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住民福祉の向上に寄与する議会改革を目指して~日本生産性本部「地方議会議員フォーラム2017」開催

政治山 / 2017年4月9日 17時30分

 2000年4月に中央政府の権限を地方自治体に移す趣旨の地方分権一括法が施行されてから今年で17年経過しましたが、東京一極集中化は進み地方の衰退に拍車がかかっています。少子高齢化が進む日本では公共サービスの質的転換が求められており、これまで以上に税金を効果的に活用しなくてはなりません。そんななか、公共サービスの質を改善する担い手として地方議会の役割を見直す動きが出てきています。

 公益財団法人 日本生産性本部は3月25日、東京都千代田区の都市センターホテルで、議会からの政策サイクルと評価モデルの構築を研究する「地方議会議員フォーラム2017」を開催しました。フォーラムには全国から40人以上(地方議員34人、自治体職員6人)の参加者が集まり議会改革事例の報告と活発な議論が行われました。

日本生産性本部事務局による司会進行
日本生産性本部事務局による司会進行

地方政府は地方議会から誕生する

 早稲田大学名誉教授(元三重県知事)北川正恭氏は、基調講演「地方議会と地域経営の視座」で以下のように述べました。

北川正恭氏の基調講演
北川正恭氏の基調講演

北川氏――地域を変えていかないかぎり東京一極集中の構図は変わりません。自分の自治体はこんなものだという諦めの先入観(ドミナントロジック)は現状肯定であり、改革を起こすことができなくなります。

 今の日本は中央政府が政を行い、地方公共団体は決定に従う下請機関になっています。地方分権一括法案について議論された時代には「地方政府」の確立が必要という話がありました。自治体が住民福祉を向上するには、独立した財政と立法権がなくてはなりません。

 私が三重県知事を務めていた時は改革派の知事として紹介されていましたが、実際には三重県の人口は減少しており、人口増に寄与する働きはできていませんでした。首長の主だった役割は規則や条例などの慣習に従う形での執行です。自分たちが主体的に法令を定めることのできる立法権がなければ、真の地方政府とは言えません。

 一方、議会の役割は民意の反映ですから、条例が間違っていると思えば変えればよいのです。執行機関ではなく、議決機関の議会から地方政府が誕生すると私は考えています。議会は執行機関に対する監視役というのは正しいですが、そこに落とし込められていたという現実に気が付くべきです。中央集権の中で執行機関が有利な構図から脱却しなくてはいけません。私の時代は、機関委任事務の全廃など地方分権の形式要件を整理する役割を担いましたが、皆さんの時代に実施的な地方分権を実現してください。

条例をつくるのが議会の役割

 続いて山梨学院大学法学部教授 江藤俊昭氏の基調講演「議会から政策サイクルを回す」の概要を紹介します。

江藤俊昭氏の基調講演
江藤俊昭氏の基調講演

江藤氏――憲法第8章の「地方自治」94条には自主行政権、自主材政権と共に自主立法権が記載されていますが、中央集権下で実現することができませんでした。しかし、地方分権一括法の施行によりこれまで国や法令で定めていた事が一部条例で定めることができるようになりました。条例をつくるのが議会の役割なのです。憲法第8章の「地方自治」は英語版だとローカルセルフガバメントと書かれています。ローカルガバメントとは地方政府という意味ですから、地方公共団体という呼び方をやめて議会の役割を確認したいところです。

 栗山町の議会基本条例から10年が経過しましたが、新たな地方議会像を示すことができました。地方自治の本旨を記した大事なものですが、形式から住民福祉の向上に繋げなくてはなりません。「議会からの政策サイクルと評価モデル構築」を研究して住民福祉の向上に寄与する議会改革をすることが本フォーラムの目的なのです。

議会改革事例の事例報告と活発な議論

 基調講演後、4自治体の議会改革の事例報告とパネルディスカッションが行われました。

大津市の事例報告
大津市の事例報告

「市民の意見聴取による4つの政策サイクル」
可児市議会議員 川上 文浩氏
可児市では地域課題懇談会等で集約した市民の意見を委員会に組み上げて、政策や予算審議に組み込んでいます。

「“未来を語る議会”であるために~大津市議会ミッションロードマップの挑戦~」
大津市職員 清水 克士氏
大津市議会では議員が当選してすぐに任期4年間(通期)で議会が取り組む政策をまとめたミッションロードマップを作成し市民への説明責任を果たす取り組みをしています。

「議会基本条例と会津若松市議会の挑戦」
会津若松市議会議員 松崎 新氏
会津若松市議会では総合計画と連動した財政計画を作成し、予算審査決算審査準備会に住民の意思を反映させるために市民との意見交換会を開催しています。

「つながる議会へ-議会をリノベーション」
西脇市議会議員 林 晴信氏
西脇市議会では定例会の合間に行政評価や政策討論会を開催し、住民の意見を政策に反映しています。

「那覇市議会の政策サイクル~“はじめの一歩”までの道~」
那覇市議会議員 前泊 美紀氏
那覇市議会では議会運営委員会と並列に議会改革推進会議を設置して、議会改革や市民参画を促す政策を提言しています。

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