コロナ禍での地方議会とその意思決定

政治山 / 2020年8月26日 13時14分

 新型コロナウイルス対策といえば、知事や市長などの首長がよくメディアに登場します。予算編成権を持つ首長の決断が自治体の活動に与える影響は大きく、この間、感染拡大防止や経済対策について多くの打ち手を発表してきています。政策の良し悪しや財源問題について思うところはありますが、それらについては多くのメディア(前回記事「コロナ対策はお座敷券?しがらみ政治を断つ地域政党の可能性」もご覧ください)で既に紹介されていますので、今回は昨今の「議会活動」に着目してみたいと思います。

議事堂

※写真はイメージです

地方議会はコロナ禍で何をしているのか

 平時の議会活動の量・質は議会ごとに大きく異なりますが、昨年度末から今夏にかけてはどこの議会でも例年以上に議会が開かれていたのではないかと思います。その理由は主に以下の2点です(最も注目度が高かったであろう特別定額給付金は(1)に分類されます)。

(1)国が決めた取り組みや補正予算を審議するため。
(2)自治体独自の取り組みや補正予算を審議するため。

 議会開催にあたっては、議会がクラスターになってはいけないということで体温測定やマスクの着用など一般的な対策に加えて、「審議時間や日程を短縮する」など自らの活動そのものをやや抑制的にする議会もありました。議員に感染者が出た場合、議会日程や予算成立のタイミングに影響が出る可能性もあり、慎重にならざるを得ない面があるからです。

 一方で、不要不急とは言い難い重要な審議について時間を短縮して、首長が提出したアイディアにただただ賛成するという議会運営は「議会自らが議会の存在意義を否定している」という考え方もあり、地震や水害なども含めて非常時の議会のあり方について、市民と議会はあるべき姿を模索していく必要があります。

地方議会ではテレワークできないのか

 上記のような対策をとりつつ議会活動が行われていますが、例えば予算を成立させるために、いわゆる密状態で着席をして採決(多数決)を取ることがあります。また、補正予算などの議案に対して討論が行われる場合は、数時間同じ空間にいる議会もあるのではないかと思います。一般的な感染予防策がなされているとはいえ、やはり議場に集まることは大なり小なりリスクが伴います。

 そこで考えられる対応としては、Zoomなどのオンライン会議システムを用いた開催です。今回のような状況や災害によって交通インフラがストップしたときなどに有効であり、いくつかの自治体で既に委員会については規則改正や実際の運用が始まっています(委員会というのは議場に全議員が集まるのではなく、担当する分野ごとの小グループに分かれて会議室などで議論を行う場です)。

 議場ではなく委員会でのオンライン開催が進んだ理由は、今年4月に総務省が発出した「新型コロナウイルス感染症対策に係る地方公共団体における議会の委員会の開催方法について」という通知にあります。この中で、「映像と音声の送受信により相手の状態を相互に確認しながら通話することができる方法を活用することで委員会を開催することは差し支えない」とされています。

 一方で、議場に議員全員が集まって行われる本会議については法律の解釈上「本会議への出席は現に議場にいること」とされています。これによって地方議会のテレワークは委員会のオンライン開催を試みる流れになっています。

ビデオ会議

オンライン会議の様子(写真はイメージです)

議会による意思決定~平時から根強い地方議会不要論~

 平時も非常時も議会の本業は「意思決定」です。さまざまな課題に対して解決策を考えて知事や市長など首長に提案をすることはできますが、最終的に予算を編成する権限は首長にあります。そして首長の権限で編成された予算にGoサインを出すかどうかを議会が決断します。予算について編成する権限と決定する権限、首長と議会が担う役割には同じ重みがあるといえます。

 ですが残念なことに、地方議会の必要性を疑問視するご意見は根強くあるように思います。その理由は活動内容の不透明感などさまざまありますが、本業の「意思決定」についていえば、首長から示された予算や議案にNoを突き付けられる事例があまりにも少なく、有権者からは「首長の意思決定=自治体としての意思決定」としか見えず、議会の存在感が感じられない点が致命的なのではないかと思います。

 なお自治体によっては、市民意見を踏まえた議会からの提案が首長に伝わっていて、それを前提に首長が予算編成を行っているから、否決や修正をする必要がなく、むしろ効率的効果的に市民サービスの向上を実現できているという議会もあるかもしれません。

議会による意思決定~コロナ禍における地方議会の役割~

 平時が上記のような状態だとすると、コロナ禍の地方議会はどのようにあるべきでしょうか。もし仮に議会の意向を踏まえて首長が予算編成などを行っていて、そのことを議会が100%信頼できるのであれば、スピード感だけで言えば議会を通さずに事業などを実行してしまう「専決処分」という手法があります。今回の特別定額給付金については、事業内容やその必要性などが明らかで時間的余裕がないとして実際に専決処分が行われた自治体もあります。

 一方で非常時だからこそ、平時とは比べ物にならないほど議会によるチェック機能が重要であるという見方もあります。本来比較するものではありませんが、非常時には平時より自治体による支援を必要とする住民が増えます。自治体が誤った選択をしてしまった場合の負の影響は、平時よりも大きいはずです。首長が常に最適な選択を行うと言い切れないのであれば、議会のもつ権限で、自治体としての取り組みを市民が求める取り組みにできる限り近づけていく必要があります。

 コロナ禍の今、皆さんの町で「なんでうちの町は今こんなことやっているんだ?」という取り組みがあるのであれば、それはもしかしたら議会が止めるべき事業だったのかもしれません。議会が新たな事業をつくるために予算を増額することについては、法律上非常に限定的に解釈されているなど仕組みとしての限界はありますが、市民ニーズにあった支援策が講じられるような議会としての活動があってこそ、議会はコロナ禍でも求められる意思決定機関になりえるのではないでしょうか。

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