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他人の私有する林で勝手に木を伐採し持ち去る“盗伐”が横行。被害者は「泣き寝入りするしかない」現実

日刊SPA! / 2024年4月13日 8時52分

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盗伐現場…裏に回ると、表の1列だけを残して伐られていることが見て取れる

◆誰も知らない「盗伐」という犯罪
「盗伐」という言葉をご存じだろうか。他人が所有する私有林に入り込み、勝手に木を伐採して持ち去ることだ。森林窃盗は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」と決められているが、ほとんど見かけ倒しと言っていい。なぜなら、警察も検察も立件しようとしないからだ。

 ある被害者は200本ぐらいの盗伐被害に遭ったのに、「被害本数の出し方は切り株の数であり、切り株が残っていないものは特定できない」と説明され、警察には「スギ丸太7本の窃盗行為」で被害届を出すことになった。この事件は最高裁まで争われたが、執行猶予付きの有罪判決で決着がついた。

 また、別の被害者は盗伐された土地にニンニク畑を作られていた。犯人は見つかったが、被害者の山と隣接した土地を購入していて、「誤伐した」と主張した。この経緯を聴いた警察は「木を伐った人に、残りの山を売ったらどうか?」と提案した。これでは警察が民事に介入するようなものだと抗議すると、「被害者救済として、このような方法もあると説明しただけだ」と回答されたという。

◆被害者が泣き寝入りする理由

『盗伐 林業現場からの警鐘』(新泉社)を上梓した森林ジャーナリストの田中淳夫さんはこう話す。

「勝手に伐採しても発覚までに3年以上経てば時効になる。伐採には重機を何台も現地の山に入れなくてはならないし、素人にできることではない。コストもかかるので、狭い範囲の合法的な森林を伐るだけでは儲からない。そこで許可をもらっていない森林も伐採してしまう。盗伐は、全国で数十年も前から行われていたらしいが、ここ十数年は特にひどくなった。犯人を特定しても、わずかな賠償金で済まされてしまう。有形無形の圧力もあり、被害者はずっと泣き寝入りしてきたんです」

 スギの素材生産数が全国1位の宮崎県は特に被害がひどい。1ヘクタールに生えている60年生のスギ林を全部切って売ったとしたら、宮崎県の場合なら800万円以上になる。5ヘクタールを盗伐したら4000万円以上の売上になるだろう。

 山主への支払いや再造林の費用は出さないのだから、多少の経費を差し引いても数千万円の儲けが出ると想像できる。示談金や賠償金で数十万円程度払っても痛くも痒くもない。

◆50〜60年生のスギ林が丸裸に

『盗伐 林業現場からの警鐘』によると、2017年9月に「宮崎県盗伐被害者の会」を結成し、会長となった海老原裕美さんも、もともと盗伐被害者の1人だったという。海老原さんの両親は0.21ヘクタールの山林を購入し、スギの苗木を植えた。山を購入したのは50年以上前だから、50~60年生のスギ林となっていたのは間違いない。

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