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巨大な分子雲から星が誕生する様子を再現したシミュレーション動画

sorae.jp / 2021年5月20日 10時52分

「STARFORGE」による星形成のシミュレーションより(Credit: Northwestern University/UT Austin)

【▲「STARFORGE」による星形成のシミュレーションより(Credit: Northwestern University/UT Austin)】

夜空に輝く星々は、ガスや塵が集まった冷たい分子雲から誕生すると考えられています。分子雲のなかでも特に密度の高い部分が重力で収縮すると、星の赤ちゃんと言える原始星が誕生します。原始星は周囲のガスを集めて成長しつつジェットを噴出し、中心で水素の核融合反応が始まると恒星として輝きを放つようになるのです。

こちらは、そんな星の誕生を再現したシミュレーション動画。太陽2万個分の質量がある巨大な分子雲における星形成の様子が精密に再現されています。動画が始まるとすぐに分子雲の密度に変化が生じ、あちこちに白い点が現れます。やがて、幾つもの白い点からオレンジ色で示されたジェットが活発に噴出する様子がみられるようになったところで、シミュレーションは終了します。左下に表示されているスケールバーの長さは32.6光年(10パーセク)を示していて、左上にはシミュレーション開始時点からの経過時間(1 Myr=100万年)が示されています。

▲STARFORGEによる星形成のシミュレーション動画「STARFORGE: The Anvil of Creation」▲
(Credit: Northwestern University/UT Austin)

このシミュレーション動画は、ノースウエスタン大学やテキサス大学オースティン校などの研究者らが開発した「STARFORGE」と呼ばれる3次元磁気流体力学シミュレーション用のフレームワークを用いて作成されました。STARFORGEは「Star Formation in Gaseous Environments」(ガス環境における星形成)を縮めたもので、「星の鍛冶場」(forgeは鍛冶場の炉や鍛冶場そのものを意味する)とも読めます。動画はSTARFORGEによる最初の完全な星形成のシミュレーションを示したもので、シミュレートされた分子雲は研究者から「Anvil of Creation」、日本語で「創造の金床(かなとこ)」と呼ばれているそうです。

STARFORGEは、星の質量がどのようにして決まるのか、なぜ星は星団で形成される傾向があるのかといった、星形成に関する疑問の解明に取り組むために開発されました。シミュレーションでは原始星ジェット、紫外線から赤外線に至る電磁波、恒星風、分子雲の近くで起こる超新星爆発などの影響が、分子雲内部における個々の星形成とともに考慮されています。

ノースウエスタン大学によるとSTARFORGEはすでに成果をあげており、星の質量を決める上で原始星ジェットが重要な役割を果たしていることが明らかになったとされています。シミュレーションから原始星ジェットの影響を除外すると星の質量が大きくなりすぎるいっぽうで、原始星ジェットの影響を考慮すればはるかに現実的な質量の星が誕生するといいます。

開発に参加したノースウエスタン大学のMichael Grudić氏は「星形成を理解すれば、銀河の形成を理解できます。銀河の形成を理解すれば、宇宙が何でできているのかをより理解することができます。人類がどこから来たのか、宇宙においてどのように位置付けられるのかを理解するには、突き詰めれば星の起源を理解することにかかっているのです」と語っています。

 

関連:天の川銀河の中心部で激しい星形成活動が始まる可能性が明らかに

Image Credit: Northwestern University/UT Austin
Source: ノースウエスタン大学
文/松村武宏

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