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超大質量ブラックホール周囲でも生命が存在できる可能性

sorae.jp / 2019年6月24日 21時29分

ハーバード大学のManasvi Lingam氏らによる研究チームは、生命にとっては厳しい場所であるとされてきた銀河中心核の環境を再検討した結果、超大質量ブラックホールの周囲において生命の存続に適したゴルディロックスゾーン(ハビタブルゾーン)が存在し得るとする研究結果を発表しました。成果は論文にまとめられ、2019年5月24日付で発表されています。

銀河の中心には太陽の数百万倍の質量を持った超大質量ブラックホールが存在するとされており、その周囲にはブラックホールに引き寄せられたガスや塵などが集まって高速で回転する降着円盤が形成されています。

超大質量ブラックホールの想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)

降着円盤はX線や紫外線といった強力な電磁波を放射しており、特に活発なものは活動銀河核やクエーサーとも呼ばれます。その電磁波は周辺の天体に大きな影響を与えられるほど強く、天の川銀河に存在するとされる超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」の場合、中心からおよそ3200光年以内に存在する惑星の大気を奪い取れるとされてきました。

Lingam氏らの研究チームは、超大質量ブラックホールや降着円盤などから成る銀河中心核をシミュレートするためのコンピューターモデルを使い、銀河中心の環境を詳細に検討しました。その結果、従来の研究では銀河中心核の悪影響が過大評価されており、実際に電磁波のダメージが及ぶのはおよそ100光年ほどの範囲に留まるとしています。

そして銀河中心核の周囲では、電磁波が惑星の大気に及ぼすダメージと、分子を分解して生命に必要な化合物を生み出す効果のバランスが取れる領域として、ゴルディロックスゾーンが存在することも判明しました。いて座A*の場合、ブラックホールの中心からおよそ140光年の距離にゴルディロックスゾーンが存在するとしています。

また、銀河中心核からは可視光線(人の目で見える光)も放射されていますが、天の川銀河のような銀河では中心からおよそ1100光年の範囲内において、銀河中心核からの光によって植物が光合成を行えることもわかりました。直径が数百光年に満たない超コンパクト矮小銀河の場合、光合成が可能な範囲は銀河の半分以上に及ぶといいます。

こうした領域の恩恵を受ける天体の一つが、何らかの理由で恒星系から脱出して恒星間空間を漂っている自由浮遊惑星です。天の川銀河における自由浮遊惑星の数はまだよくわかっておらず、研究によっては数百億に達するとされています。

恒星から離れてしまった自由浮遊惑星に昼は存在せず、永遠に夜が続くことになります。ですが、もしも銀河中心核のゴルディロックスゾーンに運良く留まることができれば、ほどよい電磁波の影響を受けつつ、光合成も可能な光を浴びることができるため、生命を宿せる可能性が出てくるのです。

自由浮遊惑星の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)

銀河の中心付近には超大質量ブラックホール以外にも数多くの天体が存在しており、たとえ銀河中心核のゴルディロックスゾーンにあっても、他の恒星からの影響を受けないとは限りません。それでも、銀河中心核の周辺が従来よりも「住みやすい」場所であることが判明したことで、地球外生命体が存在する可能性もまた高まったと言えるのではないでしょうか。

 

Image Credit: NASA/JPL-Caltech
https://www.livescience.com/65743-black-holes-could-feed-alien-life.html
文/松村武宏

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