日本発、世界最大規模のインベントリデータベースIDEAの更新版をリリース
PR TIMES / 2024年3月18日 16時45分
産業活動の温室効果ガス排出量に最新の電源構成と土地利用による変化を反映
・最新の電源構成を反映したデータベースの更新
・土地利用や土地利用の変化に伴う温室効果ガス排出量を収録
・温室効果ガス排出量を正確に把握し対策へ活用
[画像1: https://prtimes.jp/i/113674/76/resize/d113674-76-70f563d0fc795e2abad7-0.png ]
概 要
世界最大規模のインベントリデータベースIDEAがこの度Ver.3.4としてリニューアルリリースされます。
現在IDEAでは、農林水産物や工業製品、サービスなどの国内の経済活動を網羅する約5,000種類の環境負荷物質を定量した二次データを提供しています。
2010年にVersion1.0をリリースして以来、エネルギーや産業などの最新の統計データや国内外の報告書、論文を用いて、2016年にVersion2.0へ、2021年にVersion3.0へのデータ基準年を更新するバージョンアップを実施するほか、毎年の電力データ基準年の更新、機能拡張、データ追加などのリニューアル更新をしています。
なお、リニューアルリリースの詳細は、2024年3月22日に東京都千代田区 日経カンファレンスルームで開催されるLCA活用推進コンソーシアム公開講演会・成果報告会で紹介されます。
下線部は【用語解説】参照
[画像2: https://prtimes.jp/i/113674/76/resize/d113674-76-c655089c95307746e345-1.png ]
開発の社会的背景
世界的に脱炭素社会や持続可能な地球環境を目指す動きが活発化し、企業全体のサプライチェーンにおいても、環境に適合した技術や製品を広く社会に普及させていくことが求められています。
こうしたなか、事業者がLCAを用いて、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の把握と削減を行っていくには、一次データ(フォアグラウンドデータ)だけでなく、二次データ(バックグラウンドデータ)が必要となりますが、IDEAをリリースする以前の日本には、参照できる二次データが十分ではありませんでした。
気候変動をはじめ、さまざまな影響領域への環境負荷を定量的な評価に活用できる、インベントリデータベースの需要の高まりを受け、2008年から産総研がIDEAの開発をスタートし、毎年データベースの更新と拡張を行い、世界三大データベースの一つとなりました。
現在では、IDEAで提供する中立的で客観的なインベントリデータが、環境リスクに配慮した上で事業活動を推進してライフサイクル全体で環境負荷物質の排出を削減していくため、多くの事業者に活用されています。
IDEAの利用方法
環境負荷を見える化し、適切に定量評価していく機運が高まるなか、産総研では持続的な環境社会づくりに貢献するため、2020年に「LCA活用推進コンソーシアム」を立ち上げました。コンソーシアムに加入する会員は、IDEAのデータベースを利用することができるほか、コンソーシアム主催の定期的な活動報告や勉強会、講習会などのイベントへの参加も可能となります。
コンソーシアムは、化学、金属、食品、繊維、自動車といった製造業を中心に、カーボンニュートラルの実現へ向けて、LCAに取り組む480団体以上の会員(2024年3月時点)で構成されています。
IDEA Ver.3.4への改定で期待できる効果
森林を伐採し、農地に変えたり建物を建てたりするとその地域に蓄えられていた炭素の量が減少し、気候変動に大きな影響を及ぼすことがあります。特に東南アジアやアフリカなどの地域では人為的な土地利用変化が顕著になっており、欧州をはじめ世界的にも、人為的な土地利用変化が気候変動へどのように影響を与えるかを考慮し、その影響を抑制するための規制や国際基準(ISO規格)を設ける動きが出てきています。
こうした国際的な動向に対応していくために、今回のリニューアルでは、新たに人為的な土地利用変化に伴う温室効果ガス排出量を定量できるようにしました。これは日本のインベントリデータベースの中ではIDEAが初めてとなり、上記の排出量を算定できるようにしたことで、企業が事業活動の中で技術の導入や製品の使用によって、どのくらい温室効果ガスを排出しているのかをより正確に見える化できます。
企業が事業環境の中で技術の導入や製品の使用によって、サプライチェーン全体で排出している温室効果ガスを正しく把握できれば、カーボンニュートラル(脱炭素)や気候変動の対策に向けた適切な見立てが可能となり、具体的な対策活動に生かすことが期待できます。
今後の予定
欧州を中心に企業のLCA導入の機運が高まり、それに伴い、国際的なガイドラインでの算定ルールの変化、データ品質の担保、データベースとしての要件も変化しています。IDEAでは毎年のリニューアルを通じて、さらなるデータの詳細化や正確性の担保を図りつつ、業界団体との連携や海外データの充実も行っていき、より網羅性の高いデータベースにしていく予定です。
今後も、環境負荷の見える化に取り組む企業に向け、IDEAの普及を促進することで、地球環境の保全に貢献するとともに、環境リテラシー向上につながる情報発信を行っていきます。
講演会・成果報告会情報
イベント名:LCA活用推進コンソーシアム公開講演会・成果報告会 ~カーボンニュートラルの実現に向けた情報開示の今後の展望~
日時:2024年3月22日 金曜日 14時00分~17時15分
会場:日経カンファレンスルーム(東京都千代田区大手町1-3-7日経ビル6階)
主催:産業技術総合研究所 LCA活用推進コンソーシアム事務局
申し込み:https://www.aist.go.jp/aist_j/news/event/ev20240322.html
用語解説
インベントリデータ
対象製品が、ライフサイクルを通じて二酸化炭素や各種化学物質などの環境負荷物質をどの程度排出しているかを算出したデータ。
LCA(ライフサイクルアセスメント)
製品やサービスの原料採掘、調達から製造、廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体で発生した環境負荷を定量的かつ客観的に評価する手法。
一次データ(フォアグラウンドデータ)
ライフサイクルインベントリ分析実施者が直接収集した、対象製品の製造に関わる入力および出力データ。製品の製造、輸送、使用、廃棄などのデータを実測または実績に基づいて推定して得ることから、製造者か製造者に近い立場にある人のみ収集が可能なデータである。通常、自社で製造している製品の製造プロセスの入力および出力はフォアグラウンドデータとして入手する。
二次データ(バックグラウンドデータ)
ライフサイクルインベントリ分析実施者が直接収集できないデータで、インベントリ分析に用いることを認められているデータをバックグラウンドデータと言う。自社の工場での消費エネルギー数量や購入した原材料数量(フォアグラウンドデータ)は調査できるが、その購入した原材料を生産するのに要するエネルギー数量や原材料数量の詳細を直接調査することは困難である。その際に、購入した原材料を生産するのに要するエネルギー数量や原材料数量などの平均的な値(バックグラウンドデータ)を利用することになる。(IDEAはバックグラウンドデータである)
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