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年金暮らしの父が末期がんと診断 「知っていれば良かった」想定外の費用2つ

LIMO / 2024年1月30日 15時5分

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年金暮らしの父が末期がんと診断 「知っていれば良かった」想定外の費用2つ

日本人の死因のトップ(※)である「がん」。

その闘病生活には、直接治療に必要となるお金以外にも、さまざまな費用がかかります。病院に支払う費用の中には、健康保険が適用されない項目も。

「父はがんの診断を受けるまでは病気らしい病気をしたことがない人でした。私たち家族も、『病気やケガにかかっても保険が効くから大丈夫』と甘く見ていたところがあったのは確かです……」

と語るのは、年金暮らしの父親のがん闘病を見守った聡子(仮名・48歳)さん。父親のがん闘病生活を振り返り、想定外だった費用について話してくれました。

※厚生労働省「2022年の人口動態統計(確定数)」(2023年9月公表)

※編集部注:外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。

年金暮らしの父「前立腺がん・ステージ4」と診断

「年金で暮らす父が、ある日、ステージ4の前立腺がんと診断されました。既に腰骨などに転移しており、手術は難しいということでした。

手の施しようがなくなり、緩和ケアのために住宅型有料老人ホームに入所するまでの3年半、私は母親と二人で介護・看護を行ってきました。そこで特にインパクトが強かった「想定外の費用」があります」

と聡子さんは言います。

【想定外の費用 その1】毎月30万円の病院へのタクシー代

想定外の費用 その1「タクシー代」

DerekTeo/shutterstock.com

「父は埼玉県さいたま市に住んでいました。都心までは電車で40分、車で1時間程度の距離です。

さいたま市内の病院でがんの疑いがあると診断され、紹介されたのは東京の都心部にある病院。知名度のとても高い病院で、「ここなら治るかもしれない」という強い希望を持って、その病院に3年半通いました」

ガンと診断されてから最初の3年間、父親には日常生活に支障をきたす症状はなかったそうです。また、東京の病院への通院も、月に1回程度。公共交通機関を使い、難なく通院できていたのだそう。

しかし、がん治療に付随する小さな手術をしたのを皮切りに、父親の身体は急激に弱り、抗がん剤治療に耐えることができなくなっていったそうです。

激しい嘔吐や40度近い高熱など、次から次へと症状が出て、月に8~10回ほど、予約外で診てもらうために病院に通うように。

「この時の交通手段はタクシーです。電車の方が安いと分かっていても、とてもではありませんが父の容態は電車に乗れるようなものではありませんでした。

片道1時間、道が混んでいる場合は1時間半程度かかることもあり、タクシー代は片道1万5000円から2万円程度になったそう。月に8~10回通っていたので、タクシー代だけで毎月30万円を超える出費となりました。

致し方ないとは言え、半年間の合計で180万円(月々30万円×6カ月)のタクシー代は、正直かなりの痛手でした」

しかし、聡子さんと母親は、歩くことが難しくなっても「この病院なら治るかもしれない」と希望を持ち続けている父親に、「家の近所の病院に転院しよう」とはなかなか言いだせなかったのだそうです。

「通院時の交通費は確定申告を行うことで医療費控除の対象となりましたが、戻ってきたお金は雀の涙です」と聡子さんは振り返ります。

【想定外の費用 その2】差額ベット代

想定外の費用 その2「差額ベッド代」

Monkey Business Images/shutterstock.com

父は主に通院治療を行っていましたが、通院治療を受けていた3年半の間に5回ほど、検査や手術のために入院をしました。1回の入院期間は数日~1週間程度とどれも長いものではありません。

この入院時にかかった「差額ベッド代」も予想外の大きな出費でした。

差額ベッド代とは、実際に入院をする部屋(病室)によって、1日ごとにかかる料金のこと。無料となる大部屋から高額となる個室まで、病院によって料金設定はさまざまです。

「病気知らずだった父親は、慣れない入院生活に不安を隠せず個室での入院を強く希望しました。

その結果、1日あたり約2万円の差額ベッド代が発生し、1回の入院あたり毎回約10万円(2万円×5日)の差額ベット代が発生したのです。

タクシー代・差額ベッド代は高額療養費制度の対象外

高額な医療費を支払ったときは「高額療養費」制度で払い戻しが受けられます。

出所:全国健康保険協会「高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3030/r150/)

日本の医療保険には「高額療養費制度」というものがあります。医療費が人々の生活を圧迫することがないよう、高額になった医療費をカバーする制度です。

具体的には、1カ月(月の初めから終わりまで)の間に医療機関や薬局の窓口で支払った額が一定の上限額を超えた場合、図のように超過した分のお金が払い戻される仕組みです。

なお、払い戻されるかどうかの基準となる自己負担限度額は、年齢・および所得状況などによって異なります。

しかし、この高額療養制度の対象となるのは、公的医療保険適用の医療費のみです。

そのため、入院時の食事代、差額ベッド代、交通費、レーシックやインプラント等の保険適用外の医療費は高額療養費の対象となりません。

通院時のタクシー代や、毎回入院のたびに10万円程度かかった差額ベッド代は、高額療養費の対象外、すべて実費負担となったわけです。

高額療養費制度で補えない部分は、民間の医療保険の活用も

高額療養費制度を利用すれば、ひと月あたりの医療費の支払いが自己負担限度額を超えた場合、超過した分は払い戻されます。もし大病や大ケガをして、医療費が高額になってしまったとき、とても頼りになる制度です。

しかし、公的医療保険の適用外となるものは、自己負担限度額に含まれず、全額自己負担となります。

聡子さんの父親のように、それまで大病とは無縁で元気に暮らしてきた人の場合、入院生活に強い不安を感じることもあるでしょう。また、通院時の交通費は医療費控除の対象にはなりますが、公的医療保険の適用外です。

差額ベッド代や交通費、先進医療にかかる費用などは、とりわけ年金暮らしのシニア世帯にとっては大きな負担となります。治療の選択肢を増やし、生活の質を向上されるためにも、貯蓄に加え、民間の医療保険で備えるなども一案でしょう。

また、シニアの親が闘病生活に入った場合、それを支える子ども世代との連携も大切です。理想の介護のカタチや、貯蓄や年金などの資産状況などは、できれば親が元気なうちに共有しておきたいものですね。

【一覧表】親世代の年金&貯蓄額「平均や中央値を知っていますか?」

【年金・貯蓄の一覧表】今のシニア世代の「公的年金」と「貯蓄事情」

出所:厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(https://www.mhlw.go.jp/content/001180700.pdf) 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査 令和5年(2023年)二人以上世帯・単身世帯」(https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/)をもとに筆者作成

今のシニア世代が受け取る公的年金の平均月額や、金融資産の平均・中央値は以下の通りです。

 国民年金(老齢基礎年金)の受給額

〈全体〉平均年金月額:5万6316円

〈男性〉平均年金月額:5万8798円

〈女性〉平均年金月額:5万4426円

 厚生年金(老齢厚生年金)の受給額※国民年金の金額を含む

〈全体〉平均年金月額:14万3973円

〈男性〉平均年金月額:16万3875円

〈女性〉平均年金月額:10万4878円

 70歳代世帯の金融資産保有額

<二人以上世帯>平均1906万円・中央値800万円

<単身世帯>平均1433万円・中央値485万円

参考資料

厚生労働省「令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況」第6表 性別にみた死因順位(第10位まで)別死亡数・死亡率(人口10万対)・構成割合(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei22/dl/10_h6.pdf)

全国健康保険協会「高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3030/r150/)

厚生労働省年金局「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」(https://www.mhlw.go.jp/content/001180700.pdf)

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和4年調査結果」(https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/futari2021-/2022/)

金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和4年調査結果」(https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/yoron/tanshin/2022/)

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