターの河盛隆造センター長、田村好史准教授、染谷由希特任助教、代謝内分泌内科学の綿田裕孝教授らの研究グループは、痩せた女性(体格指数(BMI)*1 : 18.5kg/平方メートル 未満) のうち、ブドウ糖を経口負荷(75g経口ブドウ糖負荷試験*2)した2時間後の高血糖の原因として、筋量の低下や筋肉への脂肪蓄積が関連する可能性を明らかにしました。本成果は痩せた女性の糖尿病発症予防には、筋肉の「量」の増加や「質」の改善を目指して、適切な栄養摂取や運動を行うことの重要性を示唆しており、我が国の予防医学を推進する上で有益な情報です。本研究は米国内分泌学会雑誌「Journal of the Endocrine Society」で発表されました。



本研究成果のポイント


痩せた女性にみられるブドウ糖負荷後の高血糖は、筋量の低下や脂肪筋が関連する
痩せた女性の糖尿病発症予防には筋肉の「量」の増加や「質」の改善が重要
予防医学の推進のためには適切な食事と運動の必要性をより啓発すべき


背景
近年、肥満だけではなく、女性の「痩せ(体格指数:18.5kg/平方メートル 未満)」が世界的に問題となってきています。特に我が国は、先進国の中で最も女性の痩せ傾向が進んでいる国の一つで、日本人女性の8人に1人、20代女性の5人に1人以上が「痩せ」と判定されています。「痩せていれば健康」ということはなく、痩せた女性は太った女性と同様に糖尿病の発症リスクが高いことが報告されており、今後、痩せ傾向が続くことで新たな疾患リスクにつながることが懸念されます。しかし、なぜ痩せた女性の糖尿病発生リスクが高いのかについては不明な点が多いことから、私たち研究グループは、痩せた女性(体格指数:16.0 ~ 18.5kg/平方メートル )を対象とした研究に着手しました。

内容
本研究では、痩せた女性の割合が最も多い若年層と、糖尿病の発症リスクが高まる閉経後の年代層に着目し、20代の痩せた若年女性31名と50~65歳までの痩せた閉経後女性30名を対象としました。対象者には、糖尿病かどうかを判定する検査の一つである75g経口ブドウ糖負荷試験を実施するとともに、二重エネルギーエックス線吸収測定法(DXA法)*3による体組成測定、プロトンMRS法による異所性脂肪測定(脂肪肝、脂肪筋)*4などを実施しました。
その結果、若い痩せた女性と比較して、痩せた閉経後女性では、糖負荷2時間後に140mg/dL以上となる耐糖能異常*5を来す人が多くおり、測定した人のうち37%(30名中11名)が耐糖能異常であることが明らかとなりました。同年代の女性における耐糖能異常の割合は17%程度であり、それと比較して高い割合となっていました。さらに、痩せた閉経後女性で、どのような人がより高血糖になりやすいかを詳しく解析したところ、インスリン分泌が低いことに加え、除脂肪体重(全身の筋肉の量を反映)が少ない人、筋細胞内に脂肪が蓄積(脂肪筋)している人ほど、血糖値が高いことが明らかになりました(図)。
筋肉は人体の中でブドウ糖を貯蔵する最大の臓器です。痩せた女性で筋肉量が少ない人では、食後十分な量のブドウ糖を筋肉に取り込めず高血糖を生じやすいと考えられます。また、筋肉への脂肪蓄積は骨格筋の質の低下(インスリン抵抗性*6)を引き起こし、ブドウ糖を筋肉に上手く取り込めず高血糖となる可能性があります。まとめると、痩せた女性の中でも、筋肉の「量」の低下や「質」の低下が生じている人がおり、そのような人では上記の理由により糖尿病の発症リスクが高くなることが懸念されます。

今後の展開
今回の結果より、痩せた女性でも糖尿病になりやすい原因として筋肉の「量」や「質」が関わっている可能性が示されました。「痩せ」と糖尿病発症との因果関係については、未だ不明な部分もあるため、今後は介入研究を通した検証を進めていくことを予定していますが、「痩せ」は糖尿病に限らず、無月経、骨粗鬆症といった様々な疾患にも結びつくことが知られており、適切に是正することが肝心です。第一に、痩せの原因として栄養摂取不足が背景にあることが多いことから、バランスの取れた食事を適量摂ることが必須です。例えば、若い女性でダイエットのために極端な炭水化物制限を続けていると、身体に必要なブドウ糖を産生・供給するために筋肉が分解されてしまうことや不適切な食事によるタンパク質の摂取量不足により、筋量が低下し、高齢者で認められる筋量の減少(サルコペニア*7)と同レベルにまで筋量が低下するおそれがあります。第二に、正しい食事を摂ることに加えて、主に筋肉の「量」を増やす「レジスタンス運動*8」、「質」を高める「有酸素運動」への取り組みが重要となります。これらの運動は、厚生労働省から出されている運動ガイドライン*9においても推奨されています。

[画像: https://prtimes.jp/i/21495/58/resize/d21495-58-353892-0.jpg ]

用語解説
*1 体格指数(BMI)
体格指数は通称BMI(body mass index)といい、その人がどれくらい痩せているか、太っているかを示す指数です。体重(kg)を身長(m)で2回割って算出します。我が国の基準は18.5 kg/平方メートル 未満を痩せ、18.5~25 kg/平方メートル を普通体重、 25 kg/平方メートル 以上を肥満としています。

*2 75g経口ブドウ糖負荷試験
75gのブドウ糖を溶かした溶液を飲み、その後、30分、60分、90分、120分後にそれぞれ採血を行い、血糖値やインスリン値を測定する検査です。この検査により、耐糖能異常や糖尿病を見つけることができます。

*3 二重エネルギーエックス線吸収測定法(DXA法)
2種類のエネルギーのX線を測定部位に当てることにより骨密度の他、筋肉量や脂肪量の計測をすることができます。測定時間が短く、放射線の被爆量も少ないという利点があります。

*4 異所性脂肪測定(脂肪肝、脂肪筋)
脂肪の多くは皮下脂肪や内臓脂肪といった脂肪組織に蓄えられますが、それ以外の別の場所(異所)にも蓄積されます。そのような脂肪を異所性脂肪と呼びます。肝臓や骨格筋に異所性脂肪が蓄積すると(脂肪肝、脂肪筋)、溜まった脂肪が毒性を発揮して、インスリン抵抗性が生じると考えられています。異所性脂肪は、プロトンMRS (magnetic resonance spectroscopy)法という 、MRI(核磁気共鳴画像) の装置を用いた特殊な方法により計測が可能です。

*5 耐糖能異常
75g経口ブドウ糖負荷試験で2時間後の血糖値が140 md/dL以上、200 mg/dL未満となっている状態を指します。インスリン分泌量の低下やインスリン作用不足(インスリン抵抗性)により生じます。

*6 インスリン抵抗性
膵臓から分泌され、血糖を下げるホルモンであるインスリンの感受性が低下して効きにくい状態(抵抗性)を指します。肥満や内臓脂肪蓄積、異所性脂肪蓄積に伴って出現することが示されて来ており、糖尿病の原因になるだけでなく、メタボリックシンドロームの重要な原因の一つと考えられています。

*7 サルコペニア
一般的に加齢により生じる筋量の減少のことを指します。サルコペニアは高齢者の虚弱の原因とされていますが、若い女性でもサルコペニアの基準を満たすほど筋肉量が少ない人もおり今後の健康状態が危惧されます。「若年のサルコペニア(若ペニア)」を増やさないように、正しい食習慣を実践し、適切な運動を行うことの必要性がより認識されることが望まれます。

*8 レジスタンス運動
筋肉に負荷をかけた運動のことをレジスタンス運動といいます。重りなどを用いたいわゆる筋力トレーニングがレジスタンス運動の一つです。

*9 運動ガイドライン
我が国では厚生労働省が身体活動・運動分野における国民の健康づくりのために、「健康づくりのための身体活動基準2013」及び「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」を公表して活用されています。

原著論文
タイトル: Characteristics of Glucose Metabolism in Underweight Japanese Women
日本語訳:痩せた日本人女性における糖代謝の特徴
著者: Yuki Someya, Yoshifumi Tamura, Ruriko Suzuki, Hideyoshi Kaga, Satoshi Kadowaki, Daisuke Sugimoto, Saori Kakehi, Takashi Funayama, Yasuhiko Furukawa, Kageumi Takeno, Junko Sato, Akio Kanazawa, Ryuzo Kawamori, Hirotaka Watada.
著者名(日本語表記):染谷由希、田村好史、鈴木瑠璃子、加賀英義、門脇聡、杉本大介、筧佐織、船山崇、古川康彦、竹野景海、佐藤淳子、金澤昭雄、河盛隆造、綿田裕孝
掲載雑誌:Journal of the Endocrine Society,
Volume 2, Issue 3, 1 March 2018, Pages 279–289,
本研究は (https://academic.oup.com/jes/article/2/3/279/4874251) に2018年2月19日付で掲載されました。
DOI:10.1210/js.2017-00418

本研究は、平成26~30年度 文部科学省 私立大学戦略的研究基盤支援事業「骨格筋機能に着目した統合的な介護予防法開発プロジェクト」、JSPS科研費基盤研究(C)JP17K01868、および、平成29年度 ロート女性健康科学研究 研究助成による支援を受けて行われました。
また、本研究に協力頂きました被検者の皆様のご厚意に深謝いたします。

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