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「中国思想」は日本にどこまで受容されているのか 「礼」の本質は「かのように」振る舞うということ

東洋経済オンライン / 2023年12月8日 10時0分

最近、中国の戦国時代を一国ずつ解説するドキュメンタリーを見たのですが、魏の国から知識人(士人)がいっぱい出てくるっていう描写があったんですよ。魏が学問の中心になって、いろんな士人が集まっていました。彼らは貴族でもなく、王侯貴族でもない、知識人階級で、諸子百家のようなものですよね。商鞅のように宰相になる人間も出てくる。でも、彼らには国への忠誠がなくて、自分の才能を一番買ってくれる人に忠誠を尽くすタイプでした。

中野:このタイプの知識人階級って、近代西洋でもヨーゼフ・シュンペーターとか、カール・マンハイムとか、そういう人たちが描いた知識人階級に似ていますね。無責任に理想を言ったり、嫉妬深くて、人の足を引っ張ったり、陰口を言ったりしてばかり。そういういやらしい連中が知識人にはたくさんいる。フランス革命の前後の知識人たちもそうでした。日本でも、80年代のポストモダンみたいに、新奇なアイデアをバンバン出して、得意になっているといったように(笑)。

でも日本の場合は、同じ儒学を修めた人たちが、改革や維新、近代化に動員されるけど、実務家としての身分があるんですよ。三国志を読むと、劉備に諸葛孔明を紹介したのは徐庶といったように、知識人の間のネットワークがある。でも日本の歴史では、そういう議論を商売にする知識人の階層というものはあまりない感じがします。

中国に詳しい人に聞いたことがあるんですが、中国では全人代で最終的な議論が決まるまでけっこう自由闊達な議論をやってるらしいです。百家争鳴でレベルの高い議論をやってるのだそうです。他方、日本の議論は、同じような意見ばかりで、異論を嫌う(笑)。同じアジアで儒教だと言っても、日本とはけっこう違うんですよね。

大場:まさにおっしゃるとおりで、日本だと中野先生が挙げた知識人の代表格は荻生徂徠ですね。

中野:なるほど、徂徠ぐらいですか。

大場:だから、徂徠学派が一世風靡した後に来るのは、一斉反発ですよね。あんな、実務経験もない、死生観もないくせに、大風呂敷ばっかり広げやがってと。だから戦後になって、丸山眞男がインテリゲンチャ、インテリゲンチャと言って徂徠が大好きなのは……。

中野:わかりやすい(笑)。

佐藤:知識人が妙な理想を説いたりせず、黙々と実務をこなすくらいのほうが、社会は安定するんじゃないですかね。あるアニメ映画の台詞にならえば「革命はいつもインテリが始めるが、夢みたいな目標でやるから、いつも過激なことしかやらない」というやつで。

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