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患者の“痛みの反応”を視覚化するモニタリング技術開発、術後の疼痛スコア低減に貢献

Techable / 2024年4月11日 19時0分

痛みの問題は、現在でも世界中の人々の生活の質に大きく影響を与え、臨床的、社会的、経済的な大きな課題である。

2008年設立のイスラエルのヘルステック企業Medasense Biometrics Ltd.(以下、Medasense)は、非侵襲性センサープラットフォームとAIを使用した「NOLテクノロジー」を開発。NOL(侵害受容レベル)とは、生理学的な疼痛反応を定量化するために開発された技術で、臨床チームが患者に個別の疼痛治療を提供するための指標である。

同社ではこの技術を活用して、従来問題となっていた“ヒトの痛み”測定を標準化し、さらに個別管理や治療への応用を目指している。

患者個々の「疼痛ケア」ニーズに応えるMedasense

痛みの感じ方は人それぞれで、鎮痛剤に対する反応も人によって異なる。しかし、疼痛に対するケアが患者個々の特定ニーズに合わせて対処されることは少なく、ニッセイ基礎研究所によると海外の一部の国ではオピオイド(麻薬性鎮痛薬)の中毒が問題となっているという。

また、鎮痛に対する評価方法の課題もある。麻酔中に連続的かつ具体的にモニターできる催眠と筋弛緩とは違い、鎮痛は一般的に心拍数(HR)、血圧(BP)などの変化を通して間接的に評価されているが、HRとBPは鎮痛の適切さを評価するための指標としては不十分であるという。

より信頼性が高いモニタリングソリューションが求められるなか、Medasenseは痛みに対する患者の生理学的反応(侵害受容)を監視するNOLテクノロジーを開発し、この課題解決に挑んでいる。

NOLは“侵害受容レベル指数”

Medasenseは新たに開発したNOL AIテクノロジーとセンシングプラットフォームを通じて、痛みの反応を定量化し、ケアを最適化しようとしている。場合によっては過剰投薬を回避するという支援を行っている。

同社のNOLは、痛みに対する個人の生理学的反応をリアルタイム、継続的かつ非侵襲的に定量化する独自のAIテクノロジーに基づくものだ。

複数の刺激と入力の結果として交感神経系が活性化すると、複雑な相互反応と異なる反応プロファイルを伴う(一連の侵害受容関連の)生理学的反応が引き起こされる。このプロセスの複雑な性質を認識し、自律神経における信号マルチパラメータ複合体として開発・定義されているのが“NOL指数”である。

NOLを活用したテクノロジーにより、“ヒトの痛み”という従来定量化が極めて難しかった領域においても、新たなイノベーションが引き起こされようとしている。

“痛みの反応”を視覚化する「PMD-200」

Medasenseの主力製品である「PMD-200」 は、全身麻酔下の患者が痛みを伝えることができない手術室や救命救急現場向けに設計された、NOLテクノロジー活用のモニタリングデバイス。痛みの反応を視覚化し、治療を個別化することが可能だ。

同デバイスにより、臨床チームは痛みを定量的に評価し、最適なタイミングと用量で、特定のニーズに合わせて鎮痛剤を滴定することができる。

ライデン大学医療センターの研究では、手術中の鎮痛薬投与のガイドにPMD-200が示すNOL指数を使用した場合、術後の患者の疼痛スコアが33%低下することが実証された。さらに同医療センター協力の研究によると、NOL指数の活用により術中のオピオイド消費量が減少したという。

PMD-200は、医療機器リーディングメーカーであるMedtronicによって、すでに欧州で販売されている。2023年2月には米国FDAに承認され、現在はカナダ、中南米、イスラエル、オーストラリア、アラブ首長国連邦で市販されている。

今後もMedasenseは、患者の痛みや鎮痛剤の副作用による苦しみを軽減するよう支援することを使命に取り組む方針だ。

参考・引用元:Medasense

(文・たに おさむ)

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