45歳で逝った出版社社長の「死を噛みしめた言葉」 本の制作に生きた男が残した1200の投稿
東洋経済オンライン / 2023年12月3日 12時0分
ただし、副題を含めた書名は岡田さんの没後に日数が修正されて、『憶えている――40代でがんになったひとり出版社の1908日』となっている。
1825日は、岡田さんがみずき書林で活動した5年間を365×5で単純に日数換算した数字だ。これに対して1908日は、みずき書林を法人登記した2018年4月13日から、岡田さんが亡くなった2023年7月3日までの日数を表している。
この修正は岡田さんの没後に裕子さんと後藤さんが話し合って決めたそうだ。存命中の刊行を目指していた岡田さんは、創立5周年のところで書籍を終わらせる腹づもりだったという。それ以降の抜粋記事に解説文がないものこの理由からだ。
しかし、岡田さんが亡くなった今となっては、「僕自身がこの5年間のことを憶えている」「僕がいなくなった後も僕のことを憶えていてほしい」という願いを込めた書名として、1825日よりも1908日のほうが確かにふさわしい。
岡田さんは2023年6月11日、書籍に抜粋された最後のブログ記事でこう書いている。
<ああ、それにしても、今回の入院はほんとうに苦しい。いままでこの病気に関して4回入院して、危うい局面を迎えたこともあったけれど、僕自身の体感としては、今回が一番厳しいかもしれない。
肉体的な苦痛もさることながら、やはり精神的なメンタル面をやられると、人は脆い。
自分の弱さを容赦なく突きつけられています。
フランクルを、保苅実を、早坂暁を、大林宣彦を心のうちに召喚しながら、まだまだ僕は彼らのしなやかさには遠く及ばない。
せめて彼らの万分の一の強さでもあったなら。>
(2023年6月11日/みずき書林ブログ「筋力の衰え」より)
岡田さんは、がんを公表した記事で「勇敢に、丁寧に生きていたい」と書いた。最終的にそこに至らなかったのか否か。岡田さんを憶えている人や、これから知る人がそれぞれに感じればいい。
古田 雄介:フリーランスライター
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