日本で投資信託の人気が出ない3つの理由
LIMO / 2019年11月5日 21時15分
日本で投資信託の人気が出ない3つの理由
長期資産形成における問題点
最初に断っておきますが、筆者は投資信託が個人の資産形成に非常に重要な金融商品だと思っています。自分自身でも投資信託で運用していますのでないと困る金融商品です。
ところが日銀の最新の「資金循環統計」によると、家計の金融資産の中で投資信託に運用されている割合はわずか3.8%(70兆円)に過ぎません。株式には全体の約11%(195兆円)が運用されていますから、割合だけで判断すると株式に運用する家計の資産は、投資信託に運用する家計の3倍程度になるということです。
もちろん、双方に運用する場合もありますし、こうした分析は大口資産(富裕層資産)の割合が大きな影響を及ぼしますから、単純な割合を論じてもあまり意味がないことは重々承知しています。
しかしながら、投資信託がそこまで人気がないのだとすれば、何か問題があるかもしれません。今回のコラムではそこを明らかにしていければと思います。
1. 個別株式のほうが分かりやすい
これは投資信託の問題ではありませんが、個別株式のほうが圧倒的に分かりやすいと思います。「○○アセット・フィンテック・ファンド」というよりも「ソフトバンク」のほうが分かりやすいわけです。
また、個別株式は大きく上がって儲かるイメージですから、説明を聞かないと理解できない投資信託は分が悪い。加えて、日本での上場社数は4000社弱ですが、投資信託は6000本くらい設定されています。投資信託は数が多い分、あれもこれもと選択肢が多すぎて選びにくいと言っても過言ではありません。
また個別株式で注目されるのは、名が通った大型株か値がさ株(株価が高い株式)ですから、そもそも投資信託はネームバリューで負けてしまいます。もっとも、値動きが大きい個別株式は期待リターンも大きいので、リスクを取れる投資家が投資信託を敬遠するのも分からないではありません。
2. 投資信託は販売手数料が高め
オンライン証券を中心に、投資信託だけでなく金融商品の販売手数料は低下の一途をたどっています。そういう意味でオンライン証券(オンライン銀行も)の存在は意義深いものですし、金融社会インフラをリードしていると思います。
ただ、対面証券会社・銀行で投資信託を購入すると大なり小なり手数料が掛かってくるわけです。筆者は金融商品の購入に手数料は払いませんが、手数料を払わないというポリシーがまだまだ一般化しているとは思いません。
販売手数料の対価は販売会社を通して金融商品を購入することの付加価値ですが、手数料率以上の付加価値(端的にいえば儲かるかどうか)がなければ、手数料を払う意味がありません。
日本でも、日経平均株価や米国S&P500指数に連動するインデックスファンドには実質的に販売手数料を設定していないものが多くなり、信託報酬(運用会社の運用報酬)も年間100分の数%(例:年0.06%)という事例も出てきています。
しかしながら、対面金融機関で販売されている投資信託は、いまだに販売手数料3%、年間信託報酬1.5%程度のコストがかかるものがほとんどです。中身の問題は別にして、こうした手数料が高いイメージのある投資信託は敬遠されているのかもしれません。
3. 投資信託は長期運用されていない
個別株式投資では6カ月くらいが“長期”という方もいらっしゃいますが、投資信託の基本的な運用手法は長期分散投資です。
投資信託の運用における“長期投資”は5年、10年といった単位のはずですが、実際には3年未満という分析が出ています(参考:金融庁「投資信託等の販売会社における顧客本位の業務運営のモニタリング結果について」平成30年9月26日)。
この結果においては、顧客が望んで解約したのか販売会社が他商品を勧めて解約させたのかは不明ですが、実際問題として投資信託に投資して3年未満でプラスの運用成果を残すのはかなり困難でしょう。
また、投信分析会社・モーニングスターのデータベースが分析対象にしている投資信託は4,931本ですが、そのうち10年以上運用されている投資信託は1889本(38%)、20年以上は249本(5%)、30年以上はたった36本(0.7%)にしか過ぎません。
これまでは年金的な長期運用をしようと思っても、そもそも30年以上投資できる投資信託がなかったわけですから、投資信託で長期投資できるわけがなかったのです。
とまあ辛口の意見になりましたが、実のところ個人の長期資産形成において投資信託は間違いなく使える金融商品です。
NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人確定拠出年金)などの非課税制度が適用されているのも投資信託です。加えて、米国の事例を持ち出すまでもなく、これからも販売手数料や信託報酬はさらに低下傾向にありますので、コスト面で個人が有利になっていく状況に変わりはありません。
結局、個人がしっかり資産形成したいと思うなら、ご自身で選べるようになることが肝要なのです。このように、ご自身の資産形成をしっかり考えてみたいということでしたら、一度筆者が運営する一般社団法人日本つみたて投資協会のウェブサイト(https://www.tsumitate.or.jp/)をご覧くださいね。
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