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45歳で逝った出版社社長の「死を噛みしめた言葉」 本の制作に生きた男が残した1200の投稿

東洋経済オンライン / 2023年12月3日 12時0分

<みずき書林はこれからも続けていくつもりですが、もしこれから先、存続させることができなくなったときのことも考えておかないといけません。
 実は、継続性については、ひとり乃至小規模出版の最大の弱点であり、まだ歴史の浅い小規模出版の世界では、ノウハウが確立されていない問題でもあります。>

(2021年12月9日/みずき書林ブログ「【重要】How to close my company」より)

「長くて2カ月、短くて1カ月」

治療を続けながら、身体の状態の変化に主治医とともに注視する日々。標準治療は奏功し、季節が一巡するまでは体調の急変を防ぎ、概ね病状をコントロールすることができた。

<検査の結果が劇的に改善されたとか、病状が大きく好転したとか、そういうことはない。残念ながら。


 ただ、喜ぶべきこととして、この数カ月間、現状維持ができている。
 (略)
 はじめて病気についてこのブログに書いたときに、僕は「死ぬ死ぬ詐欺」ということばを使った。あれから9か月が過ぎ、スキルス胃がんのステージ4という病気は僕に限ってはまだトップスピードを出しておらず、いまのところ、その死の速度を振り切って逃走中と言っていい。早ければ半年以内、ということもおそらくはありえたのだから。>

(2022年5月29日/みずき書林ブログ「生きちゃうかもしれない。」より)

現状維持に不安を覚えるようになったのは、手術からちょうど1年後に2度目の入退院を経た後のことだ。急激に体調が落ち込んでいく。秋には死後のことをより現実的な出来事として捉えるようになっていた。

<一年前に病気がわかったとき、絶望的な気分になると同時に、少し楽にもなった気がした。
 楽になった、とは奇妙な感覚だが、絶望的で呆然とした感情が少しずつおさまってくると同時に、そのすき間を埋めるように、僕は楽な気持ちになって行った。
 楽とは、要するにいろんな世俗のことがどうでもよくなっていく感覚だった。
(略)
 最近たまに考える。
 僕が死ぬ日の新聞には、どんなろくでもないニュースが一面を飾るのだろう。
 ヤフーニュースのトピックにはどんな一過性の話題が流れているのだろう。
 どんな有名人が、僕と同じ日に死ぬのだろう。
 できることなら、特筆すべきことがなにひとつ起こらない日に、ひとりでそっと死んでしまいたいものだ。>

(2022年10月21日/みずき書林ブログ「死ぬのに相応しい静かな世界」より)

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