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今年の景気は薄曇りだが、米・中からやってくる突然の嵐に要注意

LIMO / 2020年1月1日 20時20分

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今年の景気は薄曇りだが、米・中からやってくる突然の嵐に要注意

今年の景気は、良くも悪くもない状態が続くだろうが、米国や中国が急減速して日本の景気が急激に悪化するリスクには要注意だ、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は考えています。

今の景気は薄曇り

昨年の景気は、一昨年と比べると若干の悪化を見せました。米中貿易戦争(冷戦)の影響というよりは、影響を読み切れない国内外の企業が「とりあえず設備投資を延期して様子を見たこと」等が影響したようです。

もっとも、景気の水準としては、失業率を見ても企業の利益を見ても、「絶好調ではないが、不振でもない、そこそこの水準」といったところだったでしょう。「快晴ではないが、曇りとも言えない、薄曇り」といった感じでしょうか。

10月の経済指標は悪化しましたが、これは消費税導入に伴う駆け込み需要の反動でしょう。台風の影響も大きかったようです。店を閉めた小売店も多く、外出を控えた消費者も多かったですし、被災地では消費どころではなかったでしょう。

「被災地のことを考えると自分だけ楽しむわけに行かない」といった自粛ムードも影響したようです。筆者は「自粛しても被災者は喜ばないだろうから、被災地の名産品の酒と肴で大いに盛り上がろう」と頑張りましたが、筆者一人では消費の落ち込みを支えきれませんでした(笑)。

このように、「10月は特殊要因で落ち込んでいるだけ」のように思われますし、消費増税額の小ささやポイント還元等々を考えると景気が悪化する要因も乏しいので、11月と12月の数字は改善していると期待しましょう。景気は今でも「薄曇り」だと考えて良さそうです。

今年の景気も「薄曇り」がメインシナリオ

景気は自分では方向を変えませんから、政府が何もせず、海外からのショックがなければ、今年の景気は引き続き横ばいか、わずかに下向きの薄曇り、ということになるでしょう。

実際には、政府は景気対策をしっかり行うようですし、海外についても米国は利下げを中断しましたし、先進国の景気先行指数は下げ止まっている模様なので、国内の景気は悪化していく可能性よりも改善する可能性の方が若干高そうですが。

東京オリンピックが終わった後の不況を心配する声も聞かれますが、前回の時と比べると日本経済の規模が格段に大きくなっているので、「経済規模との対比で見た東京オリンピック特需の大きさ」は格段に小さいはずです。

しかも、「労働力不足だから、東京オリンピックが終わってから着工しよう」という建設プロジェクトも多いようですので、心配は無用だと思います。

米中冷戦のリスクシナリオには要注意

米中関係は、貿易戦争と言われていますが、覇権を懸けた冷戦の様相を深めつつあります。トランプ大統領が勝手に中国とケンカしているのではありません。米国議会は超党派で中国を困らせるための法律を次々と可決しているのです。

「中国が不正な手段で米国の技術を盗み、それを使って世界の覇権を握ろうとしている。今のうちに叩き潰しておかないと大変だ」という危機意識が根底にあるわけです。

そうなると、将来は「米国企業、同盟国企業は中国とは取引するな」ということになるかもしれません。少なくとも、そうした方向に少しずつ進んでいくことは覚悟しておいた方が良いでしょう。

問題は、それが急に起きる可能性です。米中間では巨額の取引が行われているので、それが一気に止まってしまうと世界経済への打撃は巨大なものとなりかねません。

米中ともに、そうした事態は望んでいないはずですが、ケンカというものは、いつ何が起きるかわからない怖さがあります。リスクシナリオとして頭の片隅には置いておきましょう。

米中には金融危機のリスクも

中国は、過剰債務問題を抱えています。最近では企業の倒産も増え始めているようです。悪くすると、倒産が続発して貸し手が与信に慎重になり、金融危機に発展してしまうかもしれません。中国政府も警戒感を強めている模様です。

中国政府の危機管理能力の高さはリーマン・ショックの時に十分認識しましたので、今回も大丈夫だろうとは思いますが、金融危機対策が権力闘争の人質にされてしまう可能性は捨てきれません。これもリスクシナリオとして頭の片隅には置いておきましょう。

米国でも、低格付けの債権が増えているので、何らかの拍子にデフォルトが増加し始めると、一斉に低格付けの与信が行われなくなり、パニック的な低格付け債券の売りが発生する可能性もあります。リーマン・ショックの小型版のような事態に陥るかもしれません。

人民元で金融危機が発生しても痛むのは中国経済だけですが、基軸通貨である米ドルで金融危機が発生すると、世界中の貿易や投資に大きな影響が及びかねません。可能性は低いと思いますが、これもリスクシナリオとして頭の片隅には置いておきましょう。

余談ですが、米国の低格付け債券、しかも仕組み債を買っている日本の金融機関があるようです。これは金融危機の際に流動性がなくなって「値段にかかわらず売りたくても売れない」といったことになりかねない危険なものです。筆者は決して買いたいとは思いませんが・・。

日本経済への悪影響は限定的と期待

米中発のリスクシナリオが実現すれば、日本の輸出への影響は甚大なものとなるかもしれません。しかし、輸出が激減しても、日本経済への影響はリーマン・ショックと比べ物にならないほど小さいもので終わるだろう、と筆者は考えています。

その根拠は、少子高齢化で景気の波が小さくなっていることです。労働力不足の時代なので、輸出企業をリストラされた人がすぐに次の仕事を見つけることができ、消費が落ち込まずに済むのです。

今ひとつ、高齢者は所得と消費が安定しているので、消費者に占める高齢者の比率が高まると景気が安定します。高齢者向けのサービスに従事している人の所得と消費も安定しているので、その効果はかなり大きいと期待されます。

この点について、詳しくは拙稿『日本の景気があまり変動しない時代がやって来る(https://limo.media/articles/-/10044)』をご参照いただければ幸いです。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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