中国による「工作機械の軍事流用」に日独で意識差 DMG森精機の製品が核開発に転用された疑い
東洋経済オンライン / 2023年12月15日 8時30分
「ヨーロッパ諸国が冷戦期の国際的な輸出規制の枠組み『ココム』のような拘束を嫌い、裁量を持つことにこだわった。日本は明確なルールを作るよう主張したが、受け入れられず、結果としてあだになっている」(細川教授)
問題の背景に「懸念の違い」
問題は、中国に対する安全保障上の懸念が国によって異なることだ。
「ドイツは自国企業に対して、5軸加工機の生産工場を中国に作ることすら認めている。技術が流出する危険性を考えれば、日本ではありえない対応だ。日本政府は5軸加工機の輸出許可さえしておらず、基準を厳格化するようドイツ側に申し入れてきたが、まだ聞き入れてもらえていない」(同)
細川教授は「日本とドイツ、それにアメリカを加えた最低3カ国以上で、協調して審査する新たな枠組みを早急に作らねばならない」と提言する。軍民融合を進める中国に対して「民生用」と「軍事用」に分ける考え方もあまり意味をなさないため、「技術水準で一律に規制すべき」との考えだ。
細川教授の提言は、業界側の問題意識とも合致する。工作機械メーカーらでつくる「日本工作機械工業会」(日工会)。11月の定例記者会見で稲葉善治会長(ファナック会長)は、次のように述べた。
「(輸出に関しては)顧客の既存設備の使用状況を確認したり、責任者からの誓約書を取ったりするなど、日本は欧米メーカーに比べて非常に高いレベルの輸出管理を行ってきた」
「会員各社は、厳しい形で最大限の努力をしている。それに対して、ヨーロッパのほうが、日本ほどのしっかりとした管理はされていないと思っている。その辺に関しては、運用も同レベルというか、一致させたいというのが私どもの希望だ」
背景には、中国という巨大市場を前にした不公平感も渦巻く。ある工作機械メーカーの社員は「欧州の企業と比べて競争上、日系メーカーは不利な立場に立たされている」とこぼす。
これらの意見を、輸出規制を管轄する経産省はどう捉えているのか。同省の担当者は「一般論として、制度的な差異がある場合は関係国と改善に向けた議論を進めていく」と述べるにとどまる。
一方、企業側ではハード面の対策が進む。DMG森精機は報道を受けた声明文で、工作機械への「移転防止装置」の搭載を2006年から進めていると説明。顧客に納品した機械が無断で移動された場合、機能が自動停止されて使えなくなるため、不正な転売の抑止に寄与しているとする。
「触れたくない」がメーカーの本心?
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