新型コロナウイルスのワクチンは原価販売で公平な分配を――Gaviの資金拠出国に訴え
PR TIMES / 2020年6月16日 14時0分
新型コロナウイルス感染症のワクチンについて、Gaviワクチンアライアンス(Gavi)が、製薬企業と交渉する世界的な仕組みの構築を進めている。その中で、各国政府に途上国のためのワクチン調達基金の設立を呼び掛けており、6月4日のGavi第3次増資会合で発足させる見通しだ。国境なき医師団(MSF)は、ワクチンの公平な分配のために、各国首脳は製薬企業にワクチンの原価販売を促すべきと訴えている。
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「世界の公共財」実現のために
これまで複数の国の首脳が、新型コロナウイルスのワクチンを「世界の公共財」「人びとのワクチン」などと呼び政治的意欲を示してきたが、いずれも今後のワクチン調達の具体策に結び付いていない。20年前に世界の最貧国のワクチン費用を賄うために誕生したGaviの今回の試みは、効果の期待できるワクチンの量産体制確立と、途上国にワクチンを提供するための資金調達だ。ワクチンの公平な分配についての各国合意と、透明性のある客観的な優先順位の設定についても協議中で、世界保健機関(WHO)がその枠組みづくりを主導する。こうした試みの成功は、各国政府が枠組みに従って、この公共財を自国中心の利益に優先させられるか否かにかかっている。
MSFのワクチン政策上級顧問ケイト・エルダーは、「ワクチンの正確な生産コストを把握するため、各国政府とGaviは、製薬企業に情報の開示を求めるべきです」と指摘する。「多額の資金を出せる国だけがワクチンをいち早く入手して自国民を守り、他の国は置き去りにされるという従来通りのやり方が通用しないことは、誰もが納得するところでしょう。各国政府は、ワクチンが原価販売で世界中の人に等しく届くようにしなければなりません」
世界では各国政府や民間団体などがすでに44億米ドル(約4730億円)余りを製薬企業の新型コロナウイルスのワクチン研究開発に出資してきたが、ワクチンを世界中の人に負担可能な価格で広く普及させるという前提条件を求めてこなかった。Gaviが作り上げようとしている今回の基金の目的は、新ワクチンの生産拡大の原資を募り、一定の価格に抑えることだが、製薬会社が手ごろな価格を設定する保証はない。
「原価」である必要性
Gavi、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、世界銀行などの構想によって、2009年に途上国の肺炎ワクチンを確保するために設立された基金は、製薬企業の課す比較的高額なワクチン価格に苦しみ、途上国政府には高すぎる費用負担を長期的に強いる結果となった。15億米ドル(約1612億円)もの資金がファイザー社とグラクソ・スミスクライン社をはじめとする製薬企業に供与されたが、この取り組みにもかかわらずたびたびワクチン不足が発生。さらに、人道援助団体やNGOはこの枠組みの対象外とされたため、MSFも2017年まではGaviの割引価格でワクチンを調達できず、長年にわたって世界最低価格の適用を求めていた。この経験から学ぶべき教訓として、一度価格が取り決められてしまうと、Gaviの力と立場では後追いでの引き下げ交渉は望めないため、当初から原価販売に照準を絞ることが肝心だ。
MSFアクセス・キャンペーンのシドニー・ウォン医師は、「新型コロナウイルスのワクチンが実用化されても、世界的な需要がすぐに供給能力を超えてしまうことは明らかです」と話す。「世界の指導者の多くが、ワクチンを公共財として認識していることは心強いものの、自国中心的な考えによってワクチン争奪戦が起きる懸念も大いにあります。各国政府とGaviは、まず最前線の保健医療従事者と重症化・死亡リスクの高い患者を優先する、透明性の高い、客観的な分配の仕組みを追求すべきです。MSFは世界各地で、医薬品の価格が高すぎるために多くの人が病気になったり亡くなったりしてしまう理不尽を目にしてきました。ワクチンの開発を待ち望みながらも、そうした先例の二の舞を避けるためにも、皆が力を合わせ、政府と市民社会はそれぞれの国が責任を果たすよう動かなければなりません」
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