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インドの電動二輪市場、新興メーカーOla Electricが人気を集める理由

Techable / 2024年3月27日 18時0分

インドにおける電動二輪のシェアはまだまだ少ないものの、近年急進中である注目の市場だ。特に現在伸びているのは、系列会社に配車サービス「Ola Cabs」を持つことでも有名な、電動二輪車メーカーの「Ola Electric」である。

Ola Electricは現在利用者のどのようなニーズを満たしており、また今後はどういった展開をみせていくのだろうか。

バンガロール在住の筆者が、Ola Electricの二輪車に乗っているインド人、もしくは買いたいと考えているインド人へのインタビューもおこなったうえで、考察していく。

伸長するインドの電動二輪市場

インドにおける電動二輪のシェアはまだまだ少ない。2024年2月の電動二輪車普及率は二輪車カテゴリの5.7%にとどまる。

ただ、シェアは小さい一方で、伸び率は大きい。2020年以降の4年間でシェアは約30倍となっている。政府も環境対策に加えて、原油の輸入依存を減少させたい等の思惑から電動二輪の購入に補助金を出すなど、普及の後押しがあり、今後の伸びが期待されている。

電動二輪カテゴリの中では、最近Ola Electricの人気が高まってきている。Ola Electricは、インドでUberと並ぶ配車サービス「Ola Cabs」の親会社ANI Technologiesの子会社として、2017年に設立された企業だ。

同社が最初のスクーターを納車したのは2021年12月だったが、そこから半年足らずの2022年4月には、その月の登録台数1位に。

その後上下はあったが、2023年以降、データが出ている2024年1月まで常に電動二輪カテゴリでトップのシェア(およそ4割)を誇る。期待の新興プレーヤーと言えるだろう。


業績の方はというと、営業外収益も含む売上高は2021年度(2021年4月から22年3月)が45.6億ルピー(約83億円)だったのに対して、2022年度は278.3億ルピー(約506億円)と6倍以上に伸長。

そのぶん赤字も78.4億ルピー(約143億円)から147.2億ルピー(約268億円)と約2倍に拡大したが、Ola Electric側は「製品と売上の拡大による営業費用の増加」と説明している。(参考)

新進気鋭な電動二輪メーカーの、今後の伸びにも期待したい。

なぜOla Electricは人気なのか?

バンガロール在住でOla Electricのスクーターを購入している利用者に以前インタビューをした際には、以下のようなパターンでOla Electricを選ぶ人が多いように見受けられた。

・原油価格の高騰によるガソリン代の上昇で「電動」の二輪車が選択肢に入る
・配車サービス「Ola Cabs」で培ったブランド力に加えて、「珍しいデザイン」や「テック感(デジタルを活用した近未来感)」によるユニークさで、Ola Electricが選ばれる

例えば、大学を卒業し公務員試験に向けて勉強中のAさん(22歳・男性)はこう語る。

“ガソリンで走るものよりも電動の方がコスパが良いと考えて電動二輪にしました。同じ距離を1/3以下の価格で走れますし、メンテナンスコストがほぼないからです。その中でOla Electricにしたのは、まずデザインが伝統的でなく、今までにない感じでユニークだからです。それから、スクリーンがついているなどのデジタルっぽさ、テックっぽさです。バイクのスピーカーで音楽を流せるという特徴も特にユニークで面白いと思いました。”

Aさんが述べている通り、Ola Electricのデザインは、一般的なスクーターよりも丸みを帯びており、少しかわいらしい感じだ。このデザインがウケているようだ。

また、タッチパネルがついており、そこでカーナビ操作ができたり、音楽を流したり、乗車モードを変更したりとさまざまな操作ができる。

IT系の会社に勤めるBさん(33歳)はこう語る。

“もともと車を持っていてそれで通勤していたのですが、最近は渋滞もひどいですし、便利かなと思って二輪車を検討しはじめました。長期的にみて電動のほうがコストが安いのと、運転しやすいと考え、最初から電動二輪に絞って検討していました。”

“Ola Electricにしたのは、他のものと比較した時に自分の体格にあっていて快適だったということ、タッチスクリーンがあったりして、デジタルで色々できるところですね。タッチスクリーンは他社でも導入してるところはあります。他社のものも展示場で使ってみたのですが、Ola Electricのほうがよりデザインとしてもきれいでしたし、大きいですし、見やすいと感じました。自分の通勤距離は往復40kmで、Ola Electricはフル充電で80-90km走るので充電の心配も特にありません。”

また旅行会社の会計士であるCさん(23歳・女性)はこう語る。

“Ola Electricに注目したのはまず知名度があったからです。調べてみて、まずデザインが良いと思いましたし、デジタルなどを活用した新しい感じが良いと思いました。”

“Ola Electricはデザインをはじめとして全体的にユニークなんです。自分は「ユニークであること」が好きなので選びました。”

Cさんは続けて、「地方だと保守的な人が多いが、都会の若者はユニークであることを好む人が多いのではないか?」ということを語っていた。

全体傾向はわからないが、実際、まだ電動二輪を買うこと自体がかなり少数派である現時点では、Ola Electricを購入している人は保守派ではなく「ユニークなもの・新しいもの好き」の傾向があると言えるだろう。

大気汚染が気になっているという声も

また少し意外だったのは、電動二輪を購入する理由として「電動の方が環境に良いから」という理由が数人から挙がったことだった。彼らは、決してキレイゴトを言っているわけではない。

例えば、先述のBさん(33歳・男性)は、「電動二輪にした一番の理由は経済性」としながらも、以下のように語っていた。

“(電動二輪を選択した理由の一つとして)大気汚染を気にしているということもあります。みんな結構(大気汚染のせいで)咳をしていますよね…。10年前と比べると、人口も増えていますし、大気汚染もひどくなっていると感じます。今後もっとひどくなるのではないでしょうか。未来のためにも変えていかないといけないと思います。”

先述のCさん(23歳・女性)はこう語る。

“環境のこととランニングコストの安さを考えて、最初から電動を検討していました。”

“(環境のことを気にしているのか?という質問に対して)環境のことは気になります。交通量が多いのでバンガロールでも大気汚染が進んでいて、運転する時はマスクをしないといけないです。運転し終わったあとは、顔が汚れていたりしますし…。それに、人によっては大気汚染でアレルギー症状が悪化する人もいるみたいで…。私は大丈夫なのですが、他の人にとって害になったりするのは嫌だなって思います。”

バンガロールは、渋滞と大気汚染がここ数年で徐々にひどくなっているという。

現地に暮らす人の多くがこれを懸念しており、特に普段から二輪車に乗り外気に触れながら通勤している人は実体験として感じているのである。

結果として、強い危機意識を伴う環境への課題意識が生まれる。大気汚染が進む地域こそ、より切実に「空気をきれいにしたい」と思うライダーが多く、電動二輪も選ばれやすくなりそうだ。

電動スクーターに加えて電動バイクを発売、個性派デザイン揃う

Ola Electricは、これまではスクーターのみの販売だったが、2024年末を目処に4種類のバイク(Ola Cruiser、Ola Roadster、Ola Adventure、Ola DiamondHead)を発売することを2023年8月に発表した。

画像を見る限りでは、個性が強いフォルムのものが多い。以下、それぞれについて、現地の解説記事を参考に筆者がキャッチコピーと解説をつけている。

街乗り向きのOla Cruiser

現地メディアの解説記事には「街乗り向き」と書かれていたが、それにしては個性的で重そうに見える。推定価格は27万ルピー(49.2万円)。

モダンかつ実用的なOla Roadster

この4つの中では比較的「普通」に見える。解説記事でも「実用的」と書かれていた。推定価格は15万ルピー(27.4万円)。

ハードな地形向きのOla Adventure

「ハードな地形向き」とあるだけあり、車高が高そうかつ軽そうに見える。推定価格は30万ルピー(54.7万円)。

未来的なスポーツバイクのOla DiamondHead

新発売の4モデルの中では最も特徴的な形をしている。メディアではテスラのサイバートラックのよう、などとも評されている。推定価格は35万ルピー(63.8万円)。

「実用的」とされているOla Roadster以外は、比較的ユニークな形・用途のバイクが多いように思える。いわゆる「趣味のバイク」なのかとも感じたのだが、Ola Electricのバイクを検討しているというバンガロール在住のインド人に話を聴いたところ、

・燃料費の高騰により、「電動」にメリットを感じる。(趣味利用ではなく)現在の日常利用しているバイクを電動バイクに買い替えたい。
・ただそもそも「電動バイク」が市場にまだ少なく、選択肢があまりない。配車サービスのOla CabsでOlaブランドが有名なことに加え、「電動スクーター」ですでにシェアトップであり、安心感もあるという点でOla Electricが選ばれやすい。
・Ola Electricについては、もともとのOlaブランド自体が有名であること、また電動二輪でもシェアトップの企業であること、またバンガロールには複数店舗がありメンテナンスのための来店もしやすいことなどから、安心だと感じるので、検討したい。

という状況が見えてきた。

二輪車が好まれるステージはまだ続く

一般的に一人あたりGDPが3,000ドルを超えると、二輪車から車へのシフトが進むと言われている。インドの一人あたりGDPは、まだ約2,300ドル。現時点では車(四輪車)ではなく二輪車に乗る人が圧倒的多数派である。

インドは伸びている国ではあるものの、もうしばらくは二輪車が好まれるステージが続くだろう。

また、インドの二輪市場の中でのバイクとスクーターの割合は、2:1程度とバイクが圧倒的に多い。このタイミングでの電動バイク発売は、とても良い戦略のように思える。

電動二輪のトップランナーである、Ola Electricが電動バイクの発売を発表したことは、二輪業界に大きな電動シフトをもたらす引き金になるのだろうか。

インドにおいて、今後どんどんエンジンバイク大手からも電動バイクが発売され群雄割拠となるのか、それともOla Electricがひとり勝ちとなるのか、はたまた電動バイク市場はそこまで盛り上がらないのか。

変化が激しい時期にあるインドの電動二輪市場の動向に、今後も注目していきたい。

【著者プロフィール】

滝沢頼子/株式会社hoppin
東京大学卒業後、UXコンサルタントとして株式会社ビービットに入社。上海オフィスの立ち上げ期メンバー。
その後、上海のデジタルマーケティング会社、東京のEdtech系スタートアップを経て、2019年に株式会社hoppinを起業。UXコンサルティング、インドと中国の市場リサーチや視察ツアーなどを実施。インドのバンガロール在住。

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