1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. カルチャー

滋賀県の個別指導塾が毎年、算数オリンピックでメダリストを輩出できる理由

集英社オンライン / 2022年7月26日 10時1分

毎年全国から5000名以上の子どもたちが参加する算数オリンピックで、多くのメダリストを輩出している塾が滋賀にある。受賞している子どもの多くは公立の小学校に通う普通の子だという。その塾で使われている教材が話題となり、今年4月に2冊の『ヒマつぶしドリル』として発売され、異例の5万部突破の大ヒットとなった。この著者で「りんご塾」代表の田邉亨氏に子どもの算数の力を伸ばす秘訣をお聞きした。

算数が苦手な子どもも夢中になる“アレ”がヒント

――ひまつぶしドリルが累計5万部発行され大好評です。大人がやっても解き応えがある楽しい内容ですが、どんなきっかけで生まれたのですか?

最初は街の小さな塾としてスタートしました。入塾する子たちの多くは算数が苦手な子が多かったので、夏休みに入るとまずは宿題の手伝いから始めていたんです。



夏休みの宿題に使われるワークブックには、ウォーミングアップとしてパズルやクロスワードのような問題が収録されているのですが、勉強が苦手な子もそういった問題は夢中になってやるんですよ。そこからヒントを得て、『ヒマつぶしドリル』のような問題ができました。

――算数が苦手な子が興味をもったものがヒントになっていたんですね。

はい。現在は算数オリンピックの実績などを評価いただき、算数が得意な子、好きな子の入塾者が多いですが、同様の課題を楽しそうに解いています。子どもの「もっとやりたい!」という気持ちを引き出す教材になっているのかなと思いますね。

なぜ算数オリンピック金メダリストを輩出できるのか

――元は算数が苦手な子のために考えられたドリルが、今や算数オリンピック入賞者を出す重要な教材になっています。なぜこのような成果が生まれたのでしょうか。

ずばり、子どもの興味をひきつけ、思考力を鍛える要素があるからだと思います。

『ヒマつぶしドリル』の問題は、中学以降の方程式を使うと簡単に解けるものもあります。しかし、子どもはその知識がありませんから、『どうしたら解けるのだろう』と考えを巡らせます。そういった訓練を無意識に、苦に感じない形でできているからではないかと思います。

『ヒマつぶしドリル』の問題例(学研プラス)

りんご塾では算数オリンピック対策を年中児からスタートしていますが、小学校中学年レベルの『ヒマつぶしドリル』を、低学年くらいの子が解けてしまうこともあります。楽しくゲーム感覚で学びつつ、思考力を鍛えられているからこそだと思います。

――実際の授業ではどのように取り入れられているのですか?

80分の授業のうち、最初の30分間でこのドリルにあるような問題を行います。その後、通常の算数の授業を30分、最後の20分で立体のブロックを使った問題に取り組みます。

――80分のうち、いわゆる普通の授業は30分間なのですか?

はい。最初の30分間は準備運動的に子どもの「思考力」を働かせる問題に取り組み、次にしっかりと数学的な「知識」を入れる。そして最後にブロックを手で動かして「試行錯誤」して終わる。この3ステップを意識した構成になっています。

最後にブロックで遊び感覚で空間認識能力を養う問題に取り組み、「解けて楽しかった」という思いで帰ると、また次の授業も楽しみになるんです。「塾に行かなければいけない」ではなく、「早く塾に行きたい」という思いが生まれるんですね。

算数の能力を伸ばすには、子どもが「もっと算数をやりたい」と思う環境や授業内容にするのがポイントです。

――りんご塾では積極的に飛び級制度も取り入れているそうですが、それも関連しているのでしょうか?

学年の区切りは、学習指導要領で便宜上設けられているものです。もっとできる子にはやらせてよいと思います。できる子が放っておかれてしまった結果、算数の授業をつまらないと感じるのはもったいないですよね。

私たちは、そういった「吹きこぼれ(周りよりもできるあまり、放っておかれる子)」たちが楽しく学べるように、できる子にはどんどん飛び級をさせています。

算数の力を伸ばす秘訣は全国模試で「100点を取らせること」

――少しずつメソッドが見えてきました。そのほか、算数の力を伸ばすポイントはありますか。

私が心がけているのは、中程度の難易度の全国模試で子どもたちに100点を取らせることです。決定的に自信をつけるには、100点を取る経験をさせるのが一番手っ取り早いです。

――それはどういうことなのでしょうか?

子どもたちにはまず、100点で達成感を味わい、確固たる自信をつけてもらいます。

しかし毎回100点というのはなかなか難しく、97点、94点の時もあります。全国模試では、たった1問ミスするだけで大きく順位を落とします。1位の次が20位や50位、なんてこともあるんです。

100点の達成感を味わうからこそ「1問の重さ」を知り、見直しの重要さに気付けます。100点自体が重要なのではなく、全国で1位になるという実績や経験が大事になります。

これは算数オリンピック対策に限らず、受験対策や日々の学校のテスト対策にもつながる重要な経験、意識だと思います。

――なるほど。でも、100点を取るのはなかなか簡単なことではないですよね。

そこでさっきの飛び級が効いてきます。あくまで比喩表現ですが、100点分の知識(その学年分の知識)しかもっていない子より、200点、300点分(自分の学年より上の学年の知識)をもっている子の方が、テストで100点を取れる可能性は高いです。

なぜなら、知識を多くもっている分、問題を解く方法をたくさんの中から選べるからです。その方がより心に余裕が生まれ、ミスも少なくなります。子どもが余裕をもって問題に臨める状況にすることも、我々の指導で意識していることです。

『ヒマつぶしドリル』は思考力を伸ばす国語の問題も(学研プラス)

カギは子どものブームを認めること

――算数オリンピック入賞、まではいかずとも、子どもの算数の成績を伸ばしたいと思う保護者は多くいます。ご家庭での関わり方についてポイントはありますか?

算数を伸ばすことを考える前に、語彙力を伸ばすことを考えましょう。

子どもが読書嫌いになるのは、漢字が読めないからという場合が多いです。「まだ習っていないから」という理由で教えないのはもったいない。学年に関わらず、本人が興味をもったものはどんどん難しい漢字や言葉を教えてあげてほしいと思います。

語彙力が増えていけば、興味のある文献や図鑑をどんどん読み込むし、問題文にもつまずかずに取り組めるようになります。

また、子どもが夢中になっているものやその時のブームを否定せず見守ってあげてほしいですね。

子どもの興味は移り変わりが早く、「以前は恐竜が好きだったのに、今は電車に夢中になっている」なんてこともあると思います。年齢とともに子どもの興味は変化します。

親としては「あんなに買ってあげたのに」と思うかもしれませんが(笑)、その興味を大事にしてあげてほしいなと思います。何よりも「熱中」する体験が大切です。

何かの「専門家」になれるくらいに物事に夢中になった経験がある子は、きっかけさえあれば算数はもちろん、受検勉強にも夢中になってくれると思いますよ。

――『ヒマつぶしドリル』をやらせるのも効果はありますか?

無理矢理やらせるのではなく、寝転びながらやるくらいの感覚で手に取っていただきたいですね。装丁も中身もドリルっぽくない雰囲気になっているので、ご家庭で取り入れる際も「勉強するよ!」という雰囲気を作らず、まずは気軽にやっていただけたらと思います。

算数と国語の力がつく 天才!! ヒマつぶしドリル ちょっとやさしめ

田邉 亨 (著), 伊豆見 香苗 (イラスト)

2022/4/21

¥1,210

単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 143ページ

ISBN:

978-4053054265

楽しく読んで遊んでいたら,いつの間にか算数と国語の力がついてしまうドリル。その確かな指導力で,公立の小学生に算数オリンピックの金メダルを受賞させるりんご塾。そこで子どもたちが学んでいるプリントを市販化。楽しくヒマつぶしして頭良くなろう!

算数と国語の力がつく 天才!! ヒマつぶしドリル ふつう

田邉 亨 (著), 伊豆見 香苗 (イラスト)

2022/4/21

¥1,210

単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 147ページ

ISBN:

978-4053054272

楽しく読んで遊んでいたら,いつの間にか算数と国語の力がついてしまうドリル。その確かな指導力で,公立の小学生に算数オリンピックの金メダルを受賞させるりんご塾。そこで子どもたちが学んでいるプリントを市販化。楽しくヒマつぶしして頭良くなろう!

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください