日本の“干し芋”がタンザニアのスーパーに。「アフリカにカルビーを創る」日本人男性の挑戦
日刊SPA! / 2024年7月30日 8時51分
父親は数学者らしく、自分の頭で考える大切さを子供の頃から長谷川さんに叩き込んだ。自分で調べて実験して考えることを重視し、本に書いてあろうと学校の先生が言おうと鵜呑みにするなという教育方針だった。
そのせいか小学校では先生の話を聞いているのが苦手。授業中も授業と関係のない工作に夢中になっているか、たまに授業を聞いていると、先生の発言の間違いを指摘したりする「ちょっと問題のある子供」だった。
火薬に興味を持った中学生の長谷川さん。ある日、爆竹を何箱も買い授業中に火薬を一つ一つ解体した。自宅でこの火薬に火をつけてみたら大爆発して警察騒ぎになる。帰宅した父親は報告を聞いて「竜生の実験だな」と呟いただけで、全く怒らなかった。わからないことは実験せよという父親の教育方針は一貫していた。
その一方で本を読むのが好きだった長谷川少年は、近所の図書館にある本を片っ端から読み、野口英世やパスツールに憧れた。いつか自分も彼らのように世の中を変える優れた研究者になりたいと思い、大学では迷わず生物学を専攻した。
◆日に焼けた青年に魅せられて
育種学を専攻した長谷川さんは、コメの品種改良の研究にあけくれた。大学4年生になり、次々と就職していく同級生を横目に、長谷川さんは進路に悩む。研究は面白い。でも、この先に野口英世が取り組んだようなテーマがあるようにも思えない。世界に出て思う存分に活躍する仕事がしたい。そう思っていた頃に、大学の薄暗い階段の踊り場で長谷川さんの運命を変えるポスターに出合う。
それは、青年海外協力隊の隊員募集の案内だった。褐色の大地を背景にして、日焼けした青年が笑顔で木の苗を持っていた。
「アフリカで農業……。これだ!とその瞬間に決めました」
さっそく隊員に応募し合格するが、農業の実務経験がまったくない長谷川さん。八ヶ岳にある農業大学校を見つけて、1年間農業の実務体験をした後にタンザニアに向かった。
◆「全く役に立たなかった」タンザニアでの隊員時代
1995年、24歳の時に、野菜栽培の協力隊として意気揚々とタンザニアに到着した長谷川さん。
ところが、日本とは風土や自然環境が全く異なるタンザニアで、長谷川さんは苦戦した。雨がよく降る日本と違いドドマは乾燥地域で雨が少ない。四季のある日本と比べ、1年中暖かいタンザニアの土は有機物がほとんど残らない。土づくりを重視する日本の農業知識は、タンザニアでは全く通用しなかったのだ。
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