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〈ニチガク・1000万円払った生徒もいた〉「参考書が年末にごっそりなくなりました」前社長トンズラ前後に起きた不審すぎる動きに警察も注目  

集英社オンライン / 2025年1月11日 7時30分

〈ニチガク破綻〉少子化が原因じゃなかった!社長交代は社内でも極秘におこなわれ、前経営者はトンズラ…経営破綻“本当の理由”とは 〉から続く

東京・新宿区の大学受験予備校「ニチガク」を運営する日本学力振興会で、1月4日の経営破綻の公表前に参考書など備品の一部がなくなっていたと関係者が証言した。同社の破綻を巡っては昨秋不審な社長交代劇があり、授業継続を放棄した理由やその時期の判断にも疑問の声が上がっている。

【画像】破綻する前にトンズラ…昨年10月まで社長だったB氏

合格率92.8%の謎

1月10日に東京地裁に自己破産を申告したニチガク。同社の経営に絡んでは、長年日本学力振興会のトップを務め「多くの生徒を私学トップ校に推薦入試で合格させた」と業界でみられていたA氏から、同社のやり手営業マン出身で実力者だったB氏に昨年4月1日付で代表取締役が交代している。

A氏から実権を奪ったと社内外でみられていたB氏は、傾いていた経営を立て直すため「メディカル医進館」と呼ぶ医学部進学コースの拡充を計画。ニチガクの別のビルを2階から5階まで借り切り、充実した設備で新たな体制を整えた。

しかし「その後も資金繰りの悪化は止まらず、この設備投資が過剰で経営をさらに圧迫したとの見方があります。この投資をしてから1年もたたずに経営が破綻したわけですから」と、取引先の関係者は指摘する。

B氏は就任からわずか半年後の10月1日付で、経営経験が全くないとみられる営業出身のC氏に代表取締役を交代している。ところがこの社長交代は経営が破綻するまで社内でも秘密にされていた。(♯2

ニチガクのホームぺージでは社長はB氏だと今も掲載されており、同社の対外的な説明は信用できないとの声が強まっている。さらに社内関係者が指摘するのが、予備校の命ともいえる合格実績の不審さだ。経営には携わっていない同社関係者が話す。

「例えば、メディカル医進館のホームページに出ている2024年3月のものとする『最新大学合格実績』の一覧は、東大をはじめ国公私立大の医学部に第二志望までを含めると延べ288人が合格したと表示され、第二志望までの合格率は92.8%に達したと誇っています。

でもこれはどう見ても過大な数に感じます。例えば今年度、メディカル医進館に在籍していた生徒はおそらく30人前後です。一堂に集められた席にいたのがその規模だからです。
ニチガク側の人から『君たちの班の他に2つの班がある』と聞かされた塾生もいるのですが、その“別の班”の受験生なんか見たことがないと、塾生たちは話していましたね」

250万どころじゃない医学部志望生の負担

このメディカル医進館は、塾生や保護者の受講料負担は大きかったという。かつて塾生だった友人がいるというXさんが話す。

「私の友人は通っている時は気づかなかったものの、医進館は割高だったと後で知ったみたいです。例えば、医学部受験生は個別指導を頼む機会が多いのですが、これが2時間1単位で4万円かかります。医進館では前払いで最低でも50時間分、つまり100万円の受講料を払って個別指導を受けていくのですが、この額は相場の2倍くらいです。

さらに友人の話では、個別指導料を100万円分払っても、塾側から『あなたは今のままでは合格はおぼつかない。もっと集中的に個別指導を受けなさい』と指示され、どんどん受講することになって数か月で使い切り、また追加購入することを繰り返したといいます。

結局、入学金や集団での授業、その他も含めれば、塾生は1年間に最低でも500万円、多い人は1000~2000万円払っていたそうです。破綻が報じられた直後、医学部志望の高校2年生が『前払いで僕の場合は250万ちょっとを一括で払った』とメディアに話して話題になりましたが、そんなもんじゃないです」(Xさん)

見慣れない男性が医進館内をスマホで動画撮影している

これだけの受講料を支払った医学部受験生たちも、受験直前にふいに破綻の知らせを聞かされたことは同じだ。

「医学部受験生は一人当たりの収益がかなり多く、たとえ数十人でも昨年春の開講時に会社は多くの売り上げを手にしたはずです。それが1年もたたずに破綻しなければならなくなるとは、どういう経営が行なわれていたのか」と別の予備校関係者はいぶかしむ。

破綻に絡んでは別の不審な状況も明らかになっている。破綻方針が公になる前に、ニチガクやメディカル医進館の備品が持ち出されていた疑いがあるというのだ。現職の同社関係者が話す。

「昨年は12月30日が最後の開館日で、塾生らは自習も含めて建物内で勉強をしていました。ところがその日の昼までに、医進館にあった“赤本”と呼ばれる各大学の過去問集が本棚からほとんどなくなったのです。赤本はこの時期の受験生が最も頻繁に使う参考書で、これが本棚からなくなったことは受験生にはショックだったでしょう。この出来事がきっかけで経営危機がいよいよ本格化したのではないかという噂が飛び交いました。
そして案の定、今年の最初の営業日である1月4日朝、破綻方針がニチガクの建物に貼られた紙で知らされたのです」(関係者)

別の同社関係者は「今から思えば、11月ごろから見慣れない男性が医進館内をスマホで動画撮影していると話題になっていました。また、すでに代表取締役を退いていたB氏はそのことを隠したまま12月になると頻繁に医進館を訪れ、また別の見慣れない男性を伴っていたのを多くの人が目撃しています」と話す。

会社側からは弁護士に、会社整理の依頼が遅くとも昨年12月初旬には行なわれている。こうした破綻劇を主導したとみられるB氏は、破綻方針公表後は電話に出ず、自宅のインターフォンにも応答がない。

B氏は年末に医進館で何をしていたのか。赤本はなぜ破綻公表前に本棚から消えたのか。関係者は「日本学力振興会や関連会社間の資金の流れについて警視庁も関心を持っている。会社整理の作業と並行して捜査対象に浮上する可能性がないか、関係者は注視している」と話す。

受験生を苦境に追いやり、予備校業界全体への信用にも響きかねない問題の解明はこれからだ。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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