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3期連続ミステリー!「月9=王道ラブストーリー」の公式が崩壊した理由

集英社オンライン / 2022年6月20日 15時1分

「月9=王道ラブストーリー」の公式が崩れつつある。1月期の「ミステリと言う勿れ」を皮切りに7月期には公正取引委員会を舞台にした「競争の番人」がスタートするなど、3クール続けてミステリーものが放送される。令和の月9枠は、どんな変化を見せようとしているのか?

王道系ラブストーリーの代名詞ともいえる「ドラマ月9枠」。歴代の月9ドラマを振り返ってみると、織田裕二主演「東京ラブストーリー」(1991)や石田ひかり主演「あすなろ白書」(1993)、そして木村拓哉主演「ロングバケーション」(1996)など、そのほぼすべてがラブストーリーだった。

しかし、月9における王道系ラブストーリーは「突然ですが、明日結婚します」(2017)が最後。それ以降は、山下智久・新垣結衣主演「コード・ブルー」(2008-2017)シリーズや、窪田正孝主演「ラジエーションハウス」シリーズ(2019-2021)などをはじめとする医療ものが目立つほか、相葉雅紀主演「貴族探偵」(2017)やディーン・フジオカ主演「シャーロック」(2019)など推理ものも多い。



月9といえば王道ラブストーリー、ともいえるセオリーが通じなくなってきているのだ。

令和において、月9枠はどのように変化しようとしているのだろうか。その歴史を振り返る。

月9=王道ラブストーリーの礎

先に挙げた「東京ラブストーリー」や「ロングバケーション」のように、月9といえば王道ラブストーリーの印象が強いだろう。

元々は、1987年に放送されていた「アナウンサーぷっつん物語」(1987)「ギョーカイ君が行く」(1987)などの、いわゆる業界ドラマから月9の歴史は始まっている。テレビ局の裏側を描いたドキュメンタリータッチのドラマシリーズは、現職のアナウンサーが本人役で出演したり、実際に放送中の他番組(「笑っていいとも!」など)とコラボレーションしたりなど、さまざまな試みをしていた。

その後、1988年〜1990年にかけて、青春ラブコメやトレンディドラマの波がやってくる。「君の瞳をタイホする!」(1988)「同・級・生」(1989)「キモチいい恋したい!」(1990)などが代表例だ。

この流れを受け、1991年に放送された「東京ラブストーリー」や「101回目のプロポーズ」などが、磐石な「月9=王道ラブストーリー」のイメージを形作った。放送から約30年経つ現在でも語り継がれる名作揃いである。「月9ドラマといえば?」と問われて思い浮かぶ定番ドラマは、1990年代を中心に放送されていたことがわかる。

流れに待ったをかけた2000年代の月9

1990年代に形成された王道ラブストーリーの流れに、待ったをかけたドラマがある。その1つは、2001年に放送された「HERO」だろう。木村拓哉、松たか子主演のいわゆる”リーガルもの”として人気を呼びシリーズ化、後に映画にもなった名ドラマである。

「HERO」に関しては恋愛要素がゼロではなく、検事・久利生公平(木村拓哉)と担当事務官・雨宮舞子(松たか子)との関係性を描く場面もある。しかし、基本的には起こる事件に向き合い解決へと導く、リーガルものの原型を体現したドラマだ。

このドラマを皮切りに、2002年放送の「人にやさしく」や2003年放送の「ビギナー」など、恋愛要素を主軸に置かないホームドラマや青春群像劇が目立つようになる。

そうは言いつつ、2003年放送の「東京ラブ・シネマ」や「愛し君へ」(2004)「プロポーズ大作戦」(2007)などのラブストーリーが多く生まれたのもこの頃だ。コメディ要素が強めになったり、病気や障がいなどのテーマが絡んだり、在日外国人との関係性を描いたりなど、純粋なラブストーリーとは若干違ったものを目指す工夫も感じられる。

2000年代は、1990年代からの流れを受けたラブストーリー路線と、リーガルものを始めとする異ジャンル路線が入り混じった年代と言えるかもしれない。

ラブストーリーに取って代わる新たな鉄板ジャンル

さて、そんな2000年代を受けて、現在の月9はというと、医療ものや推理・ミステリーものが増えてきている。

医療ものについては「コード・ブルー」や「ラジエーションハウス」などの人気シリーズのほか、上野樹里主演「監察医 朝顔」(2019〜2021)や波瑠主演「ナイト・ドクター」(2021)など、新たなブームを予感させるドラマも現れた。

そのほか、新月9のジャンルとして確立しそうなのが推理・ミステリーものである。「貴族探偵」や「シャーロック」(2019)を始め、竹野内豊主演の「イチケイのカラス」(2021)、そしてなんと2022年は「ミステリと言う勿れ」「元彼の遺言状」に続き、7月期には公正取引委員会を舞台にした「競争の番人」がスタート。3クール連続でミステリーものが続くのだ。

ドラマにおいて恋愛要素は不可欠と言えるほど、いわば鉄板のネタでもあった。それが、医療ものやミステリーものに取って代わられようとしている。月9枠において、いったい何が起こっているのか。

考えられる点として「時代の変化」と「ミステリーもののヒット」の2点を挙げたい。

1. 時代の変化
若者の恋愛離れが進んでいる。こう一言で書くと、あまりにも定型化しすぎだろうか。「若者の恋愛離れに関する一考察:恋人探しにみる先送り行動」(西村智 2016)を見てみると、人生における最優先事項は恋愛に限らないと考える若者たちの生態が、実によくわかる。

こちらの論文によれば、18歳〜35歳男女のおよそ8割が「いずれは結婚したい」とアンケートに回答していることがわかる。まったく恋愛に興味がないわけではなさそうだが、交際していても結婚に踏み切れない、もしくは交際すらしていないパターンが目立つという。結婚や出産・育児を視野に入れた際の経済的事情により、恋愛そのものを遠ざける例もあるそうだ。

王道のラブストーリーが世間に受けた1990年代は、男女ともに「早く結婚して家庭を築く」が普遍的なゴールとみなされる向きもあった。人生における恋愛の優先順位が高かったからこそ、時代を反映したラブストーリーが世間に受け入れられていたのかもしれない。

そう考えると、令和の時代にラブストーリーが受けにくいのも、推して知るべしといったところか。

2. ミステリーもののヒット
上記に挙げた時代の変化と合わせ、もう1点考えられるのが「ミステリーもののヒット」である。

月9枠とは異なるが、TBSドラマ「最愛」(2021)のコアなヒットは記憶に新しい。岐阜県の白川郷を舞台のひとつとしたサスペンスドラマで、放送されるごとにSNS上で考察合戦が繰り広げられた。ロケ地をめぐる、いわゆる”聖地巡礼ツアー”まで企画されたほどの人気ぶりだった。

また、同じ月9としては、菅田将暉主演で同名漫画を原作とする「ミステリと言う勿れ」のヒットにも触れておきたい。主人公・久能整の冷静な洞察力と、淡々としながらも人の心を温かくする名言の数々に、同じくSNSでは好評の意見が目立った。

ラブストーリーにおいて感情の機微を追うのと同等、いやそれ以上に、ドラマを見ながら謎解きをし、SNSで考察をシェアする一体感が重視される時代なのかもしれない。

これからの月9に寄せる期待

今後も月9におけるミステリーものの流れは続くと思われる。医療もののヒット作が出れば風向きは変わってくるかもしれないが、どちらにしろ、改めて純愛ラブストーリーが受ける時代が来るのは、もう少し先になりそうだ。

文/北村有

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