1秒短縮の鍵は寒さ!? 真冬にサーキットが熱くなる理由とは~カスタムHOW TO~
レスポンス / 2025年1月11日 7時30分
気温が低い冬場はタイムアタックシーズンと呼ばれる季節。多くのスポーツはお休み。モータースポーツも基本的に行われていないが、なぜタイムアタックシーズンと呼ばれるのか。それは寒いほうがクルマが速くなり、タイムが出しやすい条件が揃うからなのだ。
そもそもサーキット走行を楽しむ人たちはベストタイムを競うのが一般的。順位を競うレースはJAF公式戦がメインになり、レギュレーションも細かく定められている。GR86/BRZ Cupなどがその代表。チューニングしたマイカーでは参加できず、そういったクルマで楽しむならベストタイムを競う「タイムアタック」がメインとなる。
これはレースにおける予選と同じで、一定の時間内でベストタイムを競うもの。連続走行しなくていいので、ラジエーターやオイルクーラーなどの冷却対策、ブレーキを冷やすチューニングなど、レースほどは必要とされないのでコスト的にも安価にできる。それでいて自分好みの仕様で走れるので一般ユーザーからは親しみやすい。そんなタイムアタックを楽しむ人たちには、真冬こそ旬なシーズンなのだ。
理由1:気温が低いとエンジンパワーが出る
エンジンは排気量の分だけ空気を吸い込んで、その量に合わせてガソリンを噴射して点火。爆発力で走っている。エンジンにタービンの羽で空気を押し込んでいるのがターボやスーパーチャージャーである。
その排気量は変わらないわけだが、気温が下がるほどに空気は密度が上がる。そうなると同じ排気量でもエンジン内部に吸い込まれる酸素の量が増える。それに合わせてガソリンもたくさん噴射でき、そこに着火すればより大きなパワーが得られるのだ。だから、気温の低い冬場はエンジンパワーが出やすく、加速が良くなる。
これは顕著なもので、富士スピードウェイなら真夏と真冬で1秒から2秒ほどタイムが変わることが普通。ストレートスピードは明らかに速くなり、タイムが短縮されるのだ。
理由2:エンジン水温、油温が低い
気温が低ければエンジンを冷やしている冷却水の温度も下がりやすい。エンジン内部を潤滑するオイルの温度も抑えられる。そのため夏場なら1周したらクーリング走行でエンジンを冷やさなければならないクルマでも、冬場なら数周連続走行ができるとか、さまざまな面で楽になるのだ。
そのため冬場のサーキットをメインにしているユーザーだと、あえてオイルクーラーを追加しないとか、ラジエーターも純正のままということもある。その方がどちらも重量増を防ぐことができ、サーキットでのベストタイムを狙いやすくなるのである。
理由3:タイヤが熱ダレしにくい
タイヤはある程度温度が上がってゴムが柔らかくなり、路面を掴んでくれるからこそ最大のグリップを得ることができる。しかし、温まりすぎると熱ダレしてグリップが下がってしまう。夏場は高速道路を走っただけで表面温度は50度以上にもなる。そんな条件でサーキット走行をするとあっという間にタイヤは熱ダレしてしまう。
冬場はタイヤを温めるのに時間はかかるが、一気にヒートして熱ダレしてしまうことが起こりにくい。例えば30分の走行枠内で1度アタックして、いったんペースを落としてタイヤを冷ましてから再度アタックする、ということができる。真夏では1度温まったタイヤは走行枠内で冷めることはほとんどない。温度が高い状態で周回していると摩耗も激しくなるので、結局走行枠をフルに走ってもあまり意味はなく時間が余ってしまうこともあるのだ。
こういった理由からタイムアタックは真冬がメインとされている。そこで問題になるのがタイヤとエンジンのピークをどこに持ってくるかということ。タイヤは素早く温めたいが、そのために何周もしているとエンジンがヒートしてきて徐々にパワーが落ちてきてしまう。エンジンが適正温度でもっともパワーが出るタイミングでは、まだタイヤが温まらないことが多い。そこで使われているのがタイヤウォーマーである。
タイヤをあらかじめ電気などで温めておいて、コースイン直後から全開でアタックできるようにしている。そうすればエンジンは理想的な温度の状態でアタックでき、ベストタイムを出しやすい環境が揃う。筑波や鈴鹿でベストタイムを目指す「アタッカー」と呼ばれる人たちの多くは最近はタイヤウォーマーを使って、さらなるベストタイム更新に取り組んでいる。
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