160光年以内の超新星爆発は危険? 従来想定より遠くても大量絶滅発生の可能性
sorae.jp / 2023年5月1日 21時0分
イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のIan Bruntonさんを筆頭とする研究チームは、これまで知られていなかった超新星爆発のリスクを発見したとする研究成果を発表しました。研究チームによると、従来の想定と比べて6倍ほど遠くで発生した超新星も、惑星の大気に重大な影響を及ぼす可能性があるようです。
質量が太陽8個分以上の大質量星や白色矮星を含む連星系で起きるとされる超新星爆発では、強力なガンマ線などの電磁波や高エネルギー粒子が放出されます。2003年に発表された研究成果によると、もしも地球から約26光年(8パーセク)以内で超新星爆発が起きた場合、オゾン層の破壊をともなう大気への影響によって地球の生命は壊滅的な被害を被ると推測されています。
今回、研究チームはアメリカ航空宇宙局(NASA)の「チャンドラ」「ニール・ゲーレルス・スウィフト」「NuSTAR」、欧州宇宙機関の「XMM-Newton」といった観測衛星のデータをもとに、大マゼラン雲で発生した超新星「SN 1987A」をはじめ1970年~2019年にかけて検出された31件の超新星とその余波を分析しました。
研究チームによる分析の結果、超新星までの距離が約160光年(50パーセク)離れていても、惑星は致命的な影響を受ける可能性が示されたといいます。仮に惑星の環境が地球に似ていた場合、オゾン層の大半を失ってしまう可能性があるようです。従来の研究で示された“危険距離”は前述の通り約26光年でしたから、およそ6倍遠い超新星でも生命に被害をもたらしかねないことになります。
研究チームによると、新たに判明したリスクはX線によってもたらされます。超新星を起こした天体の周囲に濃いガスが存在している場合、爆発で生じた衝撃波とガスの相互作用によって大量のX線が放出されます。X線の放出は数十年間続く可能性があり、到達したX線によって惑星の大気化学が大幅に変化する結果、大量絶滅を引き起こすのに十分な影響を被る可能性があるといいます。
幸い、今の太陽系周辺にはこのような被害をもたらすおそれのある星は存在していないといいますが、過去の状況はまた違っていたかもしれません。世界各地で採取された鉄の放射性同位体(超新星爆発で放出された後に地球へ降り注いだと考えられている)などの証拠をもとに、今から約200万~800万年前、地球から約65~600光年の距離で超新星が発生したと推定されていますが、この距離は今回の研究で示されたX線の“危険距離”と一部が重なっているからです。
チャンドラX線観測衛星を運用するチャンドラX線センターによると、現在、太陽系は高温・低密度のガスが低温のガスに囲まれている「ローカルバブル」(Local Bubble。局所泡、局所バブルとも)と呼ばれる幅数百光年程度の領域に位置しています。ローカルバブルは領域の中心で発生した一連の星形成活動と超新星爆発によって今から約1400万年前に形成されたと考えられていますが、過去にローカルバブルで超新星を起こした大質量星は太陽系に近かったため、当時の地球は今よりも高い超新星のリスクに晒されていた可能性があるといいます。
【▲ チャンドラX線センターによる今回の研究成果の解説動画(英語キャプション)】
これらの証拠は過去の地球で発生した大量絶滅と超新星爆発を直に関連付けるものではありませんが、太陽系誕生以来、超新星のような爆発現象が地球に影響を及ぼしてきたことを示唆しているといいます。
研究に参加したイリノイ大学のBrian Fieldsさんは「星のライフサイクルの理解に留まらず、宇宙生物学、古生物学、地球惑星科学といった分野にも影響を与えることから、超新星由来のX線に関するさらなる研究には価値があります」と、今後の研究の重要性を述べています。
Source
Image Credit: Science: NASA/CXC/Univ. of Illinois/I. Brunton et al.; Illustration: NASA/CXC/M. Weiss Chandra X-ray Center - New Stellar Danger to Planets Identified by NASA's Chandra Illinois News Bureau - New stellar danger to planets identified by NASA'S Chandra program Brunton et al. - X-Ray-luminous Supernovae: Threats to Terrestrial Biospheres文/sorae編集部
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