人民元建て「点心債・熊猫債」の発行が急増の背景 資金調達コスト低下と利便性向上が追い風に
東洋経済オンライン / 2024年2月29日 19時0分
人民元建ての外債の発行額が中国内外の市場で大幅に増加している。中国の金融緩和に伴う資金調達コストの低下や、発行市場における制度面の改善が背景だ。
【写真】中国人民銀行は人民元の国際化を協力に推進している。写真は北京の本店ビル(同行のウェブサイトより)
イギリスのスタンダード・チャータード銀行がまとめたデータによれば、中国本土外の(オフショア)市場で発行される人民元建て債券、いわゆる「点心債(ディムサム債)」の2023年の新規発行額は5990億元(約12兆4179億円)に上り、前年比44%も増加した。
償還額を差し引いた純増(ネット)ベースの発行額は3250億元(約6兆7376億円)と、同68%の増加を記録。点心債の発行額は2018年から6年連続で増加しており、2023年は発行ペースがさらに加速した。
米長期金利は16年ぶり高水準
点心債だけでなく、中国本土外の企業や金融機関が中国本土の債券市場で発行する人民元建て債券、いわゆる「熊猫債(パンダ債)」の発行額も急増している。
中国銀行間市場交易商協会(訳注:インターバンク取引の業界団体)のデータによれば、2023年の熊猫債の新規発行額は1335億元(約2兆7676億円)と、前年の806億元(約1兆6709億円)から6割以上も増えた。
人民元建て債券の発行増加を支えるのは、(アメリカドルと比べた)資金調達コストの相対的な低下だ。アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)は2023年に4回の利上げを実施。その結果、アメリカの(長期金利の指標となる)10年物国債の利回りは2023年10月に一時5%を超え、約16年ぶりの高さに上昇した。
アメリカとは反対に、中国の金融政策は緩和局面にある。中国人民銀行(中央銀行)は2023年に2回の利下げを実施し、政策金利を合計で0.25ポイント引き下げた。それに伴う長期金利の低下により、人民元建て債券の発行を通じた資金調達に割安感が生じた。
それだけではない。人民元の国際化を推進する中国金融当局の政策対応により、国境を跨いだ投資の利便性が年々改善されていることも、人民元建て債券市場の拡大に寄与している。
人民元の国際化をさらに推進
「中国は金融市場の対外開放を引き続き進めている。人民元建て債券は(ボラティリティが小さく)価値が安定した金融資産として、海外投資家にとっての魅力が高まっている」。中国人民銀行総裁の潘功勝氏は、2024年1月の記者会見で、そう述べた。
中国人民銀行は今後も、オフショア人民元市場の発展(を通じた人民元の国際化)を積極的に支援する方針だ。副総裁の朱鶴新氏は上述の記者会見のなかで、オフショア人民元市場のハブとして香港市場の機能を強化する必要性を強調した。
(財新記者:王石玉、王力為)
※原文の配信は2月6日
財新 Biz&Tech
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