日本の財政が破綻しない本当の理由を経済評論家が解説。少子高齢化で増税が容易な時代に
LIMO / 2022年4月30日 20時15分
日本の財政が破綻しない本当の理由を経済評論家が解説。少子高齢化で増税が容易な時代に
増税は「財政再建」と「インフレ抑制」の一石二鳥
投資家が日本国債を買って政府の資金繰りが安定している間に少子高齢化で増税が容易になり、財政が再建されていくので、財政は破綻しません(経済評論家 塚崎公義)。
財政は破綻しない
日本政府の財政赤字は巨額で、借金も莫大ですが、日本政府は破産しないでしょう。「最後は日銀に紙幣を印刷させて借金をすべて返せば良いからです。本稿は以上」でも良いのですが、それではハイパーインフレが来るでしょうから、紙幣の印刷は禁じ手だという事にしましょう。
日本政府が破産しないと考える最大の理由は、日本人投資家が日本国債を買うインセンティブを持っているからです。日本国債は為替リスクの無い資産の中で最も安全なので、日本人投資家は積極的にせよ消去法的にせよ日本国債を買うのです。したがって、日本政府は資金繰りに困る事はなく、財政は破綻しないのです。
日本人投資家が日本国債を買わなくなり、国債が暴落する事があるかも知れませんが、それでも日本政府は破産しないでしょう。
国債が暴落するような時には円も暴落して猛烈なドル高になっているでしょうから、日本政府が外貨準備で持っているドルを売って巨額の資金を調達し、それで暴落した国債を買い戻せば良いからです。
こうして日本政府が破産しない間に数千年の時が経ち、少子化によって日本人が減少し、最後の一人になります。
最後の一人は家計金融資産2000兆円を相続し、その人が死ぬとそれが国庫にはいりますから、日本政府は何の問題もなく1000兆円強の借金を返済する事が出来るわけです。
数千年後の話は、極論ですが、さまざまな事を考えさせてくれます。その最大のものは、「財政赤字は子供たちに親の借金を返させる世代間不公平だ」という命題が不適切だ、という事でしょうが、それについては別の機会に詳述します。
少子高齢化で増税が容易な時代に
数千年後の話は極端ですが、そこまで待たなくても、10年もすれば増税が容易な時代が来るはずです。少子高齢化によって労働力不足になるからです。
現在は、増税しようとしても、「増税して景気が悪化したら失業者が増えてしまう」という反対の声が強いので、増税は容易ではありません。
しかし、労働力不足の時代になれば、増税して景気が悪化しても失業が増えませんから、「気楽に」増税が出来るわけです。
また、少子高齢化による労働力不足は、賃金の上昇を通じてインフレ率を高めるかも知れません。そうなると、日銀が金融を引き締めて景気をわざと悪化させてインフレを抑え込む必要が出てきます。
しかし、政府の借金が巨額なので、日銀に利上げされると政府が困ります。そこで、「景気を悪化させてインフレを抑える仕事は、財務省が増税で行なうから、日銀は利上げをしないで欲しい」という協定が結ばれることになります。
そうなると、増税は財政再建目的とインフレ抑制目的の一石二鳥だ、という事になるわけですね。しかも失業が増えないなら、素晴らしいですね。
財政はインフレ抑制が苦手なはずだが・・・
現在は、インフレ抑制は主に日銀の仕事だとされています。それは、景気が過熱してインフレが懸念されるようになってから予定されている公共投資を先送りする事が容易ではないからでしょう。
まして、まして増税は困難です。増税法案を審議して可決して施行するまでのタイムラグを考えると、施行された時にはインフレが収まって不況になっている可能性も否定できません。
タイムラグの問題だけではありません。景気が良くなると増税、悪くなると減税という立法を繰り返していると、議会が忙しくて仕方ありませんから(笑)。
しかし、今後は少子高齢化で景気の波が小さくなっていきますから、徐々に少子高齢化による労働力不足が深刻化していき、徐々にインフレ圧力が強まっていくと予想されるので、段階的に増税していけば良いわけです。
ちなみに、少子高齢化で景気の波が小さくなっていくのは、高齢者の所得と消費が安定しているからです。高齢者の主な所得である公的年金は、景気に左右されません。老後資金を取り崩していく部分も景気とは無関係でしょう。したがって、高齢者の消費は安定しているわけです。
高齢者の消費が安定しているという事は、高齢者向けのサービスに従事している人々の所得も安定しているという事で、彼らの消費も安定しているはずですね。
極端な事を言えば、現役世代が全員で高齢者の介護をしている世界では、景気の波は皆無かも知れません。そこまで極端ではなくても、そうした世界に少しずつ近づいていくという事は、景気の波が小さくなっていくという事でしょう。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。
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