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ホストの売掛金は、回収不能でも課税対象になる? 豪快にシャンパンを開けて内観調査する女性税務調査官の姿も…

集英社オンライン / 2024年3月13日 20時1分

夜職の雄、ホスト。女性人気を集めるための自己投資が必要不可欠な職業である彼らの納税事情を、夜職の案件を取り扱う税理士法人松本と紐解いていく。(全4回の3回目)

ホストクラブへの税務調査は女性が行なう?

ホストクラブのホストとして働く彼らは、店のオーナーと業務委託契約を結んでおり、キャバクラ嬢と同じく個人事業主だ。当然ながら、適切に確定申告する必要がある。

ホストは女性人気を集めるために自己投資が欠かせない職業だ。キャバクラ嬢の美容整形代と同様に自己満足と捉えられ、経費となるかグレーなものもあるというが、衣装代、化粧品代、ヘアセット代、名刺代、さらには営業活動に不可欠な携帯電話使用料などが経費として認められる。これらはすべて、商品である“ホスト”自身の売上を支えるための必要経費なのだ。



さらに、顧客との関係性を深めるための接待交際費も経費となりうる。同伴やアフターでの食事代、カラオケ代、旅行代、プレゼント代なども経費として認められる可能性がある。これは、ホストというビジネスが単にお酒を提供するだけではなく、顧客との関係構築が重要視されるためだ。

※写真はイメージです(Shutterstockより)

ちなみに、ホストクラブに対して行なわれる税務署の内観調査では、女性調査官が客として潜入することもあるという。あくまで秘密裏に実施されるため、女性調査官もバレないように本気で楽しみ、豪快にシャンパンボトルを開けていく。その結果、ホストクラブ側も気づかず、後日、税務調査が入ったときに「いつ誰が調査したの?」と呆気にとられるのだ。

実際にホストが大好きで、ホストクラブへの税務調査で成績をグングン伸ばす女性調査官もいるというが、調査で使われるホストクラブでの飲み代はもちろんすべて税金から捻出される。そう考えると首をかしげたくもなるが、これもまた税務署員の立派なお仕事なのだ。

SNSをやりたくないホスト

ホストは女性調査官による直接的な内観調査だけでなく、例えば、テレビ出演時の映像から税務調査されることもある。

人気ホストがシャンパンタワーにシャンパンを注ぎ込み、その後に店から現金で報酬をもらう様子がテレビで放送され、それを見た税務署がじっくり検証して内観調査する手間が省けた、という事例もあった。

そのため、メディア出演を頑なに拒否するホストもいるが、一方で知名度と人気は密接に関係するため、自分の活動をXやInstagramなどのSNSでさらす必要がある。このご時世、客の多くがホストのSNSを見て来店するため、ホストクラブ側も所属するホストに対して、積極的にSNSで発信するように推奨しているのだ。

しかし、税務署もまたホストのSNSをチェックしており、税務調査で言い逃れされないよう、それらの情報を証拠として残しているという。

財務省・国税庁

例えば、SNSで高級車と自分の写真を投稿するホストもいるが、これも経費として認められるのだろうか? 風俗業・キャバクラ・ホストクラブなど夜職の案件を取り扱う税理士法人松本に見解を聞いた。

「SNSに投稿するだけなら特に問題ありませんが、高級車等を仕事以外でも使っているのであれば、車両代金の全額を経費として計上するのは説明が難しくなります。走行記録を管理した手帳を作ったり、プライベート用の別の車を保有したり、仕事以外で使った分を客観的に説明できるような資料作りが必要になります。

また、収入が少なくて確定申告をしていなかったり、税金を払いたくないから怪しい経費を多く入れて極度に所得を抑えていたり、収入と買い物が釣り合っていない場合などは、税務署が見逃さないと思います。

高級車を購入できるお店は限られていますし、税務署が販売元に確認すれば、誰が何を購入したかはすぐバレます。購入後に名義を変えたとしても、車検証があるので、現在の所有者はすぐわかる。言い逃れはできません」

ホストが抱える売掛金のリスク

昨年、世間を大いに騒がせたが、ホスト業界では「売掛金」が問題視されている。いわゆる「ツケ」であり、飲み代をまとめて後払いするシステムである。

例えば、ある顧客がホストクラブで数回にわたってサービスを受け、その都度支払いをせず、一定期間後にまとめて請求されるケースがこれに当たる。ホストクラブにとっては「債権」となり、法的に代金受け取りの権利を保有することになる。

この売掛金のシステムは、これまでしばしば問題を引き起こしてきた。ホストクラブは顧客、特に支払い能力に疑問がある若い女性に対して、高額な売掛金を抱えさせることがあるからだ。その顧客が支払い不能になった場合、悪質なホストクラブでは、女性に闇金融や風俗店を紹介して返済をうながすことがある。

そもそも、売掛金は税務的にどのように扱われるのか? 税理士法人松本の見解は以下のとおり。

「基本的には所得の計算においても、消費税の計算においても、現金売上か売掛金かは関係なく、一律に税金が課せられます。

問題は売掛をした際の代金がその顧客から回収できなかった場合です。貸倒損失として経費にでき、消費税を差し引くこともできますが、この立証がなかなか簡単ではありません。

一般的には1年基準(ワンイヤー・ルール)により経費にできますが、通常は経費に落とす前に申告期限が到来します。そのため、お店やホストは代金を回収できていない売上に対し、先行して税金が課されます。

お店やホスト自身も資金ショートを起こすことが多く、彼らにとっても売掛金を回収できないことは死活問題となるため、この問題はさらに複雑化しています」

ホストの中には、まだ入金されていない売掛金も売上としてカウントし、SNSなどで「売上1000万円!」などとアピールする者もいる。売掛金が回収不能となるリスクがありつつも、若いホストたちはそれでも見た目の数字にこだわってしまうのだ。

ホストクラブにおける売掛金のシステムは、顧客だけでなくホストをも、経済的、心理的に脅迫する可能性がある。現在、ホスト業界の自主規制という自助努力で変わりつつあり、実際に売掛金廃止を掲げるホストクラブも出てきたが、このシステムが完全に撤廃されるかどうかはまだわからない。

税務当局も、昨今の世間の注目を鑑みて、ホスト業界の申告内容に注目している可能性が高い。今年から厳しい目が向けられるならば、正確な経費計上、的確な売掛金管理がより一層、重要になるだろう。

取材・文/丸山ゴンザレス 取材協力/税理士法人松本

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