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「おひとりさま」が増える現代。女性は年金や遺族年金で老後生活ができるか

LIMO / 2022年2月7日 14時50分

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「おひとりさま」が増える現代。女性は年金や遺族年金で老後生活ができるか

内閣府の令和3年度の高齢者白書によると、65歳以上の者のいる世帯数は2019(令和元)年時点で2558万4000世帯と、全世帯(5178万5000世帯)の49.4%です。そのうち、単身世帯が約736万世帯と3割近くを占めており、その数は年々増加しています。

単身世帯のうち女性の割合は男性より高く、男性が「2020年約243万人→2040年約356万人」、女性が「同約459万人→同約540万人」と、この先さらに増加することが予想されています。実際に筆者の周りを見渡してみても、女性の高齢者の一人暮らしの方が、男性よりも多いように思います。

平均寿命が男性より長い女性の場合、たとえ結婚して配偶者ができたとしても、人生の最期に近づく頃には「おひとりさま」になることを想定しておかなければならないでしょう。

女性の場合は結婚しているか否かに関係なく、おひとりさまの老後を見据えた老後設計を立てておくことが必要です。新型コロナウイルスの感染が拡大している今、おうち時間が増え普段より時間に余裕のある方もいるでしょう。そこで受給できる年金額をはじめ、女性がおひとりさまで暮らしていくためのお金について考えていきましょう。

女性の約8割は国民年金のみを受給。その平均月額(女性)は「5万4112円」

厚生労働省年金局の令和2年度「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和2年度末における、国民年金と厚生年金(第1号)の老齢年金受給権者の総数は4938万1727人。

出典:厚生労働省年金局「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

そのうち、国民年金の受給権者は約67%。男女別で見てみると、男性の国民年金の受給権者が約57.42%に対して、女性は約77.76%。今のシニア世代は、女性の8割近くが国民年金受給権者であることが分かります。

国民年金は20歳以上60歳未満の方が原則加入するもので、厚生年金は会社員や公務員などが加入します。シニア世代は専業主婦の方が多かったこと等が影響しているのでしょう。

毎月いくら年金を受給しているか、その平均額を見ると国民年金は「男性5万9040円」に対し、女性「5万4112円」。厚生年金の平均月額は男性「16万4742円」に対し、女性「10万3808円」です。

実際に年金を受給している女性のボリュームゾーンをみると、厚生年金が「9万円以上10万円未満」で約15.82%、国民年金が「6万円以上7万円未満」で約33.15%。国民年金の満額が約6万5000円ですから、満額を受給している女性もそれなりにいることが推測できます。

パートとサラリーマンの妻(専業主婦)の年金は?

女性の中にはパートで働かれる方も多いですよね。今は特定適用事業所に勤めて一定の要件を満たした方は、パートでも厚生年金に加入することができます。

ただ、先ほどの厚生労働省の資料によると、女性の短時間労働者のうち、厚生年金に加入している人は令和2年末時点で約39万人しかいません。非正規雇用で働いていて、加入している年金が国民年金のみという人が少なくないでしょう。

「会社員の夫と専業主婦の妻」という夫婦もいますが、この場合の妻は第3号被保険者となります。

第3号被保険者とは、厚生年金や共済組合に加入している第2号被保険者※に扶養されている配偶者で、原則として年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の人をいいます。

保険料は、配偶者が加入している厚生年金や共済組合が負担しているため、個別に納める必要はありません。40年間ずっと第3号被保険者だった場合、保険料を納めることなく、国民年金の満額を生涯にわたって受け取ることができます。

ただし国民年金の場合、たとえ満額支給されたとしても、年間で約78万円。年金だけに頼る生活は難しいといえるでしょう。

※年収130万円未満であっても、厚生年金保険の加入要件にあてはまる方は、厚生年金保険および健康保険に加入することになるため第3号被保険者には該当しません。

夫が亡くなると、妻の生活は激変!?

老後、夫婦2人分の年金があれば、2人ともが国民年金加入のケースを除くとそれなりの老後の生活を送ることができます。ただ、夫が亡くなると途端にそれまでの生活を維持していくのが難しくなり、妻の生活は大きく変化します。ケースに分けて確認しましょう。

1.国民年金に加入していた夫が亡くなった場合

遺族基礎年金は子どもがいないと受給できません。しかも、受給できる期間は子どもが18歳到達年度の3月31日まで(もしくは20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方)になるため、老後に夫が亡くなった場合、遺族基礎年金は受給できないことが多いでしょう。

2.厚生年金に加入していた夫が亡くなった場合

遺族厚生年金は、遺族基礎年金と違って子どもがいない場合も受給が可能です。

受給額は、夫の標準報酬月額や厚生年金保険の加入期間によって異なるため個人差がありますが、令和2年度の遺族年金の平均は8万892円。夫の受給していた老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3が遺族厚生年金となります(報酬比例部分の計算では、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は300月とみなして計算します)。

夫の受給していた年金額の4分の3と勘違いされがちですが、老齢基礎年金は支給の対象外です。

たとえば、前出の男性の厚生年金平均月額16万4742円の4分の3である約12万ではなく、老齢基礎年金を差し引いたおよそ10万円の4分の3の金額になります。

ほかに、人によっては中高齢寡婦加算や経過的寡婦加算に当てはまる場合もあります。

いずれにせよ「想像してたより少ない」と焦らなくていいように、あらかじめ夫の厚生年金の受給額から、およその金額を把握するようにしておくと、いいかもしれません。

※遺族厚生年金は65歳以上で老齢厚生(退職共済)年金を受け取る権利がある方が受け取る場合、「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額」と「死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の額の2分の1の額と自身の老齢厚生(退職共済)年金の額の2分の1の額を合算した額」を比較して高い方が遺族厚生年金額となります。

65歳以上女性の単身世帯の1カ月の支出は「13万9417円」

これまで年金について見てきましたが、老後の生活費についても気になるところですよね。

総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2020年(令和2年)」によると、65歳以上の女性の単身世帯の1カ月の消費支出は「13万9417円」、65歳以上の無職の二人世帯では「22万4390円」となっています。

出典:総務省統計局「家計調査報告[家計収支編]2020年(令和2年)」

その内訳を見てみると「食費」や「保健医療」、「交通・通信」といった項目では、65歳以上の女性の単身世帯より、65歳以上の無職の2人世帯の金額は2倍ほどの金額になっています。

一方で、「住居費」「光熱・水道費」「被服・履物費」「その他消費支出」については、単身世帯と二人以上世帯との差は、それほど大きくありません。住居費については1万円台のため、持ち家が想定されるでしょう。

おひとり様のさまの支出のデータを参考に、厚生年金と国民年金それぞれ年間の収支がどのくらいになるのかを見てみましょう。

厚生年金の女性平均月額10万3808円に対して、消費支出13万9417円で、不足額は3万5609円。

国民年金の女性平均月額5万4112円に対して、消費支出13万9417円で、不足額8万5305円。

国民年金の場合、生活費の不足額が年間で約102万円になりますね。このような傾向を見ながら、老後のおひとりさまの生活費を考えるといいでしょう。

年金を増やす方法も視野に入れよう

今のシニア世代とは違い、年々働く女性が増えてきているとはいえ、非正規雇用で働く女性が大半です。国民年金は満額で約78万円を生涯にわたって受給できますが、長い老後を生活していくには全く足りないでしょう。また、年金額は今後下がる可能性も考えられます。

社会保険の適用が拡大しており、パートやアルバイトで働く短期労働者でも、厚生年金に加入できる環境が整いつつあります。手取りが少なくなるというデメリットはありますが、年金を増やすという選択肢もあります。ご家庭の状況によりさまざまですが、一つの方法として検討してみてもいいのではないでしょうか。

参考資料

内閣府「令和3年版高齢社会白書(全体版)」(https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2021/zenbun/03pdf_index.html)

厚生労働省「令和2年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(https://www.mhlw.go.jp/content/000872907.pdf)

日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html)」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html)

総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)ー単身世帯ー2020年(令和2年)」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20200&month=0&tclass1=000000330001&tclass2=000000330022&tclass3=000000330023&result_back=1&tclass4val=0)

日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/jigyosho/tanjikan.html)

総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)ー二人以上世帯ー2020年(令和2年)」(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200561&tstat=000000330001&cycle=7&year=20200&month=0&tclass1=000000330001&tclass2=000000330004&tclass3=000000330005&result_back=1&tclass4val=0)

日本年金機構「遺族年金(受給要件・対象者・年金額)」(https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/index.html)

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