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紙の投票の限界―浜松市の住民投票で1割超が無効票に

政治山 / 2019年4月19日 15時0分

 4月7日(日)は統一地方選の前半戦、道府県と政令市の首長・議会議員選挙の投票日でした。

 その同日、浜松市長選・市議選とあわせて行われたのが、行政区の再編を問う住民投票です。ここでは、7つの区を3つに再編することの是非ではなく、回答方式と投票方法を検証したいと思います。

反対多数?賛成多数?読み方いろいろ

 投票結果は、以下の通りでした。

  • 3区案に賛成
    13万2249票
  • 3区案反対だが再編には賛成
    3万1722票
  • 3区案にも再編にも反対
    15万8629票

これを「3区案への賛否」という視点から見ると、

  • 賛成 13万2249票
  • 反対 19万351票

で反対多数と見ることができます。

しかし「再編の賛否」として見てみると、

  • 賛成 16万3971票
  • 反対 15万8629票

で賛成多数と見ることができます。

 市長と市議会は結果を尊重する義務を負いますが、どのように考えるのでしょうか。調査のあり方としても疑問を感じる政治的な設問設計ですが、驚くのはそれだけではありません。

投票用紙イメージ

投票用紙イメージ(浜松市ホームページより)

有効パターンよりも無効パターンの方が多い回答方法

 今回の住民投票の投票総数は36万256票、投票率は市長選とほぼ同じ55.61%でした。

  • 有効 32万2600票
  • 無効 3万7656票(無効投票率10.25%)

 無効投票率の10.25%というのはとても高い数字で、過去に10%を超えたのは2014年の橋下徹市長の出直し市長選など数えるほどしかなく、通常の選挙では無効票率は2%程度です。

 なぜそのような結果を招いたのか、投票用紙を見ていただければ一目瞭然だと思います。ずばり、紙の投票なのに分岐させて2段階で回答させるという手法を選んだからです。

 有効回答となるパターンは以下の3つしかなく、それ以外のパターンはすべて無効となります。

  • (パターン1)3区案(天竜区・浜北区・その他の5区)での区の再編を平成33年1月1日までに行うことに賛成
  • (パターン2)3区案には反対だが、区の再編を平成33年1月1日までに行うことに賛成
  • (パターン3)3区案に反対で、区の再編を平成33年1月1日までに行うことにも反対

 浜松市のホームページでも、くどいくらいに「有効投票となるのは、上記の3つのパターンのみです」と強調していますが、やはり無効票の大量発生を防ぐことはできませんでした。

警告を繰り返す浜松市のホームページ

ネット投票なら分岐も簡単で集計は瞬時に終わる

 設問設計自体が複雑でしたが、民意をきちんと測りたいという趣旨ならば頷けなくもありません。しかしそのために無効票が増えてしまっては元も子もありません。民意をきちんとくみ取るには、それ相応の仕組みづくりが必要です。

 少なくとも、インターネット投票なら、1問目に「反対」と回答した人にだけ次の選択肢が表示されるようにするなどの分岐は簡単に行えますし、無効なパターンの投票はそもそも排除することができます。そしてどれだけ複雑な回答方式であっても、集計は一瞬で終わります。

高輪の新幹線の駅名のように、「人に聞くだけ聞いて勝手に決めます」という態度は、両者間の関係を大きく損ないます。住民の暮らしに寄り添い、かつ効率的な行政サービスを提供するために、時間をかけて理解を深め、合意形成してく必要があるのではないでしょうか。

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